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ラスト・コンテクスト Part3
越境(14)
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「ぐっ……!」
メイは魔力を続けざまにヴァーシュに放っていたが、彼はソレを意に介すコトもなく弾きながら、確実に近づきつつあった。
いくつかの魔力は、メイ目がけて弾き返される。
メイもソレを弾き飛ばすが、攻撃と防御の両面で彼女のエネルギーは削られつつあった。
「止まりなさい!」
メイがヴァーシュに叫ぶ。
メイは杖の照準をツヅキに向けた。
「……メイ?」
「貴方がこの装置を起動するのに“ゼルテーネ”の力が必要なはず! そうでしょう!? だから彼には危害を加えられない!」
「……そうだとも。で、どうするのかね?」
「ソレ以上近づいたら、彼には消えてもらうわ!」
ツヅキには心を読まずとも、メイの心中が見えた。
もちろん、ソレはヴァーシュも同じだった。
「其方のその判断は敬意に値する。だが、身に余る判断は容易にその反応を表出させるものだ」
メイの杖先、そして手は震えていた。
「確かに、装置を起動すれば彼は無事では済むまい。しかし約束しよう。我々は彼のために神殿を建てる。我々にできるコトはそのぐらいだが……全身全霊を以て、彼に未来永劫感謝を表する。もちろんコレは我々のエゴに過ぎず、彼の意見は無視されてしまうが、我々にも選択権はないのだ」
ヴァーシュはツヅキの方を見る。
「勝手申し上げているのは重々承知……何卒、許していただきたい。苦しませはせぬ」
ヴァーシュは首を垂れた。
メイとツヅキは一瞬、反応に迷ったが、メイは続けた。
「い、いいえ! ダメよ! そんなの受け入れられない!」
「では、致し方無い」
ヴァーシュが杖を構える。
メイにはもう対抗しようがない程の強大な魔力が、彼の杖先に集まっていくのが感じられた。
「メイ!」
大法廷の堅く閉ざされていた筈の扉が開かれ、声が響いた。
その方向から光が、魔力が放たれる。
ヴァーシュの背中向かって。
ヴァーシュもソレには流石に対応できず、大きく吹き飛ばされた。
彼の身体は宙を舞い、メイとツヅキの頭上も飛び越え、装置に激突する。
大法廷の入口にはメイの父親、デイル・ペイルンオーリンが立っていた。
「お父様!?」
「……そうか。記憶が戻るスイッチは“メイを視認するコト”か」
ツヅキが呟く。
「コレは一体……どういうコトだ!?」
周囲の戦いの火花を防御しながら、デイルはメイとツヅキに駆け寄った。
「何故、大法廷でこのようなコトが……。確かに、何らかの緊急事態が発生する可能性は予期していたが、今戦っているのは“オートラグ”と旅団たちじゃあないか!?」
「ええ。とにかく、ヴァーシュ卿はカギを起動するつもりなのよ……破壊するんじゃあなくてね。ゴメンお父様、話を早くするために心を読んだわ」
「ソレは構わないが……そうだったのか」
三人はヴァーシュの方を見る。
ヴァーシュは装置の椅子にしがみつき、立ち上がろうとしているように見えた。
メイは魔力を続けざまにヴァーシュに放っていたが、彼はソレを意に介すコトもなく弾きながら、確実に近づきつつあった。
いくつかの魔力は、メイ目がけて弾き返される。
メイもソレを弾き飛ばすが、攻撃と防御の両面で彼女のエネルギーは削られつつあった。
「止まりなさい!」
メイがヴァーシュに叫ぶ。
メイは杖の照準をツヅキに向けた。
「……メイ?」
「貴方がこの装置を起動するのに“ゼルテーネ”の力が必要なはず! そうでしょう!? だから彼には危害を加えられない!」
「……そうだとも。で、どうするのかね?」
「ソレ以上近づいたら、彼には消えてもらうわ!」
ツヅキには心を読まずとも、メイの心中が見えた。
もちろん、ソレはヴァーシュも同じだった。
「其方のその判断は敬意に値する。だが、身に余る判断は容易にその反応を表出させるものだ」
メイの杖先、そして手は震えていた。
「確かに、装置を起動すれば彼は無事では済むまい。しかし約束しよう。我々は彼のために神殿を建てる。我々にできるコトはそのぐらいだが……全身全霊を以て、彼に未来永劫感謝を表する。もちろんコレは我々のエゴに過ぎず、彼の意見は無視されてしまうが、我々にも選択権はないのだ」
ヴァーシュはツヅキの方を見る。
「勝手申し上げているのは重々承知……何卒、許していただきたい。苦しませはせぬ」
ヴァーシュは首を垂れた。
メイとツヅキは一瞬、反応に迷ったが、メイは続けた。
「い、いいえ! ダメよ! そんなの受け入れられない!」
「では、致し方無い」
ヴァーシュが杖を構える。
メイにはもう対抗しようがない程の強大な魔力が、彼の杖先に集まっていくのが感じられた。
「メイ!」
大法廷の堅く閉ざされていた筈の扉が開かれ、声が響いた。
その方向から光が、魔力が放たれる。
ヴァーシュの背中向かって。
ヴァーシュもソレには流石に対応できず、大きく吹き飛ばされた。
彼の身体は宙を舞い、メイとツヅキの頭上も飛び越え、装置に激突する。
大法廷の入口にはメイの父親、デイル・ペイルンオーリンが立っていた。
「お父様!?」
「……そうか。記憶が戻るスイッチは“メイを視認するコト”か」
ツヅキが呟く。
「コレは一体……どういうコトだ!?」
周囲の戦いの火花を防御しながら、デイルはメイとツヅキに駆け寄った。
「何故、大法廷でこのようなコトが……。確かに、何らかの緊急事態が発生する可能性は予期していたが、今戦っているのは“オートラグ”と旅団たちじゃあないか!?」
「ええ。とにかく、ヴァーシュ卿はカギを起動するつもりなのよ……破壊するんじゃあなくてね。ゴメンお父様、話を早くするために心を読んだわ」
「ソレは構わないが……そうだったのか」
三人はヴァーシュの方を見る。
ヴァーシュは装置の椅子にしがみつき、立ち上がろうとしているように見えた。
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