幼馴染の御曹司と許嫁だった話

金曜日

文字の大きさ
57 / 218
この先プラトニックにつき【挨拶編】

2

しおりを挟む



「顔……真っ赤だなあき…」
「んー……恥ずかしいってぇ…俺相手に無駄に王子様やらなくていーから!」
「え?じゃあ、あき以外にしていいの?」
「……それは……、…だ………だめっ!」
「ぶはっ!!!!たまんねー!!!コイツまじかわいーーーー!!!!!」
「叫ぶなっ!」


ケラケラ笑っていた爽は、ポンポンと俺の頭を撫でた。そのまま、さっきまで俺の手に握られていた携帯を上から覗き込む。


「…あき……もしかして誰かと連絡取ってた?」
「え?」
「いや…すっげぇ真剣な顔で画面見てたからさ、ちょっと気になって」
「あぁ、うん!楓さんだよ」
「え…清水?バイトのこと…?」
「そーなの!今日丸一日お休みもらってるから…一応お店の様子聞いとこうと思って」
「店…そんな忙しいんだ?」
「うんっ!毎日大盛況だよ!」


オープンしたてから忙しかったけど、最近はさらにお客さんの数が増えた気がする。たぶん…うちの店はリピーター率が異様に高い。もちろん置いてある商品のセンスがいいのもあるけど…なにより、店長があんなかわいいんだからみんな癒されに来たくなっちゃうよねぇ?


「そっか…清水大丈夫そう?」
「うん…!とりあえず今日は平気!……でもね、そろそろ俺1人じゃバイトの数足りないって楓さんが嘆いてて…だから、お友達紹介してくれないかって聞かれたの」
「へぇ…」
「今はまだいいとしても、年末は今より絶対忙しいから…それまでに本気でバイト増やさなきゃやばいらしいんだ」
「そんな混んでるんだ?」
「というか…ほら、うちカフェスペースもあるでしょ?だから1人だとどうしても接客待たせちゃったりするの」
「ああ、なるほど……それで増員を検討中ってことね」
「うん……だけどね…俺友達少ないし、バイト出来る人ってことは…楓さんは学生を求めてるわけじゃん?」
「ってことは……つまり、」
「そう…現状当てはまるの……要しかいないんだけど……さすがにあり得ないよねぇ…?」
「絶対ねーな…アイツが接客したら秒速で店潰れそう」


全く否定できなくて、苦笑いしてしまう。親友の俺から見たって、要は100%絶対に接客に向いてない。あ、でも一定数要目当てのお客さんはつきそうな気もする。要とびきり美人だし、女王様だし。


「というか…そもそも要はバイトとか必要なくない?爽と同じで超ボンボンなんだから」
「ボンボン言うなっての!」


爽はムッとした顔のまま、俺のほっぺを優しく引っ張る。どうやらちょっと気に障ったらしい。相変わらず、実家がお金持ちなことは爽にとってあんまり嬉しいことじゃないみたい。不思議だよね?俺みたいな庶民からしたら、お金はないよりあった方が絶対いいって思うけどなぁ。桁外れのお金持ちともなると俺たちにはわからないような苦労があるのかな?


爽は俺のほっぺを一通り弄り終えると、少し考え込んだ後…何かを思いついたようにハッとする。


「………バイト…ね」
「……ん?」
「俺、心当たりあるわ」
「え!?」
「めちゃくちゃ適任な奴思いついちゃった」


ニヤッと笑った爽に驚く。
一緒に暮らし始めて半年、どう考えたって爽の交友関係に学生がいるなんて思えない。爽が付き合う相手って、大体が会社の同僚とか取引先の人とか…同じ年代の人ばかりだから…学生の知り合いがいるなんて初耳だ。


なんか………ちょっとやだな。

どういう知り合いなんだろ……



爽に悟られないように少しだけ俯いて考え込んでいると、勢いよく顎を掴まれて上を向かされた。視線がバッチリ合ったと思ったら、フッと柔らかく笑う爽に…何故か少しだけ胸がキュッと苦しくなった。



