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第2話 鉄鋼街のコロッケパン
第2話 鉄鋼街のコロッケパン 12
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レンタロウとサヤカは写真の男を全力で追いかけるが、その途中、レンタロウに通信が入り、相手はスジカイだった。
追跡中のため、レンタロウは映像を切って音声のみで通信を受信した。
「どうしたスジカイ? こっちは男を見つけて今追いかけてんだ」
「……フブキの……旦那ぁ」
「お前……何でそんな苦しそうな声を出してるんだ?」
「その男は……気をつけた方がいい。ソイツの頭は普通じゃ……ねぇ。異常者だ」
「おい、何があった」
「撃たれた……その男に」
「なにっ!? お前今どこに――」
「旦那……アイツは無情だし、ペテン師だ……ソイツの話を……はあはあ……絶対に聞き入っちゃ……いけません……ぜ……」
その言葉を最後に、通信は突如途切れてしまった。
「スジカイ! スジカイ!! クソッ!」
「どうしましたフブキさん?」
大声を上げるレンタロウを見て、何かしらの異常を察知したサヤカは走りながら、レンタロウの方を向いた。
「スジカイがあの男に撃たれたらしい」
「えっ!?」
「サヤカ、アイツのナノデジのアドレスを教えるから、追跡機能を使ってスジカイのとこに向かってやってくれ。死んでもらっちゃ後味が悪いからな」
「フブキさんはどうするんです?」
「俺はヤツを追いかける」
「……分かりました」
サヤカはナノデジの警戒モードを解き、レンタロウからスジカイのアドレスを受け取ると、10機の衛星から位置情報等を割り出し、特定先のアドレスの持ち主の場所まで案内をしてくれる、ナノデジの機能の一つである追跡機能を使用し、スジカイのアドレスを使ってスジカイの現在位置を割り出した。
「ああ、それともう一つ」
「えっ?」
別れ際、レンタロウはサヤカに向けて言った。
「お前の良い所だよ。こういう時、俺を信頼してつべこべ言わず言う事を聞いてくれるとこだ」
「あ、ああ。……それはフブキさんがワタシの事を信じて頼んでくれるんですから、当たり前です」
「そうか……じゃあ頼んだぞ」
「そちらこそ、頼みましたよ」
丁度十字路で、レンタロウは真っ直ぐに進み、サヤカは右に曲がり、それぞれの行先へ向かって走った――。
*
ただでさえまともな建築物の少ないコッパー街なのだが、その更に奥地には鉄筋コンクリート構造の旧工業団地が存在していた。
この工業団地は、ハチマンシティが今のような鉄工業地帯になる前の黎明期から存在し、当時は各地の出稼ぎ労働者が主にこの団地を利用していた。
だが、時が経つに連れて建物の老朽化が進み、更には新居住区の設立が決定したことから、人々は今のコッパー街に移され、残された建物は解体費用がかさむ事から取り壊しもされずに残されてしまい、人の居ない、崩壊寸前の建物が並ぶこの団地群を、コッパー街の住人は墓場と呼んでいた。
墓場の建築物はどれもこれも形はギリギリ保っているものの、ヒビが入っていたり欠けたりしており、いつ倒壊してもおかしくない状態であるため、住人が住みついているどころか立ち入りすら本来禁止されている。しかしその建物の中から、レンタロウは人に近い異様な気配を感じ取ったので近づいてみると、その正体はすぐに判明した。
「隠してるようだが僅かに死臭がする……なるほど、墓場とはよく言ったもんだ」
眉を顰め、レンタロウはすぐさまその場を離れる。
この場所は人も寄り付かない事から、マフィアや殺し屋の間では遺体を隠す処理場として利用されており、崩壊寸前の建物の中には幾つもの遺体が放り込まれており、そういう意味でもこの場は墓場と呼ばれるに相応しい場所だった。
しかし何故このような場所に写真の男は立ち寄ったのか、レンタロウは疑問に思いながらその後を追いかけていたのだが、旧団地群に四方を覆われる通り道で、遂に男は足を止めた。
