夜の動物園の異変 ~見えない来園者~

メイナ

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第2章

第5話『もう一つの影』

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 夜の静寂が、動物園を包み込んでいた。

 檻の奥に身を潜めるロイは、じっと暗闇を見つめ、耳をそばだてていた。

「ザザ……ザザッ……」



 再び響く、見えない足音。

 えまはロイの檻のそばで、息を潜めていた。

「……来た。」

「えま、感じる?」

「……はい。」

 冷たい何かが、空気を歪ませながら近づいてくる。

(“それ”は……すごく嫌な感じがする……)

 胸が締め付けられ、えまはロイの隣に駆け寄り、そっと声をかけた。

「ロイ……気をつけて……。」

 ロイは低く「グルル……」と唸り声を上げる。

「ザザッ……ザザザッ……」



 今度は、はっきりと音がした。

「……来る!」

 透子が身構えた、その時。

「ガサッ……ガササッ……」



 ロイが突然檻の奥に向かって飛びかかった。

「ガシャン!」



 ロイが爪を振り下ろした先で、何かが光を弾いたように**バチッ!**と火花が散った。

「今、何かいたよね……!?」

 えまが駆け寄ると、檻の隅の地面に、奇妙な爪の跡が刻まれていた。

「……これ、昨日の足跡と同じ……?」

 透子が険しい表情で指でなぞる。

「でも、今夜はもっとはっきりしてる。」

 えまは足跡からじっと目を離さなかった。

「……この爪痕、"それ"がロイを狙った証拠ですよね?」

「ええ、間違いないわ。」

 透子は冷静にうなずいた。

「ロイは……“それ”が何者か知ってるのかもしれない。」


 ---

 ◆【ロイが守っているもの】

「……ロイが“それ”を警戒してるのは、きっとこの先に何かを守ってるからだと思う。」

 えまは、ロイの視線の先に目を向けた。

「……ロイが檻の奥ばかりを見ていたのは……」

「何かが、そこにあるってことよね。」

 透子がゆっくりと目を細める。

「……ここ、調べてみましょう。」


 ---

 ◆【檻の奥の秘密】

 翌朝。

 園長の許可を取り、ロイの檻の奥を調べることになった。

「ロイ、大丈夫だからね。」

 えまが優しく声をかけると、ロイは静かに目を閉じた。

「……信頼してくれてるみたいね。」

 透子がそう言いながら、ロイの檻の奥へと進んだ。

(……何か、あるはず……)

 透子の目が、地面の異変を見つける。

「……ここ、土の色が違う。」

「え?」

「……えま、ちょっと手伝って。」

 透子が地面を掘り返すと、そこには──

 錆びついた金属製のプレートが埋められていた。

「これって……」

「……何かの封印かしら?」


 ---

 ◆【プレートに残された刻印】

 透子がプレートの表面を指で拭うと、かすかに文字が浮かび上がった。

『守護者の友 安らかに』

「……守護者の友?」

「えま、これ……」

 えまの胸が、ズキンと痛んだ。

「……これ、"それ"が探していたものかもしれません。」

「……でも、"それ"はロイを狙ったのよ?」

「きっと……ロイはこれを守ってるんです。」

 えまは、ロイの方へ視線を向けた。

 ロイは、じっとえまと透子を見つめていた。

「……ロイ、"それ"がこの場所に来る理由、知ってるんだよね?」

 ロイは、目を細めるようにして小さく喉を鳴らした。

「……ロイは、“もう一つの影”がこれを狙ってるのを知ってるんだ。」




 ---

 ◆【“もう一つの影”の目的】

「透子さん、"それ"の目的がわかった気がします。」

 えまは、封印のプレートに指を置いた。

「"それ"は……たぶん、この封印を壊したいんです。」

「……封印の中に何があるの?」

「……わかりません。でも、ロイはずっとここを守ってた。」

「……つまり、“それ”がこのプレートを壊せば、何かが解き放たれるってこと?」

「……かもしれません。」

 えまは、プレートに指を置いたまま、そっと目を閉じた。

(“それ”が……また来る……)



 冷たい視線が、闇の向こうからこちらを見つめているような感覚が、えまの心にまとわりついていた。

「……ロイがいなかったら、"それ"はもうとっくにプレートを壊してたかもしれない。」

「……ロイがいなかったら、今ごろ何が起きていたか……」

 透子の声がかすかに震えた。

「……今夜も、ロイのそばにいないと。」

「……うん。」

 えまは、檻の奥のプレートをもう一度見つめ、ぎゅっと手を握りしめた。


 ---

 ◆【次回予告】

 第6話『封印の正体』
 ・プレートに秘められた「封印の正体」とは?
 ・“もう一つの影”が本格的に動き出す……!
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