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南山城国(11)
忌村(17)
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「ダメです! 童仙さん!」
「いいえ! カオル殿、もしもココを抜けられないとしても、私たちは元の茶畑からやり直すコトが可能です。一人なら村を抜け、皆さんに追いつくのも容易なハズ。どうぞココは先に」
触手はその形態を村人を模したモノに変化させたせいか、動きは緩やかになった。
だが、もはや村の出口まですり抜けるにはその数は多く、しかも斬りつけたトコロでほぼ意味はないときている。
童仙はその場に坐すると、目を閉じたままで太刀を脇に置いた。
そして小刀を手に取る。
「童仙殿、すまない。この位置からでは介錯できそうもない」
「いいえ、お手は煩わしません。初めてではございませぬ故」
遠藤に、童仙は落ち着いて語りかけた。
龍之介は自らの無力を、唇の端に強く噛みしめている。
「……慣れてるんですね? 童仙さん」
「もちろんです。朝飯前ですよ、カオル殿」
童仙はカオルに笑いかけた。
カオルはその顔を長くは見ることなく、前を向いた。
「行くよ! 龍之介くん、遠藤さん」
「は、はい!」
龍之介は踵を返し、遠藤は優しい笑みを顔に浮かべて答えた。
森の奥へと三人は進んだ。
◇◇◇
童仙は三人の走り去る音が遠くなっていくのを確認すると、小刀を抜いた。
腹部を十文字に、その後に喉を突いて果てるつもりだった。
だが、自らの腹部を貫いた直後に、敵の触手がその刀を弾いた。
その触手は、童仙には見るコトは叶わなかったが、敵が触手を変形させて模した村人、その村人の更に右手が変形したものだった。
苦しみの中、唸り、脂汗をかきつつも、飛ばされた小刀の代わりに脇に置いた太刀へと手を伸ばす童仙。
しかし、その太刀を持ち上げることも叶わなかった。
太刀は擬態村人3人が腕を変形させた触手によって、地面にへばりつけられ固定されていた。
童仙は絶望感が這い寄るのを感じつつも、舌を噛み切ろうとした。
「やめとけ。舌切っても死ぬるまでには時間がかかるぞ」
童仙の耳に、かすれたような男性の声。
と、目の前で何かが風を切るのを感じた。次いで、太刀が軽くなり、持ち上げられるようになった。
「己が茶畝に持ち帰れるは他人が触れていない、身につけている物のみ。表道具は要るだろう、坊主」
『坊主』の声に、誰かを思いだしそうになる童仙。
「介錯は任せい」
「か、かたじけない」
声の主が誰かを思いだす前に童仙は、南山城国は自らの茶園へと戻っていた。
「いいえ! カオル殿、もしもココを抜けられないとしても、私たちは元の茶畑からやり直すコトが可能です。一人なら村を抜け、皆さんに追いつくのも容易なハズ。どうぞココは先に」
触手はその形態を村人を模したモノに変化させたせいか、動きは緩やかになった。
だが、もはや村の出口まですり抜けるにはその数は多く、しかも斬りつけたトコロでほぼ意味はないときている。
童仙はその場に坐すると、目を閉じたままで太刀を脇に置いた。
そして小刀を手に取る。
「童仙殿、すまない。この位置からでは介錯できそうもない」
「いいえ、お手は煩わしません。初めてではございませぬ故」
遠藤に、童仙は落ち着いて語りかけた。
龍之介は自らの無力を、唇の端に強く噛みしめている。
「……慣れてるんですね? 童仙さん」
「もちろんです。朝飯前ですよ、カオル殿」
童仙はカオルに笑いかけた。
カオルはその顔を長くは見ることなく、前を向いた。
「行くよ! 龍之介くん、遠藤さん」
「は、はい!」
龍之介は踵を返し、遠藤は優しい笑みを顔に浮かべて答えた。
森の奥へと三人は進んだ。
◇◇◇
童仙は三人の走り去る音が遠くなっていくのを確認すると、小刀を抜いた。
腹部を十文字に、その後に喉を突いて果てるつもりだった。
だが、自らの腹部を貫いた直後に、敵の触手がその刀を弾いた。
その触手は、童仙には見るコトは叶わなかったが、敵が触手を変形させて模した村人、その村人の更に右手が変形したものだった。
苦しみの中、唸り、脂汗をかきつつも、飛ばされた小刀の代わりに脇に置いた太刀へと手を伸ばす童仙。
しかし、その太刀を持ち上げることも叶わなかった。
太刀は擬態村人3人が腕を変形させた触手によって、地面にへばりつけられ固定されていた。
童仙は絶望感が這い寄るのを感じつつも、舌を噛み切ろうとした。
「やめとけ。舌切っても死ぬるまでには時間がかかるぞ」
童仙の耳に、かすれたような男性の声。
と、目の前で何かが風を切るのを感じた。次いで、太刀が軽くなり、持ち上げられるようになった。
「己が茶畝に持ち帰れるは他人が触れていない、身につけている物のみ。表道具は要るだろう、坊主」
『坊主』の声に、誰かを思いだしそうになる童仙。
「介錯は任せい」
「か、かたじけない」
声の主が誰かを思いだす前に童仙は、南山城国は自らの茶園へと戻っていた。
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