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番外編:1947年の美しき人
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●前書き
I don't want anyone in or out of my family to see any part of me.Could you destroy my body by cremation?
I beg of you and my family – don't have any service for me or remembrance for me.
My fiance asked me to marry him in June.
I don't think I would make a good wife for anybody.
He is much better off without me.
Tell my father, I have too many of my mother's tendencies.
========================
●本編
「すごく高いね!人が小さなお人形みたいだ!」
「そうだねぇ~今日は風も強い。あまりはしゃいで身を乗り出すなよ」
「はーい」
高層ビルの展望台で見かける何気ない親子の会話がうらやましく感じた。
暖かに感じる。別にこの親子に限らず街中で見かける夫婦や家族を見ると毎回思うんです。
――私には作れない空間だ
幼い頃から常々思っていたことがある。
母は根暗で事ある度に不安や愚痴をよく口にしていた。
そんな母が作り出す空間はいつも暗く億劫だった。
父もそんな母に嫌気がさして最終的には離婚してしまった。
私は父に引き取られる事になった。
その時に誓ったのが
“母のようにはならない”
いつも明るく笑顔の絶えない強い女性であろうとした。
最初は笑顔を作るのも、えくぼが疲れてしまって苦労した。
でも今ではとても自然な笑顔が作れる。
そんな私にも最愛の人が出来た。彼は6月に結婚しようと言ってくれた。
幸せの絶頂だと言って間違いない程の喜びが胸いっぱいに広がった。
そんな喜びの中である姿を思い出した。母の醜い姿だ。
醜い姿が脳内で私と重なった。
いつも作り出す笑顔の奥の方で何か黒い感情があるのを自覚していた。
妬み、辛み、憎悪ともいえる汚い感情。いつか表に現れそうな気がしてならない。
怖くなってある友人に相談したこともあった。
うつむき泣いている私に対して友人は背中をさすりながら
「大丈夫。君は今まで貫いてきた強い自分を信じることが出来るはずだ」 と何度も励ましてくれた。
その時、私の中で何かが崩壊する決定的瞬間があった。
慰めてくれている事実と、自らの姿を客観視してしまった。出来てしまった。
母のようになるまいと誓ったはずの姿に酷似していたのが許せなかった。
この事を婚約者である彼に話しても......いや、きっと彼はそんな私も受け入れてくれる。その自信がある。
でも、そんな彼に甘えたくない。彼が本来つかみ取るかもしれない幸せを私のせいで無駄にはしたくない。
変わろう。変われる。変わるんだ。
自分に言い聞かせても、変えられない人の本質に今になって気が付いた。
こんな事で帰られたらきっと母もあんな風にはなってはいなかったはずだ。
私の一方的なエゴでしかないけれど、誰にも理解されないと思うけれど、私は私の決めた強い自分を貫くために、愛するあなたの為に、私は存在してはいけない。
死に場所にここを選ぶのは私の最後の我儘。
言葉とは裏腹に矛盾した行動の私を許してください。
でも大丈夫、ここなら私もきっと無事ではない。
優しい風が私を包む。
この生涯でこんなに風が心地よいと感じたことはない。
今までこんな事を考えた事すらなかったのに。
風は今まで見たことない絶景へと導く。
みんな、どうか幸せで。
ローズ、愛しているわ。
≪彼女の手帳に残された遺書≫
家族の誰であれ、私の体のどの部分も見てほしくありません。
私の遺体は火葬して頂けますか?
私の家族にどうぞお願い致します。
私の事を悲しんだり、私のために祈ったりしないで。
私を忘れ去ってください。
婚約者は6月に結婚しようと言ってくれました。
私はだれにとっても良い妻になるとは思いません。
彼は私といないほうがずっといい。
愛するお父様へ。私は母に似すぎていました。
================
彼女の死体は、落下の衝撃でつぶれた車の上に横たわる状態で発見された。
遺体は彼女の言う通り火葬された。彼女の自殺はとても話題になった。記念碑などの話も出たが遺族がそれを断る。
黒のコートに真珠のネックレス。綺麗な肌によく似合う赤い口紅が印象的だと当時は語られた。
彼女は忘れられたかったはずなのに「最も美しい遺体」という形で写真に残されてしまった。
ちなみに彼女の婚約者ローズは生涯を独身を貫いた。
私はこれを美しいと思わずにはいられない愚かな性を持ってしまった。
I don't want anyone in or out of my family to see any part of me.Could you destroy my body by cremation?
