24 / 36
第2話 鉄鋼街のコロッケパン
第2話 鉄鋼街のコロッケパン 17
しおりを挟む
「ま……まあでも、スジカイさんも無事そうですし良かったですね」
「ヘッヘッ、ありがとなお嬢ちゃん。あっ、そうだフブキの旦那」
サヤカがその場を一旦まとめると、スジカイはレンタロウの方に振り返った。
「実は一つ言伝を預かっておりやして」
「言伝? 誰からだ?」
「ジャンク・ホロウズのニシキ カズマからです」
「アイツが? でも何で俺とお前が組んでる事をアイツが知ってるんだ?」
「聞いた話じゃ、部下を使って旦那の動向を監視していたらしいですよ。旦那が撃たれた事を俺が知ったのも、奴から教えてもらったんです」
「そうか……やっぱ世界規模のマフィアの支部長になってくると、抜け目がねぇな。それで、ニシキは何て言ってたんだ?」
「状況は部下を通して全部把握しているから報告は不要だと。それとあの男の事を思い出したとも。どうやらあの男、昔この街の支部長を暗殺した事があるらしいですよ」
「そうか……まあ殺し屋だからな、カラスマは」
「らしいですねぇ。でもあの男、カラスマって言うんですかい? 一度その支部長と間違えて一般人を射殺しちまったらしいですね」
「一般人を?」
「へえ。というのも、その一般人とその時の支部長の顔が似ていたからとも。今の鉄工街付近でその一般人はやられちまったらしいです。昔の支部長も、その一般人の射殺事件を聞きつけて逃げようとしたところをカラスマにやられてますがね」
「鉄工街で……なるほど、そういう事」
カラスマが最期に言い残した後悔とレンタロウが導き出したマフと被害者の関係、そしてスジカイがニシキから聞いてきたその情報を合わせ、全ての事象が繋がり、真相が見えた。
数年前、殺し屋を始めて間も無いカラスマは、巨大マフィアであるジャック・ホロウズの、当時のハチマンシティ支部長暗殺を依頼された。
カラスマは支部長を捜す中、それらしい人物を鉄工街にて発見。射殺を目論みるが、撃った相手は支部長ではなく、マフの息子だった。
結局カラスマはその後、支部長の暗殺にも成功したのだが、最初の失敗に未練を抱き、以来毎日買い物という名目で、その場所を訪れていたのだった。
「……女々しい男だな」
レンタロウは窓の方を向き、誰にも聞こえないくらいの声量でそう呟いた。
「それでフブキの旦那、報酬なんですがね――」
スジカイが言いかけた刹那、レンタロウはすぐさま窓から目を離してスジカイの方を見た。
「言っとくが追加報酬なんて出さんからな」
「いやそういう訳じゃねぇんですが……でもちょいニュアンスは似てるか……」
先手を打たれたスジカイはそこで縮こまって黙ってしまうが、内容が気になったレンタロウは自分から制したのだが、その話を聞いてみる事にした。
「まあいいよ。んで、報酬がどうしたんだ?」
「いや実はですね、俺こういう仕事を今後しようと思ってるんです」
「こういう仕事?」
「なんて言うか、旦那のような人間のサポートをする仕事です。情報とかを集めて教えたりする――」
「ああ、情報屋か」
「そうそう、それです! そういうのになろうかと――」
「狙われるぞ」
「えっ?」
「だから、命を狙われるぞ情報屋は。しかも真っ先にな。情報は時に金よりも命よりも重くなるからな」
「うっ……」
今までその成り行きを見てきただろうレンタロウの言葉は、スジカイにとって重いものだった。
「まあいいや、やるかやらないかは。そんで? それと報酬がどう関係あるんだ?」
「えっ! あっ、あぁ……」
レンタロウが話を戻そうとすると、スジカイは僅かに動揺したが、話題は元の報酬の話に戻った。
「それで報酬についてなんですけどその……事業の頭金というか、主に移動のスクーターを買うためなんですが、もうちょっと頂けやせんかね?」
「却下」
「ええっ!? そんな即決だなんて……」
「契約を交わした後はほぼ変更なんて出来ない。例えそれが口約束だとしてもな。お前が本当にこの世界に足を入れる気なら、今後契約ってのには注意するんだな」
「そんなぁ……」
レンタロウの苦言に、スジカイはショックのあまり項垂れてしまった。
「ヘッヘッ、ありがとなお嬢ちゃん。あっ、そうだフブキの旦那」
サヤカがその場を一旦まとめると、スジカイはレンタロウの方に振り返った。
