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テラ・ドス・ヴェルメロス(8)
地図にない王国(1)
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「ふーっ。しっかし結構慣れてきたね」
パチパチと爆ぜる音だけが響く森の中で、レインスが言った。
ヴェルメロスの旅団メンバーは漆黒の森に囲まれた中で、焚き火を囲んでいた。
スタートは少し早めの夕食だったが、日の出とともに明日も空を飛んで、旅を続けなくてはならない。
夕食後のひと時は、そんな忙しい旅程での、束の間の安らぎ時間だった。
「確かに慣れてきたな」
オクルスが返す。ララも頷いて答えた。
アルマージュが言う。
「まあ、年ごとにちょくちょく変えるヤツもいるからな」
ソレを聞いて、レインスがアルマージュを見つめる。眉間にはシワで、疑うような目つきだ。
「どうした?」
「年ごとにちょくちょく変える、って何?」
「いや、時々いるだろ」
「何が?」
「覆いの具合変えるヤツ」
レインスが了解したように、しかし呆れた顔をする。
「私、『慣れた』って言ったのは、“アズール”のコトなんだけど」
“パラ・メテオ・アズール”、『青を殺すために』は、ココまで彼らが空を飛んで旅するために使ってきた機械だ。
お茶の製造工程、“蒸し”で使う『蒸し機』を改造した、蒸気飛行装置である。
オクルスの開発したソレで、旅団の少年たちはようやく、旅路の半分程度を飛行し終わったのであった。
彼らの国“ヴェルメロス”は目的とする山脈から最も遠く、逆に言えばソレ故に他国の妨害による空路制限がないため、飛行という旅路を選択できたのだ。
とは言え、旅というには景色は眼下に広がる森のみで、割と味気ないものではあったが。
「あなた、私の容姿が変わったコトに『慣れた』って言ってない?」
レインスがアルマージュを詰める。
確かに、オクルスの悪戯によって“覆い”の期間を延ばされ、容姿が少年から少女に変わってしまったレインスに対しても、皆『慣れた』。
「お、おいおいレインス。そ、そんなつもりで言ってたのか?」
明らかに動揺するオクルス。ララもそのセリフに同意を示すため、またも頷いていたが、コチラも明らかに首の振りと回数が大仰だ。
「いや、なんかゴメン」
「……まあ、いいけど」
謝るアルマージュ。レインスは感情を込めず答える。
オクルスの悪戯による性別変化に関し、レインスをキレさせると恐いというコトを、皆は痛いほど知っていた。
痛いほど知っていながら、ポロっとこのような状態になってしまう辺りが、実に彼ららしいのだが。
険悪というほどではないが、だんまりの時間が続く。
その流れを断ち切ったのもレインスだった。
「……私もようやく、自分に慣れてきたトコロだし」
皆の顔が徐々に明るくなる。
オクルスが言った。
「だよな! いや、結構可愛いと思うぜ!」
「調子乗んな」
パチパチと爆ぜる音だけが響く森の中で、レインスが言った。
ヴェルメロスの旅団メンバーは漆黒の森に囲まれた中で、焚き火を囲んでいた。
スタートは少し早めの夕食だったが、日の出とともに明日も空を飛んで、旅を続けなくてはならない。
夕食後のひと時は、そんな忙しい旅程での、束の間の安らぎ時間だった。
「確かに慣れてきたな」
オクルスが返す。ララも頷いて答えた。
アルマージュが言う。
「まあ、年ごとにちょくちょく変えるヤツもいるからな」
ソレを聞いて、レインスがアルマージュを見つめる。眉間にはシワで、疑うような目つきだ。
「どうした?」
「年ごとにちょくちょく変える、って何?」
「いや、時々いるだろ」
「何が?」
「覆いの具合変えるヤツ」
レインスが了解したように、しかし呆れた顔をする。
「私、『慣れた』って言ったのは、“アズール”のコトなんだけど」
“パラ・メテオ・アズール”、『青を殺すために』は、ココまで彼らが空を飛んで旅するために使ってきた機械だ。
お茶の製造工程、“蒸し”で使う『蒸し機』を改造した、蒸気飛行装置である。
オクルスの開発したソレで、旅団の少年たちはようやく、旅路の半分程度を飛行し終わったのであった。
彼らの国“ヴェルメロス”は目的とする山脈から最も遠く、逆に言えばソレ故に他国の妨害による空路制限がないため、飛行という旅路を選択できたのだ。
とは言え、旅というには景色は眼下に広がる森のみで、割と味気ないものではあったが。
「あなた、私の容姿が変わったコトに『慣れた』って言ってない?」
レインスがアルマージュを詰める。
確かに、オクルスの悪戯によって“覆い”の期間を延ばされ、容姿が少年から少女に変わってしまったレインスに対しても、皆『慣れた』。
「お、おいおいレインス。そ、そんなつもりで言ってたのか?」
明らかに動揺するオクルス。ララもそのセリフに同意を示すため、またも頷いていたが、コチラも明らかに首の振りと回数が大仰だ。
「いや、なんかゴメン」
「……まあ、いいけど」
謝るアルマージュ。レインスは感情を込めず答える。
オクルスの悪戯による性別変化に関し、レインスをキレさせると恐いというコトを、皆は痛いほど知っていた。
痛いほど知っていながら、ポロっとこのような状態になってしまう辺りが、実に彼ららしいのだが。
険悪というほどではないが、だんまりの時間が続く。
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オクルスが言った。
「だよな! いや、結構可愛いと思うぜ!」
「調子乗んな」
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