「あき…?お前、まーたなんか良くないこと考えてんな?」
「えっ………だ、だって…」
「ふふっ……あきって…めちゃくちゃ嫉妬深いよな?そういうとこ意外かも」
「………ご、ごめん……鬱陶しい?」
「ううん……すっげぇ嬉しい…もっと妬いて?」


心の底から嬉しそうに、キラキラの瞳で俺に告げる爽にキュンとして…勢いよくお腹に抱きつく。ギュッと腕で締め付けると、爽のバキバキに割れたかたーい腹筋が顔に当たる。相変わらずいい身体すぎるってこの人。毎日のジム通いは伊達じゃない。


「あき…照れてんの……?あ、喜んでる?」
「………どっちも」
「あははっ…もーお前マジかわいい…!」
「なら……無意味に妬かせないでよっ……」
「はーーーー………無理、かわいくてかわいくて、ますます妬かせたくなるっての」


このいじめっ子め!!!
…って返してやりたかったけど、爽の声があんまり優しいから…やめた。

爽はお腹に抱きついていた俺の頭を、ギュッと包むように抱きしめ返す。


「大丈夫だよ、あき…」
「…え?」
「会ったら絶対、あきも納得する相手だから」
「……?」
「そんなことより、早く着替えてこいって!あと15分で家出るぞ」
「ええっ!!!?嘘!?実家帰るの昼からじゃないの!?」


ここから俺の実家なんて、車なら30分もかからない距離なのに……いくらなんでも家出るの早すぎない?


「先に寄りたい所があんだよ」
「……寄りたい…所…?」
「そう…だから、急ぎ目でよろしく」
「ええーっ!!?」


爽に急かされて慌てて立ち上がると、そのまま背中を押されて自室に無理矢理連行された。

爽は、部屋のドアの前まで来るとポンと頭を撫でて俺のつむじにキスをする。


「リビングで待ってるからな」
「……あ、うん……わかった」
「…ふっ……もしかして、あき寂しいの?俺にいて欲しい?」
「そ、そんなんじゃ…!」
「かわいっ……俺もほんとは一緒にいたいけど……あきが着替えてんの見たらムラムラしそうだから遠慮しとくわ」
「…!!ちょっ…爽っ!!」
「あははっ!!怒んなよっ本音なんだから」



本音なら尚タチ悪いわ!!!!


ヒラヒラと手を振りながら去っていく爽へ、当て付けのように音を立ててドアを閉めた。

しおりを挟む
感想 8

あなたにおすすめの小説

【完結】愛されたかった僕の人生

Kanade
BL
✯オメガバース 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。 今日も《夫》は帰らない。 《夫》には僕以外の『番』がいる。 ねぇ、どうしてなの? 一目惚れだって言ったじゃない。 愛してるって言ってくれたじゃないか。 ねぇ、僕はもう要らないの…? 独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。

飼われる側って案外良いらしい。

なつ
BL
20XX年。人間と人外は共存することとなった。そう、僕は朝のニュースで見て知った。 向こうが地球の平和と引き換えに、僕達の中から選んで1匹につき1人、人間を飼うとかいう巫山戯た法を提案したようだけれど。 「まあ何も変わらない、はず…」 ちょっと視界に映る生き物の種類が増えるだけ。そう思ってた。 ほんとに。ほんとうに。 紫ヶ崎 那津(しがさき なつ)(22) ブラック企業で働く最下層の男。顔立ちは悪くないが、不摂生で見る影もない。 変化を嫌い、現状維持を好む。 タルア=ミース(347) 職業不詳の人外、Swis(スウィズ)。お金持ち。 最初は可愛いペットとしか見ていなかったものの…? 2025/09/12 1000 Thank_You!!