「実は一つ言伝を預かっておりやして」
「言伝? 誰からだ?」
「ジャンク・ホロウズのニシキ カズマからです」
「アイツが? でも何で俺とお前が組んでる事をアイツが知ってるんだ?」
「聞いた話じゃ、部下を使って旦那の動向を監視していたらしいですよ。旦那が撃たれた事を俺が知ったのも、奴から教えてもらったんです」
「そうか……やっぱ世界規模のマフィアの支部長になってくると、抜け目がねぇな。それで、ニシキは何て言ってたんだ?」
「状況は部下を通して全部把握しているから報告は不要だと。それとあの男の事を思い出したとも。どうやらあの男、昔この街の支部長を暗殺した事があるらしいですよ」
「そうか……まあ殺し屋だからな、カラスマは」
「らしいですねぇ。でもあの男、カラスマって言うんですかい? 一度その支部長と間違えて一般人を射殺しちまったらしいですね」
「一般人を?」
「へえ。というのも、その一般人とその時の支部長の顔が似ていたからとも。今の鉄工街付近でその一般人はやられちまったらしいです。昔の支部長も、その一般人の射殺事件を聞きつけて逃げようとしたところをカラスマにやられてますがね」
「鉄工街で……なるほど、そういう事」
カラスマが最期に言い残した後悔とレンタロウが導き出したマフと被害者の関係、そしてスジカイがニシキから聞いてきたその情報を合わせ、全ての事象が繋がり、真相が見えた。
数年前、殺し屋を始めて間も無いカラスマは、巨大マフィアであるジャック・ホロウズの、当時のハチマンシティ支部長暗殺を依頼された。
カラスマは支部長を捜す中、それらしい人物を鉄工街にて発見。射殺を目論みるが、撃った相手は支部長ではなく、マフの息子だった。
結局カラスマはその後、支部長の暗殺にも成功したのだが、最初の失敗に未練を抱き、以来毎日買い物という名目で、その場所を訪れていたのだった。
「……女々しい男だな」
レンタロウは窓の方を向き、誰にも聞こえないくらいの声量でそう呟いた。
「それでフブキの旦那、報酬なんですがね――」
スジカイが言いかけた刹那、レンタロウはすぐさま窓から目を離してスジカイの方を見た。
「言っとくが追加報酬なんて出さんからな」
「いやそういう訳じゃねぇんですが……でもちょいニュアンスは似てるか……」
先手を打たれたスジカイはそこで縮こまって黙ってしまうが、内容が気になったレンタロウは自分から制したのだが、その話を聞いてみる事にした。
「まあいいよ。んで、報酬がどうしたんだ?」
「いや実はですね、俺こういう仕事を今後しようと思ってるんです」
「こういう仕事?」
「なんて言うか、旦那のような人間のサポートをする仕事です。情報とかを集めて教えたりする――」
「ああ、情報屋か」
「そうそう、それです! そういうのになろうかと――」
「狙われるぞ」
「えっ?」
「だから、命を狙われるぞ情報屋は。しかも真っ先にな。情報は時に金よりも命よりも重くなるからな」
「うっ……」
今までその成り行きを見てきただろうレンタロウの言葉は、スジカイにとって重いものだった。
「まあいいや、やるかやらないかは。そんで? それと報酬がどう関係あるんだ?」
「えっ! あっ、あぁ……」
レンタロウが話を戻そうとすると、スジカイは僅かに動揺したが、話題は元の報酬の話に戻った。
「それで報酬についてなんですけどその……事業の頭金というか、主に移動のスクーターを買うためなんですが、もうちょっと頂けやせんかね?」
「却下」
「ええっ!? そんな即決だなんて……」
「契約を交わした後はほぼ変更なんて出来ない。例えそれが口約束だとしてもな。お前が本当にこの世界に足を入れる気なら、今後契約ってのには注意するんだな」
「そんなぁ……」
レンタロウの苦言に、スジカイはショックのあまり項垂れてしまった。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
屈辱と愛情
守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される
clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。
状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる