カメリア・シネンシス・オブ・キョート

龍騎士団茶舗

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バクエット・ド・パクス(10)

他国に入っただけなのに(13)

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「で? FBU本部とは逆向きに歩いてるようだが?」

ミサトが先を歩いていたカトリーヌに追いつき、問いかける。

「FBUに行きたかったんですか?」

「いや、カトリーヌがそうだと思ってね」

「私はハナから眼中にありませんでしたよ♪」

「そうなのか?」

「ええ、不慮の事態がなければ」

カトリーヌが少し眼の奥を光らせる。

「ありましたか? 不慮の事態」

「あったか? 運転手の中身ぐらいだろう、不慮だったのは」

「……ええ。確かに機械とは思えませんでしたね♪」

カトリーヌは優しい笑みを浮かべた。
最後の言い回しは引っかかったが、ミサトが少し安心する。

前を向いたカトリーヌに対し、ミサトが行き先を尋ねようとした。
と、先にノワールがミサトに話しかけた。

「ミサトさんミサトさん」

「どうした?」

「お聞きしたいコトがあるのですが」

「何?」

「ちょっとちょっと」

ミサトの袖を引っ張り、自らの近くへ誘うノワール。
思いもよらぬノワールにしては女性的な仕草に、少しドキリとするミサト。

「あのですね」

ミサトの耳もとにノワールが唇を近づける。

「チューリングテストって何ですか?」

「へ?」

「さっき言ってたじゃあないですか、チューリングテスト。なんか知らないの私だけみたいですし……」

いや、他の二人も知らないと思うが、と心の中でつっこむミサト。
まあ、こっそり聞いてくれてよかった。カトリーヌに掘り返されると厄介なキーワードだし。

「ああ、簡単に言えば機械の意識レベルの判別テストみたいなもんだよ」

ただし、この世界には存在しないはずのテストだが。

「なるほど。専門用語なのですね」

「そうだね」

「それでは、チューリングとは? 人名ですか?」

より聞かれたくない部分に話が差しかかった時、先を行っていたカトリーヌが言った。

「皆さん、着きましたよ♪」

カトリーヌが左手で示している。

「いや、着きましたよって、何も無いが」

「もう。よく見てください。ココですよ、ココ♪」

皆が近寄る。
歩いてきた通りが明るく、対照的にソレは暗く細かったので気づかなかった。

「あ、路地か」

カトリーヌが示した方向には、路地が続いていた。

「では、行きましょう♪」

路地に入ると、途端に夜らしく、足元が見えづらくなった。

「こんなトコ入って、何があるんだ?」

「行けばわかりますよ♪」

グイグイと皆を先導し進むカトリーヌ。
しばらく進むと、急に左折して姿を消した。
後続する三人も続く。

曲がった先は行き止まりだった。

「あれ? カトリーヌ?」

ミサトが問いかける。と、少し先の右側の壁面から手が伸びた。

「おわあ!」

「すみません皆さん、コチラです♪」

続いて、カトリーヌの顔だけが壁面からでてくる。

「どうなってんだ?」

「えーと、ホログラム?とか言うヤツらしいです。文字通り、隠れ家のお店ですから♪」

カトリーヌが壁の中へ消える。
三人も壁に近づいた。

のっぺりとした無機質な壁だ。
ブレーズが指を伸ばすと、壁に埋まった。
埋まる瞬間、グリッチが走る。

「大丈夫ですよ! 早く早く♪」

急かす声が壁の向こうから聞こえてくる。
三人は息を止め、壁に飛び込んだ。
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