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第2話 鉄鋼街のコロッケパン
第2話 鉄鋼街のコロッケパン 06
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まずは写真の男の情報を仕入れるため、レンタロウ達は店員と会話がしやすそうなカウンター席に座った。
「いらっしゃいませ」
カウンター越しでは、年配の男性店員が挨拶をし、大きな業務用のコーヒーメーカーにコーヒー豆を入れていた。
「オリジナルブレンドを」
「ワタシも同じので」
「少々お待ちを」
二人が注文をすると、店員は開いていたコーヒーメーカーを閉め、マシンを再起動させてからコーヒーを入れ始めた。
「どうぞ」
店員はコーヒーを二人の前に差し出す。コーヒーからはコーヒー豆本来のフルーティな香りと、焙煎され、こんがりと焼けたような香りが混じった濃いアロマを漂わせていた。
「もしかしてアンタ、この店のマスターか?」
「ええ」
「やっぱりな。いやなに、コーヒーの淹れ方に熟練度があるように見えたのでな」
「それはそれは、お褒めに預かり光栄です」
年配の男性店員もとい、サビツキのマスターはレンタロウに会釈をした。
「んん~! フルーティで美味しいですねこのコーヒー。流石はハチマンシティナンバーワン!」
すると先にコーヒーを飲みだしたサヤカは、カップを持ちながら満面の笑みを浮かべており、そんなサヤカに追随するようにレンタロウもコーヒーを飲み始めた。
「うん、確かにいいな。苦すぎるコーヒーはあんまり好みじゃないから、これくらいが丁度良い」
しばらく店の落ち着いた雰囲気を感じながら、ゆっくりとコーヒーを味わい数分後、二人はコーヒーを飲み干したカップをほぼ同時にカウンターの上に置いた。
「美味しかった。ところでマスター、ちょっと尋ねたい事があるんだが」
「はい、何でしょうか?」
「実はこの男を捜してるんだが、見覚えは無いか?」
レンタロウはマフから預かったヤマシタと名乗る男の写真を出すと、マスターはしばらく黙り込んでその顔をじっくり見てから答えてみせた。
「見覚えはありませんね」
「そうか……」
「ただこの方、カタギであるようには見えませんね」
「分かるのか?」
「ええ、この街で長く店をやっているとなんとなくは」
「実はこの男の実態を俺達もあんまり把握してないんだ。何か宛てになりそうな人物とか知らないか?」
レンタロウが尋ねると、マスターは僅かに眉間に皺を寄せ、躊躇うような素振りをしてみせた。
「……そういう方面によく通じている方なら今いらっしゃいますよ」
「ほう、どいつだ?」
「一番端の窓際の席に座っておられる方です」
マスターが言った座席に目を移すと、確かにその場所には白いワイシャツに真紅のネクタイを締め、薄い黒縁のメガネを掛けた男が一人コーヒーを飲んでいた。
「なるほど……マスターありがとう」
「いえ。ただあの方もカタギではございませんのでお気をつけを」
「ああ」
レンタロウがカウンターの席から立ち上がると、それに釣られるようにサヤカも立ち上がった。
「ご馳走様でしたマスター!」
「ありがとうございました」
サヤカが去り際に言って、それに対してマスターは会釈で返した。
二人は真紅のネクタイの男が座る座席に向かう。男もレンタロウとサヤカが向かって来ているのには気づいているが、しかし微動だにせず、何も無いような振る舞いでコーヒーを啜り続けた。
「スマン、ちょっと人探しをしていて訊きたい事があるのだが」
レンタロウが話の口火を切ると、男はチラッと目線だけを上げた。
「訊きたい事があると」
「ああ、この男の事――」
「違う、そうじゃない」
男はニヤリと口元に鋭いカミソリのような笑みを浮かべ、レンタロウの話を遮ってきた。