日本一のイケメン俳優に惚れられてしまったんですが

五右衛門
BL
 月井晴彦は過去のトラウマから自信を失い、人と距離を置きながら高校生活を送っていた。ある日、帰り道で少女が複数の男子からナンパされている場面に遭遇する。普段は関わりを避ける晴彦だが、僅かばかりの勇気を出して、手が震えながらも必死に少女を助けた。  しかし、その少女は実は美男子俳優の白銀玲央だった。彼は日本一有名な高校生俳優で、高い演技力と美しすぎる美貌も相まって多くの賞を受賞している天才である。玲央は何かお礼がしたいと言うも、晴彦は動揺してしまい逃げるように立ち去る。しかし数日後、体育館に集まった全校生徒の前で現れたのは、あの時の青年だった──

イケメン後輩のスマホを拾ったらロック画が俺でした

天埜鳩愛
BL
☆本編番外編 完結済✨ 感想嬉しいです! 元バスケ部の俺が拾ったスマホのロック画は、ユニフォーム姿の“俺”。 持ち主は、顔面国宝の一年生。 なんで俺の写真? なんでロック画? 問い詰める間もなく「この人が最優先なんで」って宣言されて、女子の悲鳴の中、肩を掴まれて連行された。……俺、ただスマホ届けに来ただけなんだけど。 頼られたら嫌とは言えない南澤燈真は高校二年生。クールなイケメン後輩、北門唯が置き忘れたスマホを手に取ってみると、ロック画が何故か中学時代の燈真だった! 北門はモテ男ゆえに女子からしつこくされ、燈真が助けることに。その日から学年を越え急激に仲良くなる二人。燈真は誰にも言えなかった悩みを北門にだけ打ち明けて……。一途なメロ後輩 × 絆され男前先輩の、救いすくわれ・持ちつ持たれつラブ! ☆ノベマ!の青春BLコンテスト最終選考作品に加筆&新エピソードを加えたアルファポリス版です。

鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる

結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。 冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。 憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。 誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。 鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。

【完結・BL】俺をフッた初恋相手が、転勤して上司になったんだが?【先輩×後輩】

彩華
BL
『俺、そんな目でお前のこと見れない』 高校一年の冬。俺の初恋は、見事に玉砕した。 その後、俺は見事にDTのまま。あっという間に25になり。何の変化もないまま、ごくごくありふれたサラリーマンになった俺。 そんな俺の前に、運命の悪戯か。再び初恋相手は現れて────!?

【BL】捨てられたSubが甘やかされる話

橘スミレ
BL
 渚は最低最悪なパートナーに追い出され行く宛もなく彷徨っていた。  もうダメだと倒れ込んだ時、オーナーと呼ばれる男に拾われた。  オーナーさんは理玖さんという名前で、優しくて暖かいDomだ。  ただ執着心がすごく強い。渚の全てを知って管理したがる。  特に食へのこだわりが強く、渚が食べるもの全てを知ろうとする。  でもその執着が捨てられた渚にとっては心地よく、気味が悪いほどの執着が欲しくなってしまう。  理玖さんの執着は日に日に重みを増していくが、渚はどこまでも幸福として受け入れてゆく。  そんな風な激重DomによってドロドロにされちゃうSubのお話です!  アルファポリス限定で連載中  二日に一度を目安に更新しております

【完結】利害が一致したクラスメイトと契約番になりましたが、好きなアルファが忘れられません。

亜沙美多郎
BL
 高校に入学して直ぐのバース性検査で『突然変異オメガ』と診断された時田伊央。  密かに想いを寄せている幼馴染の天海叶翔は特殊性アルファで、もう一緒には過ごせないと距離をとる。  そんな折、伊央に声をかけて来たのがクラスメイトの森島海星だった。海星も突然変異でバース性が変わったのだという。  アルファになった海星から「契約番にならないか」と話を持ちかけられ、叶翔とこれからも友達として側にいられるようにと、伊央は海星と番になることを決めた。  しかし避けられていると気付いた叶翔が伊央を図書室へ呼び出した。そこで伊央はヒートを起こしてしまい叶翔に襲われる。  駆けつけた海星に助けられ、その場は収まったが、獣化した叶翔は後遺症と闘う羽目になってしまった。  叶翔と会えない日々を過ごしているうちに、伊央に発情期が訪れる。約束通り、海星と番になった伊央のオメガの香りは叶翔には届かなくなった……はずだったのに……。  あるひ突然、叶翔が「伊央からオメガの匂いがする」を言い出して事態は急変する。 ⭐︎オメガバースの独自設定があります。

処理中です...