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第2話 鉄鋼街のコロッケパン
第2話 鉄鋼街のコロッケパン 07
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「す、すいませんすいません! ほらフブキさんも謝らないとっ!」
レンタロウと真紅のネクタイの男の間に張り詰める緊張の糸を切るようにして、サヤカは頭を下げて入ってくるが、しかしレンタロウは一向に頭を下げるような素振りをせず、それどころか「フン」と鼻で笑ってみせた。
「見え見えの挑発だ。俺がもしアンタの敵ならば、今ので殴り掛かって来たところを背後からズドンってとこだろ。この座席の遠巻き、アンタの縁者なんだろ?」
「えっ?」
レンタロウの言葉でサヤカは頭を上げて周りをしっかり確かめてみると、男性も女性も関わらず、周りに座っていた者達は皆視線をこちらに向け、所々には懐に手を突っ込んで今にも銃を取り出しそうな仕草をしている者も居た。
「クッハッハッ……そうかバレてたか。なら大方、俺がどんな奴かも理解してる訳だ?」
「まあ察するに、マフィアの頭ってところだろ」
「ハン、実に聡明だ。オイ」
「ハッ!」
マフィアの頭の男の呼びかけに反応して、取り巻きの内の二人が立ち上がると、実に機敏な動きで周囲にあった椅子を持ち、計二脚の椅子をレンタロウとサヤカの背後まで運んで来た。
「座りな。話を聞こう」
男に促され、二人は椅子に座った。
「まずはお互い自己紹介からだ。俺はニシキ カズマ。ジャンク・ホロウズのハチマンシティ支部長だ」
「ジャンク・ホロウズ!? ジャンク・ホロウズっていったら、今や世界のマフィアの頂点に立ったのをキッカケに、メカトピア帝国へ宣戦布告をした超巨大ギャング組織じゃないですか!」
「ほう……お嬢さんも俺らについて、なかなか詳しいようだな」
「まあ……そっちが有名過ぎるっていうのもありますけど」
「クッハッハッ! 違げぇねぇ!」
ニシキは機嫌良く笑ってみせ、それに合わせてサヤカもぎこちない笑みを作った。
「それで、そっちは何者なんだ?」
すると瞬時に笑いを引き、ニシキはレンタロウに視線を合わせた。
「俺はフブキ レンタロウだ。まあ、自営業をやってる」
「ほう……俺達に詳しい自営業をね」
ニシキはわざとらしく大袈裟に何かを察したような素振りをしてみせ、続けてレンタロウに質問を投げ掛けてきた。
「殺しは?」
「専門じゃないが、やむを得ない場合は」
「はぁん……ちなみに今まで何人殺した?」
「そんなモンいちいち憶える趣味はねぇ」
「そうか――まぁそうだな。俺もそんな数、全然憶えちゃいないし、憶えられないくらい始末してきたしな」
鼻で笑った後、ニシキは溜息を吐いてから間を作り、話題を切り替えた。
「それで、俺に何を訊きにきたんだ?」
「この男を捜している。見覚えは無いか?」
レンタロウは懐から写真を取り出し、それをニシキに見せた。
するとニシキは写真の男の顔を見ると、眉間に皺を寄せた。
「この男……何処かで……」
しばらく写真の男と睨み合いを続けていたニシキだったが、しかしどうしても思い出せなかったので――
「分からん。 オイッ、集合!」
ニシキが号令を掛けると、周囲に座っていた構成員は我先と立ち上がり、ニシキ達が座っている席の周りを囲うようにして整列した。
その結果、今店内に居るレンタロウとサヤカ以外の客が全員ニシキが率いる構成員だった事にサヤカはギョッと目を丸めた。
「フブキさん、その写真ちょいと」
「ああ」
レンタロウはニシキに写真を渡す。するとニシキはその写真をテーブルの真ん中に置いた。
「お前ら、この男に見覚えは無いか?」
ニシキが言うと、構成員達はテーブルの前に一気に接近し、まず前列の人間が写真の顔を確認すると、直ぐ後列の人間と交代し、全員が写真の男の顔を確認した。
その間、僅か15秒だった。
