9 / 36
第2話 鉄鋼街のコロッケパン
第2話 鉄鋼街のコロッケパン 02
しおりを挟む
「これは……マフじいさんか?」
どちらの写真にも、片方にはマフの面影を持つ男性が写っているのだが、女性と共に写っている方は今より圧倒的に若く、男性と共に写っている方は今よりは若く見えるが、もう一枚の写真のマフと比べると歳を取っているように見えた。
「おう、待たせたな」
写真を見ているとマフが2階から戻って来たので、レンタロウは写真から目を離し、マフの居る方へ歩み寄った。
「実はコイツをお前に探して欲しいんじゃ」
「人探しか、どれどれ……」
マフの持っている写真を見ると、そこに写っていたのは先程の二人のどちらでもなく、全身黒ずくめで、頭から足先までひょろっとしている男性であり、その男は無表情というよりは、無感情といった感じで写真に写っていた。
「ほう……写真以外に何か手掛かりは?」
「名前はヤマシタ ヨタロウじゃ」
「ヤマシタ ヨタロウ……与太郎ねぇ……」
名前を聞いたレンタロウは、それが偽名であるという事にすぐに気が付いた。しかも人を心底バカにしたような偽名であると。
与太郎。その言葉には、嘘やでたらめを言う人という意味が込められていた。
「他には?」
「無い。この写真だって、今教えた名前だって確かな手掛かりになる保証も無い。名前だって偽名かもしれんし、体型だって変わっとるかもしれんし、あるいは顔も変えとるかもしれん」
「なるほど……とりあえず表の人間じゃないって事だけは分かった。ってことは、捜す理由もあんまり訊かない方が良いか?」
「そうしてもらうと助かるわい」
マフは自然とレンタロウから目を逸らす。さっきまでの気さくな老人とは打って変わり、今の彼からはただならぬ、鬼気迫る感情を感じた。
「報酬はどうなんだ?」
「報酬は200万リョウじゃ。じゃから修理代は100万で請け負おう」
「なんだよ、全額負担してくれるんじゃないのか……」
「このチリチリ頭っ!! 」
「チリッ――!」
「いいか、今やバイオ燃料やらが主流の時に――」
「ああ分かった分かった! 200万でいいから!!」
また同じ説教をされるのはうんざりだと、レンタロウは嫌々ながらもマフの条件を呑む事にした。
「フン、分かればいいんじゃよ。それじゃあほれ、この写真持ってさっさと捜して来い」
マフは鼻を鳴らして落ち着きを取り戻すと、今回のターゲットが写っている写真をレンタロウに渡した。
「……ちなみにじいさん、この男、もし死んでたらどうする?」
「その時はその時よ。大丈夫、報酬の変更はせんから安心しろ」
「そうか」
「まあそれに……ソイツはいつ死んでもしょうがないような男じゃからな」
「…………」
「おっと話し過ぎたな! それじゃあワシはバイクの修理をしとくから、お前はさっさとソイツを見つけ出して来い」
「ああ、そうするよ」
レンタロウは去り際に悟った。マフが宿している感情、それが怨恨である事を。
しかしその感情の根源が一体何なのかを、マフは話す事を拒絶している。それ故に、レンタロウにはその怨恨の理由について、具体的な想像がつかなかったのだが、しかし一つだけパッと直感的に頭に浮かんだものがある。
それは、復讐だった。
「じいさん……コイツと何があったんだ?」
手に持った写真を見てレンタロウは問い掛けるが、写真に写っている男は無感情のまま何も答えてはくれなかった――。
*
「人探しをするんですか?」
修理屋の前で待っていたサヤカは、レンタロウに言われるなり、キョトンとした顔をしてみせた。
「ああ。ここの修理屋のじいさんが捜して欲しい人間がいるそうだ」
「ははあ……でもフブキさんが人の頼みを聞くなんて珍しいですね」
「修理代を安くするためだ。仕方ない」
「ああ、なるほどですねぇ……」
残念と言わんがばかりのサヤカの表情に、レンタロウは片眉を上げた。
「なんだよ?」
「いやぁ? フブキさんが無償で人の頼みを受けたのかと思ったら、やっぱり報酬付きだったんだって思っただけですよぉ?」
「当たり前だろ? 俺達はボランティアじゃないんだからな」
「まっ、それもそうですね」
サヤカは口元に笑みを浮かべて、レンタロウの言い分に同意した。
どちらの写真にも、片方にはマフの面影を持つ男性が写っているのだが、女性と共に写っている方は今より圧倒的に若く、男性と共に写っている方は今よりは若く見えるが、もう一枚の写真のマフと比べると歳を取っているように見えた。
「おう、待たせたな」
写真を見ているとマフが2階から戻って来たので、レンタロウは写真から目を離し、マフの居る方へ歩み寄った。
「実はコイツをお前に探して欲しいんじゃ」
「人探しか、どれどれ……」
マフの持っている写真を見ると、そこに写っていたのは先程の二人のどちらでもなく、全身黒ずくめで、頭から足先までひょろっとしている男性であり、その男は無表情というよりは、無感情といった感じで写真に写っていた。
「ほう……写真以外に何か手掛かりは?」
「名前はヤマシタ ヨタロウじゃ」
