ラスボスを倒した変身ヒーローの次の敵は異世界にありました

濵野々鳴杜

文字の大きさ
2 / 10
プロローグ

二人の変身ヒーロー

しおりを挟む
 眼を覚ますと辺り一面は白い空間で前も後ろも分からない状態だった。宙に浮いている感覚に陥る。服を着ないで全裸でいる状態に焦りつつも温かい光に包まれている様で冷静だった。

「ここはどこなんだ?あの後一体どうなったんだ?」不思議に思い自身の記憶を振り返る。

 最後に覚えている記憶は、変身ヒーロー【トコヤミ】に対して技を放ち吹き飛ばされた......

『そうじゃ、お主は闇に落ちてしまった変身ヒーロー【トコヤミ】との戦いで死んでしまったんじゃよ』後ろから声がしたので振り返るとそこには長く髭を生やし見上げるほど巨大な老人が玉座と思われる椅子に座っていた。

「俺は死んでしまったのか......」

「お前はワシに驚く前にそっちの方が気になるのだな」

「あぁ……あの後トコヤミはどうなったんだ、世界は、ちゃんと救われるのか!?」

「トコヤミはお前と相討ち死んだ。そして世界は救われた......」

「トコヤミも死んだのか......」世界は救われて喜ばしい事なのに俺は素直に喜べないでいる。

「死んだのはトコヤミだけでない。お前たちの戦いは直径二十キロメートルにも及ぶ凄まじい破壊を生んだ。爆発に巻き込まれた人は負傷し、中には死んだのものもいる」

 巨大な老人から発せられた言葉が事実だと受け入れるのに抵抗はなかった。老人は俺にわかりやすい様に、その時の映像と思われるものを俺に見せながら話したのだから。

「......あんた神なんだろ?俺を地獄に送ってくれ」

「なんじゃ変身ヒーローよ。お前は随分と簡単に地獄に行こうとするのだな?」

「......俺は愛する人を殺しただけじゃない。罪のない人間も巻き込んでしまった......せめて、せめて俺を正しく罰して欲しいんだ。頼む。俺を地獄に送ってくれ」

 膝をつき、額を地面につけて懇願した。

「と、申してあるが......トコヤミよ。どうしたらいいもんかのぉ?」

「こいつが地獄に行くなら私も地獄に行こう」聞き慣れた声がして驚き急いで振り向くとそこにはトコヤミがいた。

「こっちを見るな!」トコヤミは顔を赤らめた。この空間は神様以外は全裸なんだな。

「ほっほっほ......お前たち二人は争いそして死んだ。愛し合っているのにも関わらずな。なんの因果でこうなってしまったのか、人間というのは不思議なものよ」

「トコヤミ、本当なのか?」

「......」トコヤミは返答しないが彼女の顔を見れば一目瞭然だった。頬を赤らめた俺の眼を合わせようとしない。

 あの刺々しく禍々しいオーラを放つトコヤミとは思えない程に、今の彼女はただの女の子だった。

「トコヤミ......俺たちどこで間違えたんだろうな」

「......」トコヤミは途端に虚な眼をしてしまった。

「つまる話もある中すまんがワシも忙しい身での、話を進めようではないか」神は咳払いをして話を進めた。

「お前たちには望み通りに仲良く地獄へ送ってやるから安心せい」

「慈悲深いのか、深くないのか」トコヤミは苦笑いをして神に軽く文句を言う。

 神はそんなトコヤミを見下ろして告げた。

「異世界という地獄にな」

「異世界って......あのラノベとかでよくある異世界か?」

「左様、もちろんそこは滅びかけの世界。お前たち変身ライダーは本来送り出す勇者の代わりに異世界の救世主として生まれ変わって貰う」

「私が世界を救う?」トコヤミは嘲笑いながら答えた。

「そうじゃ。それともう一つワシからのプレゼント......もとい呪いじゃ」神はそう言って俺たちに向かって手をかざした。かざした手からは薄く濁った光漏れ出して俺たちを包んだ。

「一体なんなんだよ」少し埃っぽくて咳き込みながら悪態をついた。

「言うより実践した方が早い。ほれ、変身してみぃ」

 神に言われるがまま渋々変身する事にした。

 ーー変身ッ!

