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終章 正しい黒魔術の使い方

目が覚めた時にはもう遅かった《レイラside》

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 「はぁ!? アディラが雨を降らせた!? そんなわけないでしょ‼ アディラは悪魔でしょっ‼ 人に害を与える事しかできない奴なのに‼」
お母様が言ったことに、あたしは憤慨する。
アディラは悪魔でしょ!?
人に害を与えるしかできないのに!
あり得ないわ‼
きっとルドルフの信頼を買っておいていずれ女王になるつもりなんだ‼
フン、馬鹿ね。
ルドルフなんかの信頼を買うよりあたしの信頼を買ったほうが良いわよ。
 だってあたしが一番権力を持っている‼
 ん? じゃあなんであたしより権力の低い奴が国を動かしているんだろう?
天才と呼ばれたから?
 いや、そんなのきっとインチキ。
黒魔術使いのアディラを信用するんだから、ルドルフもきっと黒魔術が使えるのよ!
それで国王になりたいがだけに黒魔術を使って「天才」になったんだ!
 この際、ルドルフの嘘も暴い――
「な、何よこの手紙っ‼ 『国に雨をもたらしたアディラ様を祝典する』!?」
あたしの思考は、お母様の甲高い声に遮られた。
 はっ!?
国に雨をもたらしたアディラ様を祝典する!?
そんなの嘘に決まってる‼
「こうなったらあたしがルドルフに直談判してくるっ‼」
あたしがそう大声で言い、立ち上がると、家族の顔が真っ青になった。
なんで?
「レイラ! あなた国王陛下を呼び捨てなんて……いつからそんなに国王陛下を呼び捨てにするほど偉くなったのよ‼」
お母様がそう慌てている。
あれ、お母様は分かっていないの?
「あたしは、ルドルフより権力が高いの‼ 見くびらないでよね‼」
そう言ってあたしは、王宮へ走り出した。


 「ルドルフ‼」
バンと扉を開けると――そこにはアディラとルドルフがいた。
ルドルフは、なぜか顔をしかめている。
「レイラ・ハミルトン侯爵令嬢……いつからわしを呼び捨てできるように偉くなったのだ?」
はあ? ルドルフまで分かっていないの?
あたしは、腰に手を当て仁王立ちになる。
「そんなの、あたしがこの国で一番権力を持っているから‼ ルドルフ、アディラ、その嘘暴いてやる‼」
するとアディラは、ため息をはいた。
「はぁ……なんでです? 侯爵令嬢のあなたより王族のほうが権力が高いに決まっているでしょう?」
えっ!?
そうなの!?
って、そんなわけない。
「どこに証拠があるのよ‼ このインチキ野郎!」
「ではこの国で一番権力を持っているあなたはなぜ王の座についていないのですか? 一番権力を持っているなら力づくで陛下を従わせられるのではないでしょうか?」
あたしがアディラを指さすと、すぐに返答が返ってくる。
……ぐっ……。
でっでも今すぐにでも下ろせる……。
「レイラ嬢。貴女が本当にこの国一番の権力を持っているなら、この衛兵を従わせてみろ」
ルドルフがそういうと、右の扉から衛兵が出てくる。
 フン、これくらい簡単よ。
あたしの召使いにしてやろうじゃないの。
あたしが一声かけようとしたとき、ものすごいスピードで衛兵が目の前に着き――そのまま両腕をつかまれた。
っ! 何するのよ! あたしは王より権力を持っているのよ‼
「こらっ、離せ‼ あんなインチキ野郎の王を信じても意味ない‼ 離しなさいよっ‼ あたしの命令が聞けないの!? 馬鹿衛兵! 今すぐ国から出ていきなさい‼」
ところが、あたしがいくら命令をしようが衛兵は微動だにしない……。
 ?? ……ねぇ本当に、インチキ野郎のほうが権力が高いの……?
どうすれば……?
ルドルフはあたしを一瞥すると、正面を向いた。
 「これより、アディラ嬢の祝典を始める‼ 貴族よ、入れ‼」
ぞろぞろと、きらびやかな服やアクセサリーを身に着けた人が入ってきた。
その中には、お母様やお父様もいた。
 「まずアディラ嬢の紹介をする! アディラ嬢は、黒魔術の使い手だ‼」
ルドルフがそういうと、辺りがザワザワし始める。
よ、よし。こう来るなら!
「ほら、やっぱりアディラは悪魔なのよ‼ 殺しなさい‼」
あたしがそういうと――急に体が動かなくなった。
アディラを見ると、咳払いをしている。
「オホン。陛下の話の最中に発言した罪として、黒魔術で動けないようにさせていただきました。ご理解をよろしくお願いします。では陛下、話の続きを」
すぐに、「アディラ様万歳!」という声が上がる。
何よ! あたしを動けなくして、それで万歳なんて……こいつらアディラかルドルフに操られてるのよ‼
「アディラ嬢は雨を降らせ、作物に命を与えてくれた。この功績により、王国立学園卒業後に宮廷魔導師に就かせるとする!」
はぁ!? 宮廷魔導師なんて……王専属の魔導師じゃない‼
悪魔のくせに‼
王の次に偉いとかいう……。
で、でもあたしのほうが権力……高い……はず……。
「ハミルトン侯爵、ハミルトン侯爵夫人、ハミルトン侯爵令息、ハミルトン侯爵令嬢、前へ」
なっ、何かしら……お母さまたちまで……。
っというか、あなたの命令なんてに屈しないわ……ってあれ?
体が勝手に……ルドルフの前に!
「ハミルトン侯爵家は、アディラ嬢を馬鹿にした罪で1000億円を賠償金として――」
「お、お待ちください、陛下! あれはウィルソンとレイラが勝手に広めたのです‼ 私達は関係ありません! なのでウィルソンとレイラのお金全部にしてください‼」
お、お母様っ‼ 私達を見捨てるの!?
今まで可愛がられてきたのに……酷い!
だけどルドルフは、冷たく両親を一瞥した。
「ダメだ。この不始末は親の責任。ハミルトン侯爵家で罪を償う必要がある」
……ふう、よかった。
1000億円払っても、まだ1000億円あるから……罪は軽い方だわ!
よかった……って私……ルドルフに屈している!?
やっぱり……ルドルフのほうが……?
「それと――アディラの呪いを受けてもらう」
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