「スゴイですねー……」
「そうだな……」
そんな光景を見て、サヤカとレンタロウはただただ呆然と感心するばかりだった。
レンタロウと真紅のネクタイの男の間に張り詰める緊張の糸を切るようにして、サヤカは頭を下げて入ってくるが、しかしレンタロウは一向に頭を下げるような素振りをせず、それどころか「フン」と鼻で笑ってみせた。
「見え見えの挑発だ。俺がもしアンタの敵ならば、今ので殴り掛かって来たところを背後からズドンってとこだろ。この座席の遠巻き、アンタの縁者なんだろ?」
「えっ?」
レンタロウの言葉でサヤカは頭を上げて周りをしっかり確かめてみると、男性も女性も関わらず、周りに座っていた者達は皆視線をこちらに向け、所々には懐に手を突っ込んで今にも銃を取り出しそうな仕草をしている者も居た。
「クッハッハッ……そうかバレてたか。なら大方、俺がどんな奴かも理解してる訳だ?」
「まあ察するに、マフィアの頭ってところだろ」
「ハン、実に聡明だ。オイ」
「ハッ!」
マフィアの頭の男の呼びかけに反応して、取り巻きの内の二人が立ち上がると、実に機敏な動きで周囲にあった椅子を持ち、計二脚の椅子をレンタロウとサヤカの背後まで運んで来た。
「座りな。話を聞こう」
男に促され、二人は椅子に座った。
「まずはお互い自己紹介からだ。俺はニシキ カズマ。ジャンク・ホロウズのハチマンシティ支部長だ」
「ジャンク・ホロウズ!? ジャンク・ホロウズっていったら、今や世界のマフィアの頂点に立ったのをキッカケに、メカトピア帝国へ宣戦布告をした超巨大ギャング組織じゃないですか!」
「ほう……お嬢さんも俺らについて、なかなか詳しいようだな」
「まあ……そっちが有名過ぎるっていうのもありますけど」
「クッハッハッ! 違げぇねぇ!」
ニシキは機嫌良く笑ってみせ、それに合わせてサヤカもぎこちない笑みを作った。
「それで、そっちは何者なんだ?」
すると瞬時に笑いを引き、ニシキはレンタロウに視線を合わせた。
「俺はフブキ レンタロウだ。まあ、自営業をやってる」
「ほう……俺達に詳しい自営業をね」
ニシキはわざとらしく大袈裟に何かを察したような素振りをしてみせ、続けてレンタロウに質問を投げ掛けてきた。
「殺しは?」
「専門じゃないが、やむを得ない場合は」
「はぁん……ちなみに今まで何人殺した?」
「そんなモンいちいち憶える趣味はねぇ」
「そうか――まぁそうだな。俺もそんな数、全然憶えちゃいないし、憶えられないくらい始末してきたしな」
鼻で笑った後、ニシキは溜息を吐いてから間を作り、話題を切り替えた。
「それで、俺に何を訊きにきたんだ?」
「この男を捜している。見覚えは無いか?」
レンタロウは懐から写真を取り出し、それをニシキに見せた。
するとニシキは写真の男の顔を見ると、眉間に皺を寄せた。
「この男……何処かで……」
しばらく写真の男と睨み合いを続けていたニシキだったが、しかしどうしても思い出せなかったので――
「分からん。 オイッ、集合!」
ニシキが号令を掛けると、周囲に座っていた構成員は我先と立ち上がり、ニシキ達が座っている席の周りを囲うようにして整列した。
その結果、今店内に居るレンタロウとサヤカ以外の客が全員ニシキが率いる構成員だった事にサヤカはギョッと目を丸めた。
「フブキさん、その写真ちょいと」
「ああ」
レンタロウはニシキに写真を渡す。するとニシキはその写真をテーブルの真ん中に置いた。
「お前ら、この男に見覚えは無いか?」
ニシキが言うと、構成員達はテーブルの前に一気に接近し、まず前列の人間が写真の顔を確認すると、直ぐ後列の人間と交代し、全員が写真の男の顔を確認した。
その間、僅か15秒だった。
「スゴイですねー……」
「そうだな……」
そんな光景を見て、サヤカとレンタロウはただただ呆然と感心するばかりだった。
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