「ここまでわざわざ着いて来るとは、よっぽど俺に御執着があるようだな」
男はレンタロウの居る方へ振り返る。その鬱々とした顔、細身の黒ずくめの様相は写真に写っていたものと瓜二つだった。
追跡中のため、レンタロウは映像を切って音声のみで通信を受信した。
「どうしたスジカイ? こっちは男を見つけて今追いかけてんだ」
「……フブキの……旦那ぁ」
「お前……何でそんな苦しそうな声を出してるんだ?」
「その男は……気をつけた方がいい。ソイツの頭は普通じゃ……ねぇ。異常者だ」
「おい、何があった」
「撃たれた……その男に」
「なにっ!? お前今どこに――」
「旦那……アイツは無情だし、ペテン師だ……ソイツの話を……はあはあ……絶対に聞き入っちゃ……いけません……ぜ……」
その言葉を最後に、通信は突如途切れてしまった。
「スジカイ! スジカイ!! クソッ!」
「どうしましたフブキさん?」
大声を上げるレンタロウを見て、何かしらの異常を察知したサヤカは走りながら、レンタロウの方を向いた。
「スジカイがあの男に撃たれたらしい」
「えっ!?」
「サヤカ、アイツのナノデジのアドレスを教えるから、追跡機能を使ってスジカイのとこに向かってやってくれ。死んでもらっちゃ後味が悪いからな」
「フブキさんはどうするんです?」
「俺はヤツを追いかける」
「……分かりました」
サヤカはナノデジの警戒モードを解き、レンタロウからスジカイのアドレスを受け取ると、10機の衛星から位置情報等を割り出し、特定先のアドレスの持ち主の場所まで案内をしてくれる、ナノデジの機能の一つである追跡機能を使用し、スジカイのアドレスを使ってスジカイの現在位置を割り出した。
「ああ、それともう一つ」
「えっ?」
別れ際、レンタロウはサヤカに向けて言った。
「お前の良い所だよ。こういう時、俺を信頼してつべこべ言わず言う事を聞いてくれるとこだ」
「あ、ああ。……それはフブキさんがワタシの事を信じて頼んでくれるんですから、当たり前です」
「そうか……じゃあ頼んだぞ」
「そちらこそ、頼みましたよ」
丁度十字路で、レンタロウは真っ直ぐに進み、サヤカは右に曲がり、それぞれの行先へ向かって走った――。
*
ただでさえまともな建築物の少ないコッパー街なのだが、その更に奥地には鉄筋コンクリート構造の旧工業団地が存在していた。
この工業団地は、ハチマンシティが今のような鉄工業地帯になる前の黎明期から存在し、当時は各地の出稼ぎ労働者が主にこの団地を利用していた。
だが、時が経つに連れて建物の老朽化が進み、更には新居住区の設立が決定したことから、人々は今のコッパー街に移され、残された建物は解体費用がかさむ事から取り壊しもされずに残されてしまい、人の居ない、崩壊寸前の建物が並ぶこの団地群を、コッパー街の住人は墓場と呼んでいた。
墓場の建築物はどれもこれも形はギリギリ保っているものの、ヒビが入っていたり欠けたりしており、いつ倒壊してもおかしくない状態であるため、住人が住みついているどころか立ち入りすら本来禁止されている。しかしその建物の中から、レンタロウは人に近い異様な気配を感じ取ったので近づいてみると、その正体はすぐに判明した。
「隠してるようだが僅かに死臭がする……なるほど、墓場とはよく言ったもんだ」
眉を顰め、レンタロウはすぐさまその場を離れる。
この場所は人も寄り付かない事から、マフィアや殺し屋の間では遺体を隠す処理場として利用されており、崩壊寸前の建物の中には幾つもの遺体が放り込まれており、そういう意味でもこの場は墓場と呼ばれるに相応しい場所だった。
しかし何故このような場所に写真の男は立ち寄ったのか、レンタロウは疑問に思いながらその後を追いかけていたのだが、旧団地群に四方を覆われる通り道で、遂に男は足を止めた。
「ここまでわざわざ着いて来るとは、よっぽど俺に御執着があるようだな」
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