カメリア・シネンシス・オブ・キョート

龍騎士団茶舗

文字の大きさ
247 / 307
ラスト・コンテクスト Part1

大文字の夜に(20)

しおりを挟む
メイは急に立ち止まった。
そして背後を振り返る。

「どうした?」

ツヅキが声をかけた。

「いえ……やっぱり、二人を置いてはいけないわ」

「ソレは違うぞ、メイ。俺たちが二人にできる最善のコトは今、いち早く“鍵”を手に入れて、中腹で“所有権”を確保するコトだ。ソレができれば、二人はすぐにでも迎えに行ける。そしてそのために、二人は俺たちを送りだしてくれたんだ」

「……」

「心を読まなくても、それぐらいはわかるだろ?」

メイが前を向き直す。
ツヅキに目を合わせた。

ツヅキは視線を逸らすコトなく、メイとの対話を継続する。

「……そうね、急ぎましょう」

メイはツヅキに追いつこうとした。
その時、ツヅキとメイの間に木の葉が数枚、落ちてきた。

「危ない!」

メイがツヅキを突き放す。
メイも反動を利用して勢いよく後退した。

二人が一瞬前までいた場所に、誰かが落下してくる。

「おっしぃ~! ナイス判断ですねぇ♪」

「パクスの……カトリーヌさんね」

「どうも、デル・ゾーネのメイ・ペイルンオーリンさん♪ カトリーヌ、カトリーヌ・ソルティエールです。そしてソチラが」

カトリーヌの背後、ツヅキの前に三人の人影がまた、落下してきた。

「恭仁ミサトさんにノワール・シューベルト、ブレーズ・イメールシュテです♪」

「……久世ツヅキだ。よろしく」

ツヅキは銃を抜こうとしたが、ソレよりも早く、足元に弾丸が撃ち込まれた。
銃を構えたミサトが、左手の人差し指を唇の前に当てて言う。

「ちっちっち。私以外の二人はこの世界の人だし優しいからキミを攻撃しないと思うけど、私はキミと同じ“世界”出身よ。少々痛いめに遭ってもらうコトはできるわ。だから、できればそうさせないで、ね?」

ミサトがウインクする。
ツヅキは銃からゆっくりと手を離す。

「ゴメン!」

メイが急に大声を上げ、杖を振った。
衝撃波が放たれたが、カトリーヌはソレを、上半身を傾けて難無く避ける。

「おっとぉ。謝らなくてもいいですよ♪」

「違う」

メイがポツリと言う。
衝撃波が後方のツヅキに命中した。

「ぐあっ……ゴメンって、」

命中から一拍置いて、魔力が作動する。

「コレか……っ!」

『二発めはない』と言っていた“飛行”だ。
ツヅキが勢いよく吹き飛ばされる。

「ウッソっ……! 味方に対してもドSかよ!?」

ミサトが言う。
カトリーヌ(「ミサトさんもじゃあないかな……?」)以外の三人は、森の奥に吹き飛ばされていったツヅキを追い始めた。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

英雄召喚〜帝国貴族の異世界統一戦記〜

駄作ハル
ファンタジー
異世界の大貴族レオ=ウィルフリードとして転生した平凡サラリーマン。 しかし、待っていたのは平和な日常などではなかった。急速な領土拡大を目論む帝国の貴族としての日々は、戦いの連続であった─── そんなレオに与えられたスキル『英雄召喚』。それは現世で英雄と呼ばれる人々を呼び出す能力。『鬼の副長』土方歳三、『臥龍』所轄孔明、『空の魔王』ハンス=ウルリッヒ・ルーデル、『革命の申し子』ナポレオン・ボナパルト、『万能人』レオナルド・ダ・ヴィンチ。 前世からの知識と英雄たちの逸話にまつわる能力を使い、大切な人を守るべく争いにまみれた異世界に平和をもたらす為の戦いが幕を開ける! 完結まで毎日投稿!

エリクサーは不老不死の薬ではありません。~完成したエリクサーのせいで追放されましたが、隣国で色々助けてたら聖人に……ただの草使いですよ~

シロ鼬
ファンタジー
エリクサー……それは生命あるものすべてを癒し、治す薬――そう、それだけだ。 主人公、リッツはスキル『草』と持ち前の知識でついにエリクサーを完成させるが、なぜか王様に偽物と判断されてしまう。 追放され行く当てもなくなったリッツは、とりあえず大好きな草を集めていると怪我をした神獣の子に出会う。 さらには倒れた少女と出会い、疫病が発生したという隣国へ向かった。 疫病? これ飲めば治りますよ? これは自前の薬とエリクサーを使い、聖人と呼ばれてしまった男の物語。

第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。

黒ハット
ファンタジー
 前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。  

異世界亜人熟女ハーレム製作者

†真・筋坊主 しんなるきんちゃん†
ファンタジー
異世界転生して亜人の熟女ハーレムを作る話です 【注意】この作品は全てフィクションであり実在、歴史上の人物、場所、概念とは異なります。

天才女薬学者 聖徳晴子の異世界転生

西洋司
ファンタジー
妙齢の薬学者 聖徳晴子(せいとく・はるこ)は、絶世の美貌の持ち主だ。 彼女は思考の並列化作業を得意とする、いわゆる天才。 精力的にフィールドワークをこなし、ついにエリクサーの開発間際というところで、放火で殺されてしまった。 晴子は、権力者達から、その地位を脅かす存在、「敵」と見做されてしまったのだ。 死後、晴子は天界で女神様からこう提案された。 「あなたは生前7人分の活躍をしましたので、異世界行きのチケットが7枚もあるんですよ。もしよろしければ、一度に使い切ってみては如何ですか?」 晴子はその提案を受け容れ、異世界へと旅立った。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

戦国鍛冶屋のスローライフ!?

山田村
ファンタジー
延徳元年――織田信長が生まれる45年前。 神様の手違いで、俺は鹿島の佐田村、鍛冶屋の矢五郎の次男として転生した。 生まれた時から、鍛冶の神・天目一箇神の手を授かっていたらしい。 直道、6歳。 近くの道場で、剣友となる朝孝(後の塚原卜伝)と出会う。 その後、小田原へ。 北条家をはじめ、いろんな人と知り合い、 たくさんのものを作った。 仕事? したくない。 でも、趣味と食欲のためなら、 人生、悪くない。

処理中です...