I beg of you and my family – don't have any service for me or remembrance for me.
My fiance asked me to marry him in June.
I don't think I would make a good wife for anybody.
He is much better off without me.
Tell my father, I have too many of my mother's tendencies.
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●本編
「すごく高いね!人が小さなお人形みたいだ!」
「そうだねぇ~今日は風も強い。あまりはしゃいで身を乗り出すなよ」
「はーい」
高層ビルの展望台で見かける何気ない親子の会話がうらやましく感じた。
暖かに感じる。別にこの親子に限らず街中で見かける夫婦や家族を見ると毎回思うんです。
――私には作れない空間だ
幼い頃から常々思っていたことがある。
母は根暗で事ある度に不安や愚痴をよく口にしていた。
そんな母が作り出す空間はいつも暗く億劫だった。
父もそんな母に嫌気がさして最終的には離婚してしまった。
私は父に引き取られる事になった。
その時に誓ったのが
“母のようにはならない”
いつも明るく笑顔の絶えない強い女性であろうとした。
最初は笑顔を作るのも、えくぼが疲れてしまって苦労した。
でも今ではとても自然な笑顔が作れる。
そんな私にも最愛の人が出来た。彼は6月に結婚しようと言ってくれた。
幸せの絶頂だと言って間違いない程の喜びが胸いっぱいに広がった。
そんな喜びの中である姿を思い出した。母の醜い姿だ。
醜い姿が脳内で私と重なった。
いつも作り出す笑顔の奥の方で何か黒い感情があるのを自覚していた。
妬み、辛み、憎悪ともいえる汚い感情。いつか表に現れそうな気がしてならない。
怖くなってある友人に相談したこともあった。
うつむき泣いている私に対して友人は背中をさすりながら
「大丈夫。君は今まで貫いてきた強い自分を信じることが出来るはずだ」 と何度も励ましてくれた。
その時、私の中で何かが崩壊する決定的瞬間があった。
慰めてくれている事実と、自らの姿を客観視してしまった。出来てしまった。
母のようになるまいと誓ったはずの姿に酷似していたのが許せなかった。
この事を婚約者である彼に話しても......いや、きっと彼はそんな私も受け入れてくれる。その自信がある。
でも、そんな彼に甘えたくない。彼が本来つかみ取るかもしれない幸せを私のせいで無駄にはしたくない。
変わろう。変われる。変わるんだ。
自分に言い聞かせても、変えられない人の本質に今になって気が付いた。
こんな事で帰られたらきっと母もあんな風にはなってはいなかったはずだ。
私の一方的なエゴでしかないけれど、誰にも理解されないと思うけれど、私は私の決めた強い自分を貫くために、愛するあなたの為に、私は存在してはいけない。
死に場所にここを選ぶのは私の最後の我儘。
言葉とは裏腹に矛盾した行動の私を許してください。
でも大丈夫、ここなら私もきっと無事ではない。
優しい風が私を包む。
この生涯でこんなに風が心地よいと感じたことはない。
今までこんな事を考えた事すらなかったのに。
風は今まで見たことない絶景へと導く。
みんな、どうか幸せで。
ローズ、愛しているわ。
≪彼女の手帳に残された遺書≫
家族の誰であれ、私の体のどの部分も見てほしくありません。
私の遺体は火葬して頂けますか?
私の家族にどうぞお願い致します。
私の事を悲しんだり、私のために祈ったりしないで。
私を忘れ去ってください。
婚約者は6月に結婚しようと言ってくれました。
私はだれにとっても良い妻になるとは思いません。
彼は私といないほうがずっといい。
愛するお父様へ。私は母に似すぎていました。
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彼女の死体は、落下の衝撃でつぶれた車の上に横たわる状態で発見された。
遺体は彼女の言う通り火葬された。彼女の自殺はとても話題になった。記念碑などの話も出たが遺族がそれを断る。
黒のコートに真珠のネックレス。綺麗な肌によく似合う赤い口紅が印象的だと当時は語られた。
彼女は忘れられたかったはずなのに「最も美しい遺体」という形で写真に残されてしまった。
ちなみに彼女の婚約者ローズは生涯を独身を貫いた。
私はこれを美しいと思わずにはいられない愚かな性を持ってしまった。
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