「他人に物を尋ねる態度としては、あまりにぶっきら棒なのではないかと俺は注意したい訳だよ。そんな事も分からないのか?」
「…………」
男は静かな物言いでレンタロウに敵対心を煽ってきた。
「いらっしゃいませ」
カウンター越しでは、年配の男性店員が挨拶をし、大きな業務用のコーヒーメーカーにコーヒー豆を入れていた。
「オリジナルブレンドを」
「ワタシも同じので」
「少々お待ちを」
二人が注文をすると、店員は開いていたコーヒーメーカーを閉め、マシンを再起動させてからコーヒーを入れ始めた。
「どうぞ」
店員はコーヒーを二人の前に差し出す。コーヒーからはコーヒー豆本来のフルーティな香りと、焙煎され、こんがりと焼けたような香りが混じった濃いアロマを漂わせていた。
「もしかしてアンタ、この店のマスターか?」
「ええ」
「やっぱりな。いやなに、コーヒーの淹れ方に熟練度があるように見えたのでな」
「それはそれは、お褒めに預かり光栄です」
年配の男性店員もとい、サビツキのマスターはレンタロウに会釈をした。
「んん~! フルーティで美味しいですねこのコーヒー。流石はハチマンシティナンバーワン!」
すると先にコーヒーを飲みだしたサヤカは、カップを持ちながら満面の笑みを浮かべており、そんなサヤカに追随するようにレンタロウもコーヒーを飲み始めた。
「うん、確かにいいな。苦すぎるコーヒーはあんまり好みじゃないから、これくらいが丁度良い」
しばらく店の落ち着いた雰囲気を感じながら、ゆっくりとコーヒーを味わい数分後、二人はコーヒーを飲み干したカップをほぼ同時にカウンターの上に置いた。
「美味しかった。ところでマスター、ちょっと尋ねたい事があるんだが」
「はい、何でしょうか?」
「実はこの男を捜してるんだが、見覚えは無いか?」
レンタロウはマフから預かったヤマシタと名乗る男の写真を出すと、マスターはしばらく黙り込んでその顔をじっくり見てから答えてみせた。
「見覚えはありませんね」
「そうか……」
「ただこの方、カタギであるようには見えませんね」
「分かるのか?」
「ええ、この街で長く店をやっているとなんとなくは」
「実はこの男の実態を俺達もあんまり把握してないんだ。何か宛てになりそうな人物とか知らないか?」
レンタロウが尋ねると、マスターは僅かに眉間に皺を寄せ、躊躇うような素振りをしてみせた。
「……そういう方面によく通じている方なら今いらっしゃいますよ」
「ほう、どいつだ?」
「一番端の窓際の席に座っておられる方です」
マスターが言った座席に目を移すと、確かにその場所には白いワイシャツに真紅のネクタイを締め、薄い黒縁のメガネを掛けた男が一人コーヒーを飲んでいた。
「なるほど……マスターありがとう」
「いえ。ただあの方もカタギではございませんのでお気をつけを」
「ああ」
レンタロウがカウンターの席から立ち上がると、それに釣られるようにサヤカも立ち上がった。
「ご馳走様でしたマスター!」
「ありがとうございました」
サヤカが去り際に言って、それに対してマスターは会釈で返した。
二人は真紅のネクタイの男が座る座席に向かう。男もレンタロウとサヤカが向かって来ているのには気づいているが、しかし微動だにせず、何も無いような振る舞いでコーヒーを啜り続けた。
「スマン、ちょっと人探しをしていて訊きたい事があるのだが」
レンタロウが話の口火を切ると、男はチラッと目線だけを上げた。
「訊きたい事があると」
「ああ、この男の事――」
「違う、そうじゃない」
男はニヤリと口元に鋭いカミソリのような笑みを浮かべ、レンタロウの話を遮ってきた。
「他人に物を尋ねる態度としては、あまりにぶっきら棒なのではないかと俺は注意したい訳だよ。そんな事も分からないのか?」
「…………」
男は静かな物言いでレンタロウに敵対心を煽ってきた。
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