「ヤマシタ ヨタロウ……与太郎ねぇ……」
名前を聞いたレンタロウは、それが偽名であるという事にすぐに気が付いた。しかも人を心底バカにしたような偽名であると。
与太郎。その言葉には、嘘やでたらめを言う人という意味が込められていた。
「他には?」
「無い。この写真だって、今教えた名前だって確かな手掛かりになる保証も無い。名前だって偽名かもしれんし、体型だって変わっとるかもしれんし、あるいは顔も変えとるかもしれん」
「なるほど……とりあえず表の人間じゃないって事だけは分かった。ってことは、捜す理由もあんまり訊かない方が良いか?」
「そうしてもらうと助かるわい」
マフは自然とレンタロウから目を逸らす。さっきまでの気さくな老人とは打って変わり、今の彼からはただならぬ、鬼気迫る感情を感じた。
「報酬はどうなんだ?」
「報酬は200万リョウじゃ。じゃから修理代は100万で請け負おう」
「なんだよ、全額負担してくれるんじゃないのか……」
「このチリチリ頭っ!! 」
「チリッ――!」
「いいか、今やバイオ燃料やらが主流の時に――」
「ああ分かった分かった! 200万でいいから!!」
また同じ説教をされるのはうんざりだと、レンタロウは嫌々ながらもマフの条件を呑む事にした。
「フン、分かればいいんじゃよ。それじゃあほれ、この写真持ってさっさと捜して来い」
マフは鼻を鳴らして落ち着きを取り戻すと、今回のターゲットが写っている写真をレンタロウに渡した。
「……ちなみにじいさん、この男、もし死んでたらどうする?」
「その時はその時よ。大丈夫、報酬の変更はせんから安心しろ」
「そうか」
「まあそれに……ソイツはいつ死んでもしょうがないような男じゃからな」
「…………」
「おっと話し過ぎたな! それじゃあワシはバイクの修理をしとくから、お前はさっさとソイツを見つけ出して来い」
「ああ、そうするよ」
レンタロウは去り際に悟った。マフが宿している感情、それが怨恨である事を。
しかしその感情の根源が一体何なのかを、マフは話す事を拒絶している。それ故に、レンタロウにはその怨恨の理由について、具体的な想像がつかなかったのだが、しかし一つだけパッと直感的に頭に浮かんだものがある。
それは、復讐だった。
「じいさん……コイツと何があったんだ?」
手に持った写真を見てレンタロウは問い掛けるが、写真に写っている男は無感情のまま何も答えてはくれなかった――。
*
「人探しをするんですか?」
修理屋の前で待っていたサヤカは、レンタロウに言われるなり、キョトンとした顔をしてみせた。
「ああ。ここの修理屋のじいさんが捜して欲しい人間がいるそうだ」
「ははあ……でもフブキさんが人の頼みを聞くなんて珍しいですね」
「修理代を安くするためだ。仕方ない」
「ああ、なるほどですねぇ……」
残念と言わんがばかりのサヤカの表情に、レンタロウは片眉を上げた。
「なんだよ?」
「いやぁ? フブキさんが無償で人の頼みを受けたのかと思ったら、やっぱり報酬付きだったんだって思っただけですよぉ?」
「当たり前だろ? 俺達はボランティアじゃないんだからな」
「まっ、それもそうですね」
サヤカは口元に笑みを浮かべて、レンタロウの言い分に同意した。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
サイレント・サブマリン ―虚構の海―
来栖とむ
SF
彼女が追った真実は、国家が仕組んだ最大の嘘だった。
科学技術雑誌の記者・前田香里奈は、謎の科学者失踪事件を追っていた。
電磁推進システムの研究者・水嶋総。彼の技術は、完全無音で航行できる革命的な潜水艦を可能にする。
小与島の秘密施設、広島の地下工事、呉の巨大な格納庫—— 断片的な情報を繋ぎ合わせ、前田は確信する。
「日本政府は、秘密裏に新型潜水艦を開発している」
しかし、その真実を暴こうとする前田に、次々と圧力がかかる。
謎の男・安藤。突然現れた協力者・森川。 彼らは敵か、味方か——
そして8月の夜、前田は目撃する。 海に下ろされる巨大な「何か」を。
記者が追った真実は、国家が仕組んだ壮大な虚構だった。 疑念こそが武器となり、嘘が現実を変える——
これは、情報戦の時代に問う、現代SF政治サスペンス。
【全17話完結】
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
屈辱と愛情
守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。
サレ妻の娘なので、母の敵にざまぁします
二階堂まりい
大衆娯楽
大衆娯楽部門最高記録1位!
※この物語はフィクションです
流行のサレ妻ものを眺めていて、私ならどうする? と思ったので、短編でしたためてみました。
当方未婚なので、妻目線ではなく娘目線で失礼します。
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる