ラスボスを倒した変身ヒーローの次の敵は異世界にありました

濵野々鳴杜

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一章:変身ヒーローの転生

第二話:変身ヒーローの受難(後編)

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 大人たちにとっては毎年恒例なのか、戦闘系の適正職を授けられた子供たちは立ち入り禁止の森への侵入を試みるも大人たちに阻まれる。

 そんな立ち入り禁止の森の中で異例の出来事。ペルデルという少女は数ある大人たちを置き去りにし独力で森へ侵入。その後一番の戦闘要員であると思われるザクとの一騎打ちが始まろうとしていた。

 ペルデルに追ってきた大人たちは俺とザク、ペルデルの周りを囲う様に構えている。

「ザク!その嬢ちゃん止めてくれ!」
「あんたしか止めれないぞ!」

 大人たちが口を揃えてザクにお願いする。ザクはそれを鼻で笑った。

 俺の後ろに居る大人たちは最早楽しんでいる様にも見える。

「あの嬢ちゃんすげぇ足速いぞ」
「俺なんか胸ぐら掴んで吹っ飛ばされたぞ」
「本当か?お前何キロだったっけ?」

「ん?吹っ飛ばした!?」気になって振り返り吹き飛ばされた男を確認すると横幅がとても広く身長もそこそこに高い。この巨体をペルデルはどうやって吹き飛ばしたんだ?

「……俺、最低でも百四十キロはあるぞ」

 その話を聞いている人たちは笑うのを辞めて沈黙した。そりゃその通りで、こんな巨漢を吹き飛ばす少女が一体どこに居ようか?いや、ここにいる。

 この話が本当ならゴリラおっさんのザクなんて簡単に吹き飛ばされてしまうからだ。

 ザクとペルデルは構え合て睨み合う。ザクは両拳を高く構えるボクシングスタイル。

 ペルデルは面白い事に俺と一緒で左足を前に構えて拳は構えてない。

「小僧、良かったな。どうやら今年は変な構えの奴が多いみたいだぞ!」

「俺は好きでやってたんじゃない!」

「ハハハッ、まぁなんでもいい。小娘!さっさとこんか!」ザクは大声でペルデルに先制するように促す。

 ペルデルはザクの誘いには乗らなかった。ペルデルは左手の甲を突き出して人差し指を数回動かす。

「そちらから来い」という挑発をゴリラ体型の男に向かい少女は行った。

 これにはザクや取り囲む大人たちもみんな笑った。

「ガハハハッ!その意気やヨシ!だがどうなっても知らんぞ小娘!!」ザクはペルデルの誘いに乗り徐々にペルデルとの間合いを詰めていく。

 第三者目線でみると、まるでアリ対ゾウ。

 今にもペルデルはザクのその巨体によって羽交い絞めにされそう。そんな風に見える。

 にも拘わらず取り囲む大人たちの表情は硬く余裕がない。喉を鳴らして汗を拭くの袖で拭う人もいる。

「もう一度聞く。いいんだな」ザクはペルデルに対して最終警告をする。

「さっさとしなさいよ、サンが待ってるんだから」

 ザクは何も言わないが眉間を寄せて静かに怒りを表す。

 ザクは素早い右ストレートをザクは打ち込んだ。大きな打撃音がなると思っていたがその音がなくペルデルはこれを数歩動いてギリギリで躱す。

 自分の顔よりも大きな拳が横切ったというのに一切動じていない。

「言うだけあるな、次も避けろよ」

「余裕よ、あんたは見かけ通り遅いのね」

 ザクはペルデルの構えた左足に向かって素早くローキック。ペルデルは左足を大きく上げてそれを回避。

 ザクは大きく上がったペルデルの左足を掴もうと手を伸ばした。

 ペルデルはその手の平を蹴って後ろへと後退する。

 少女の身のこなしとは思えない一連の動作に俺は驚いていた。

「こんなにも可愛い少女を襲おうとする醜いおじさま、そろそろ私もいいのよね?」

「私は一向にかまわん!」

 ペルデルは左足前進させる。ザクはそれに警戒して数歩下がる。さらにペルデルは前進する。ザクはまた下がる。

「そんなに下がったら当てれないじゃない!」

「危ないものには近寄らない主義なんだ」

「サンはどう思うのかしらね?」目線を軽くこちらへ向けられた。

「とっても臆病なおっさんだなぁ」

 ザクは足を止める。少しはプライドがあるようだ。

「ありがとう、おじさん――ッ」

 ペルデルが右足に力を溜めて構えた時、大きな破裂音が森に響く。

 何をしたのか見えなかった。そこには吐血し脇腹を抑えて膝をつくザクの姿があった。

「そんなっザクでも無理なのか」大人たちは驚きもあるが、どうやってペルデルを確保しようか項垂れているようにも見えた。

「サン、早く家に戻りましょ?」
「おぅ......はっ、はい!」

 衣服についた砂を払ってから差し伸べられた手をつないだ。生物的本能なのか思わずこのサンとしての元の返事に戻ってしまった。

 彼女の手を拒む事が俺にはできない。彼女は思いのほか強すぎたからだ。

 蹲るザクは俺に目線を向けた。何か伝えたいのか、口をパクパクさせているが何もわからない。

 俺のキックでも倒せないザクをここまでにした彼女が怖くて仕方ない。

「ペルデル......適正職はなんだったの?」俺は少し震えながら彼女に問う。

「驚くよきっと」横髪を耳にかけるあどけない仕草を見せてペルデルは言う。

「私勇者だってさ」純粋そうに笑う彼女の雰囲気は何故か一層怖さを引き立てた。

 この世界のシステムがいまいち理解できていない。

 勇者に選ばれたからと言って、こんな小さな少女がゴリラな大人を圧倒するくらい強くなるものなのか?

 もしまた神に会えることがあるのなら言ってやりたい事が出来てしまった。

「変身ヒーローいらなくね?」
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