 神々しい装飾が光を放ちながら全身を包み込む。完全装備が整い決め台詞をかまそうとすると装飾が爆発した。

「なんだこれは?」爆発し立ち込める煙から視界が開けると俺は依然全裸のままであった。

「ブフォォォ」トコヤミの口から息が吹き出てる程爆笑していた。

「何がおかしい!」俺はなんだか恥ずかしくてトコヤミに向かって照れ隠し混じりで少し怒った。

「お主は今変身したが足だけじゃ。よく見てみぃ」神も笑いを堪えているのか、口角が緩み小刻みに震えてるのがわかる。

「神ってやつはイラッとするな」そう言いながら自身の下半身を見ると大事な股間部分は隠れないで、変身後ブーツを履いただけになっている現状に俺自身も戸惑いながら少し笑ってしまった。

「トコヤミや、そこの哀れな男の背に手を置いてやりなさい」

 神の指示通りにトコヤミは恐る恐る俺の背中に手を置いた。

 すると瞬く間に光に包まれて完全装備で変身が完了した。これには俺もトコヤミも驚いた。

「私たちの呪いはコレだな?」

「そうじゃ。お前たち二人が手を取り合い二人が揃うまで完全な変身は出来ぬ......それじゃ、もういいかの」

 神は俺たちを指差すと俺とトコヤミの足元が薄く暗くなって飲み込まれていく。

「おいジジィ!私たちは一緒に生まれ変わるのか!?」闇に飲み込まれながらトコヤミは神に向かって質問した。

「んや、別々じゃ」淡白に返答する神。

「神よ!俺たちはどうやって出会えるんだ?」俺も飲み込まれ聞かなくなる前に問う。

「知らん。そこはお前たちの望んだ地獄だ。変身ライダーよ、地獄で希望を見つけよ。人々を救い罪を償え」

 慈悲深いのか深くないのか。神様ってやつはよくわからないな、と心に思う。全身が徐々に闇に飲み込まれて身動きが取れない中でトコヤミに手を差し伸べる。

「必ず君を見つける!」

「......あぁ、私もお前を見つけよう」

 トコヤミも俺の手を握り返そうと手を伸ばすが届かない。顔も全部闇に飲み込まれて視界は失われた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。

沼野 花
恋愛
夫と子供たちに、選ばれなかったイネス。 すべてを愛人に奪われ、彼女は限界を迎え、屋敷を去る。 だが、その先に待っていたのは、救いではなかった。 イネスを襲った、取り返しのつかない出来事。 変わり果てた現実を前に、 夫はようやく、自分が何を失ったのかを思い知る。 深い後悔と悲しみに苛まれながら、 失ったイネスの心を取り戻そうとする夫。 しかし、彼女の心はすでに、外の世界へと向かっていた。 贖罪を背負いながらもイネスを求め続ける夫。 そして、母の心を知っていく子供たち。 イネスが求める愛とは、 そして、幸せとは――。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

断罪後のモブ令息、誰にも気づかれずに出奔する

まる
ファンタジー
断罪後のモブ令息が誰にも気づかれないよう出奔して幸せを探す話

クラス最底辺の俺、ステータス成長で資産も身長も筋力も伸びて逆転無双

四郎
ファンタジー
クラスで最底辺――。 「笑いもの」として過ごしてきた佐久間陽斗の人生は、ただの屈辱の連続だった。 教室では見下され、存在するだけで嘲笑の対象。 友達もなく、未来への希望もない。 そんな彼が、ある日を境にすべてを変えていく。 突如として芽生えた“成長システム”。 努力を積み重ねるたびに、陽斗のステータスは確実に伸びていく。 筋力、耐久、知力、魅力――そして、普通ならあり得ない「資産」までも。 昨日まで最底辺だったはずの少年が、今日には同級生を超え、やがて街でさえ無視できない存在へと変貌していく。 「なんであいつが……?」 「昨日まで笑いものだったはずだろ!」 周囲の態度は一変し、軽蔑から驚愕へ、やがて羨望と畏怖へ。 陽斗は努力と成長で、己の居場所を切り拓き、誰も予想できなかった逆転劇を現実にしていく。 だが、これはただのサクセスストーリーではない。 嫉妬、裏切り、友情、そして恋愛――。 陽斗の成長は、同級生や教師たちの思惑をも巻き込み、やがて学校という小さな舞台を飛び越え、社会そのものに波紋を広げていく。 「笑われ続けた俺が、全てを変える番だ。」 かつて底辺だった少年が掴むのは、力か、富か、それとも――。 最底辺から始まる、資産も未来も手にする逆転無双ストーリー。 物語は、まだ始まったばかりだ。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

処理中です...