53 / 307
United Japanese tea varieties of Iratsuko(5)
空中庭園にて(2)
しおりを挟む
肥料を撒きながら何度か茶の畝を往復していると、三人が畝を挟んで一列に揃うタイミングがあった。
「フランシス、撒くのに精を出すのは結構だけれど」
アサヒはドキリとする。さっきの会話が聞こえていただろうか。
「ムサシのCS園のこと、忘れてない?」
「あ、そうだった」
そう言えばそうだ、とアサヒも思った。
ムサシさんのCS園についてはどうするのだろう。
フランシスは首元に指を当てる。
「……ああ、ムサシか? フランシスだ。お前のCS園の件だが、今いいか? ……こっちに投影すればいいんだな、了解」
フランシスは、空いている左手をCS園の向こうに伸ばした。CS園の向こうから、ドローンが浮かび上がった。どうやら床から出てきたらしい。
ドローンはそのままフランシスの左手が指す方向に従って、ジュディのCS園の端に飛んでいく。
フランシスがジュディの方を見る。ジュディは頷いた。
ジュディも首元に指を当てる。
「第三庭園、施設西端の延長をお願いします」
そう告げると床がわずかに震え、第三庭園のドローンが飛んで行った方向、施設の西端が伸び始めた。
何もないスペースが生まれる。
ドローンはその上空に浮かぶと、映像を投影し始めた。
CS園の畝が、半透明だが何本か出現した。
「投影したぞ。何? ……ああ、わかった。ハッキングとかするなよ。ドローン番号はBB1984だ」
フランシスが首から指を離す。
「やあ、アサヒ君! お久しぶり」
半透明のCS園の中に、半透明のムサシが立っていた。
「流石にFBUは茶……CS園もハイテクだな、フランシス」
「お前がいた頃には、まだその言い方だったな。古き良き時代だ」
「そうだな。さて、できればお三方を俺自慢のCS園に招待したいところだが、残念ながらチケットをお持ちじゃあないってことで、リモートワークだ。
そっちにバーチャルな俺のCS園を投影した。そこにバーチャルに肥料を撒いてもらえれば、ドローンが動きをスキャン、こっちのロボットに反映して、実際に肥料を撒いてくれるっていう寸法だ」
「資材は揃ってるのか?」
「この前の金で、高い3Dプリンターをオーダーさせてもらったよ。心配ご無用だ」
「なるほどね」
「じゃあ、アサヒ君。俺のトコはフランシスと違って、適切な量の肥料でいいぞ。あと、間違っても覆いをすることだけは勘弁してくれな」
「わかりました」
ムサシは両手を前に出すと、振りをつけてアサヒを軽く指さすような動作をした。ムサシの、独特の別れの挨拶だ。
そのまま、ムサシの幻影が消えた。CS園だけが残る。
「アサヒ、覆いを使いたくなったらいつでも言ってくれ」
フランシスの一言に、思わず吹き出すアサヒだった。
「フランシス、撒くのに精を出すのは結構だけれど」
アサヒはドキリとする。さっきの会話が聞こえていただろうか。
「ムサシのCS園のこと、忘れてない?」
「あ、そうだった」
そう言えばそうだ、とアサヒも思った。
ムサシさんのCS園についてはどうするのだろう。
フランシスは首元に指を当てる。
「……ああ、ムサシか? フランシスだ。お前のCS園の件だが、今いいか? ……こっちに投影すればいいんだな、了解」
フランシスは、空いている左手をCS園の向こうに伸ばした。CS園の向こうから、ドローンが浮かび上がった。どうやら床から出てきたらしい。
ドローンはそのままフランシスの左手が指す方向に従って、ジュディのCS園の端に飛んでいく。
フランシスがジュディの方を見る。ジュディは頷いた。
ジュディも首元に指を当てる。
「第三庭園、施設西端の延長をお願いします」
そう告げると床がわずかに震え、第三庭園のドローンが飛んで行った方向、施設の西端が伸び始めた。
何もないスペースが生まれる。
ドローンはその上空に浮かぶと、映像を投影し始めた。
CS園の畝が、半透明だが何本か出現した。
「投影したぞ。何? ……ああ、わかった。ハッキングとかするなよ。ドローン番号はBB1984だ」
フランシスが首から指を離す。
「やあ、アサヒ君! お久しぶり」
半透明のCS園の中に、半透明のムサシが立っていた。
「流石にFBUは茶……CS園もハイテクだな、フランシス」
「お前がいた頃には、まだその言い方だったな。古き良き時代だ」
「そうだな。さて、できればお三方を俺自慢のCS園に招待したいところだが、残念ながらチケットをお持ちじゃあないってことで、リモートワークだ。
そっちにバーチャルな俺のCS園を投影した。そこにバーチャルに肥料を撒いてもらえれば、ドローンが動きをスキャン、こっちのロボットに反映して、実際に肥料を撒いてくれるっていう寸法だ」
「資材は揃ってるのか?」
「この前の金で、高い3Dプリンターをオーダーさせてもらったよ。心配ご無用だ」
「なるほどね」
「じゃあ、アサヒ君。俺のトコはフランシスと違って、適切な量の肥料でいいぞ。あと、間違っても覆いをすることだけは勘弁してくれな」
「わかりました」
ムサシは両手を前に出すと、振りをつけてアサヒを軽く指さすような動作をした。ムサシの、独特の別れの挨拶だ。
そのまま、ムサシの幻影が消えた。CS園だけが残る。
「アサヒ、覆いを使いたくなったらいつでも言ってくれ」
フランシスの一言に、思わず吹き出すアサヒだった。
0
あなたにおすすめの小説
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。
黒ハット
ファンタジー
前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。
【12月末日公開終了】これは裏切りですか?
たぬきち25番
恋愛
転生してすぐに婚約破棄をされたアリシアは、嫁ぎ先を失い、実家に戻ることになった。
だが、実家戻ると『婚約破棄をされた娘』と噂され、家族の迷惑になっているので出て行く必要がある。
そんな時、母から住み込みの仕事を紹介されたアリシアは……?
悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる
竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。
評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。
身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。
アラフォーおっさんの週末ダンジョン探検記
ぽっちゃりおっさん
ファンタジー
ある日、全世界の至る所にダンジョンと呼ばれる異空間が出現した。
そこには人外異形の生命体【魔物】が存在していた。
【魔物】を倒すと魔石を落とす。
魔石には膨大なエネルギーが秘められており、第五次産業革命が起こるほどの衝撃であった。
世は埋蔵金ならぬ、魔石を求めて日々各地のダンジョンを開発していった。
異世界亜人熟女ハーレム製作者
†真・筋坊主 しんなるきんちゃん†
ファンタジー
異世界転生して亜人の熟女ハーレムを作る話です
【注意】この作品は全てフィクションであり実在、歴史上の人物、場所、概念とは異なります。
【完結】異世界で魔道具チートでのんびり商売生活
シマセイ
ファンタジー
大学生・誠也は工事現場の穴に落ちて異世界へ。 物体に魔力を付与できるチートスキルを見つけ、 能力を隠しつつ魔道具を作って商業ギルドで商売開始。 のんびりスローライフを目指す毎日が幕を開ける!
次期国王様の寵愛を受けるいじめられっこの私と没落していくいじめっこの貴族令嬢
さら
恋愛
名門公爵家の娘・レティシアは、幼い頃から“地味で鈍くさい”と同級生たちに嘲られ、社交界では笑い者にされてきた。中でも、侯爵令嬢セリーヌによる陰湿ないじめは日常茶飯事。誰も彼女を助けず、婚約の話も破談となり、レティシアは「無能な令嬢」として居場所を失っていく。
しかし、そんな彼女に運命の転機が訪れた。
王立学園での舞踏会の夜、次期国王アレクシス殿下が突然、レティシアの手を取り――「君が、私の隣にふさわしい」と告げたのだ。
戸惑う彼女をよそに、殿下は一途な想いを示し続け、やがてレティシアは“王妃教育”を受けながら、自らの力で未来を切り開いていく。いじめられっこだった少女は、人々の声に耳を傾け、改革を導く“知恵ある王妃”へと成長していくのだった。
一方、他人を見下し続けてきたセリーヌは、過去の行いが明るみに出て家の地位を失い、婚約者にも見放されて没落していく――。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる