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第2話 鉄鋼街のコロッケパン
第2話 鉄鋼街のコロッケパン 18
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「でもフブキさん、スジカイさんにも頑張って捜してもらったんですし、何より撃たれたんですから、報酬が3万だけというのは流石に可哀想だと思いますよ」
「お嬢ちゃん……」
サヤカがスジカイに情けを掛けると、スジカイはそれを聞いて目を潤ませた。
「チッ……じゃあ報酬は3万のままで、それとは別でお前に投資をしてやる。それでどうだ?」
「と……投資ですかい?」
唐突なレンタロウからの提案に、スジカイは首を捻った。
「そうだ。これからお前に俺は100万リョウ投資してやる」
「どえええええええええええええええええええっ!! ひ……ひゃくまんですかい!?」
「お前! そんな大声出したら――!」
レンタロウが危惧やいなや、唐突に病室の扉が勢い良く開いた。
「静かにしなさいって言っとるでしょうがっ!!」
「ヒェッ!! す、すいやせん!!」
「その声もうるさいっ!!」
「も、申し訳ねぇです!」
「今度うるさくしたら退院してもらいますからね!」
口を酸っぱくして看護師は注意勧告をすると、また扉を激しく閉めて出て行った。
「お、おっかねぇ看護師ですね……」
「てか一番うるさいのあの看護師だろ……」
閑話休題、二人は話を戻した。
「それで旦那、投資の条件ってのは?」
「ああ……そうだサヤカ、今から俺が言う条件を契約書にしてくれないか?」
「えっ? まあいいですけど……」
レンタロウに言われ、サヤカはナノデジの書類作成機能を呼び出すと、サヤカの前にエアキーボードと打ち込み文字確認用のエアディスプレイが現れた。
「それじゃあまず、情報屋として活動している事を随時俺に報告する事。月単位で収益と損失額、あと活動記録を記したファイルを俺に送って来い。ナノデジで全部出来るから大丈夫だろ?」
「へ、へい! 了解しやした!」
「二つ目が、俺がもしお前から情報を買う事になった際、必ず適正な値段で提供し、もしその情報が値段に見合わなかった場合は、提示額の半分を差し引く事」
「ええっ! は、半分ですかい!?」
「お前が俺からぼったくろうなんて生意気な事をしなけりゃいい話だよ。ちなみに適正な価格かどうかはサヤカ、お前が判断してくれ」
「ワタシがですか?」
ほとんど他人事だと思って書類データを作成していたサヤカだったが、急に自分の名前が上がって思わず驚いてしまった。
「金を払うのは俺なんだから、俺が決めたら公平性が無いだろ?」
「まあ確かに……分かりました」
「お嬢ちゃん、お手柔らかにな?」
「……ちなみに支払いがあまりにかさむと、その分飯代が無くなる事になるからな」
「スジカイさん、悪いですけどあくまでこ・う・へ・いにやらせていただきます!」
「そんなぁ~……トホホ……」
スジカイはサヤカに媚を売ろうとしたが、あっさりレンタロウに買収されてしまいガックリと肩を落とした。
「そんで最後の三つめが、もし情報屋を辞める事になったら必ず俺に報告し、かつ今回投資した資金100万リョウはしっかり耳を揃えて返す事。もし資金をもって雲隠れをしたりした時は、その時は命の保証は無いと思え」
「命……」
「条件は以上だ。サヤカ、契約書は?」
「出来ました。立会証人はワタシにしてあります」
サヤカは作成した契約書データが映し出されているエアディスプレイをレンタロウに見せ、レンタロウは中身を入念にチェックし、次にスジカイに確認をさせた。
「この条件を呑むのなら投資をする。呑まなければここで報酬を渡してお前とは金輪際会う事は無いだろう。どうする?」
「…………」
「言っておくが、もうちょっと考えたいってのは無しだ。土壇場でチャンスを投げ出すような人間は信用ならんからな」
「いえ、こんな機会断る訳がねぇです。ただ……」
「ただ?」
「ただ……こんな値段を受け取る程、自分自身に価値があるのか自信がねぇんです。俺はずっと人生負け続けてきやした……学校でも、仕事場でもずっと。旦那と会ったあの日だって、仕事をクビにされて、生活費を手に入れるために初めて手を出した盗みで捕まって……何もかも上手くいった事なんて一度も無いんで、一番俺が俺の事を信用出来ねぇんです」
その自信の無さの表れか、スジカイは表情を陰らせ、俯いてしまった。
今までの人生、何度か悩んだ事はあれど、スジカイにとってこれほど本気で物事に慎重に向き合い、頭を抱え込んだのは生まれて初めての事だった。
「お嬢ちゃん……」
サヤカがスジカイに情けを掛けると、スジカイはそれを聞いて目を潤ませた。
「チッ……じゃあ報酬は3万のままで、それとは別でお前に投資をしてやる。それでどうだ?」
「と……投資ですかい?」
唐突なレンタロウからの提案に、スジカイは首を捻った。
「そうだ。これからお前に俺は100万リョウ投資してやる」
「どえええええええええええええええええええっ!! ひ……ひゃくまんですかい!?」
「お前! そんな大声出したら――!」
レンタロウが危惧やいなや、唐突に病室の扉が勢い良く開いた。
「静かにしなさいって言っとるでしょうがっ!!」
「ヒェッ!! す、すいやせん!!」
「その声もうるさいっ!!」
「も、申し訳ねぇです!」
「今度うるさくしたら退院してもらいますからね!」
口を酸っぱくして看護師は注意勧告をすると、また扉を激しく閉めて出て行った。
「お、おっかねぇ看護師ですね……」
「てか一番うるさいのあの看護師だろ……」
閑話休題、二人は話を戻した。
「それで旦那、投資の条件ってのは?」
「ああ……そうだサヤカ、今から俺が言う条件を契約書にしてくれないか?」
「えっ? まあいいですけど……」
レンタロウに言われ、サヤカはナノデジの書類作成機能を呼び出すと、サヤカの前にエアキーボードと打ち込み文字確認用のエアディスプレイが現れた。
「それじゃあまず、情報屋として活動している事を随時俺に報告する事。月単位で収益と損失額、あと活動記録を記したファイルを俺に送って来い。ナノデジで全部出来るから大丈夫だろ?」
「へ、へい! 了解しやした!」
「二つ目が、俺がもしお前から情報を買う事になった際、必ず適正な値段で提供し、もしその情報が値段に見合わなかった場合は、提示額の半分を差し引く事」
「ええっ! は、半分ですかい!?」
「お前が俺からぼったくろうなんて生意気な事をしなけりゃいい話だよ。ちなみに適正な価格かどうかはサヤカ、お前が判断してくれ」
「ワタシがですか?」
ほとんど他人事だと思って書類データを作成していたサヤカだったが、急に自分の名前が上がって思わず驚いてしまった。
「金を払うのは俺なんだから、俺が決めたら公平性が無いだろ?」
「まあ確かに……分かりました」
「お嬢ちゃん、お手柔らかにな?」
「……ちなみに支払いがあまりにかさむと、その分飯代が無くなる事になるからな」
「スジカイさん、悪いですけどあくまでこ・う・へ・いにやらせていただきます!」
「そんなぁ~……トホホ……」
スジカイはサヤカに媚を売ろうとしたが、あっさりレンタロウに買収されてしまいガックリと肩を落とした。
「そんで最後の三つめが、もし情報屋を辞める事になったら必ず俺に報告し、かつ今回投資した資金100万リョウはしっかり耳を揃えて返す事。もし資金をもって雲隠れをしたりした時は、その時は命の保証は無いと思え」
「命……」
「条件は以上だ。サヤカ、契約書は?」
「出来ました。立会証人はワタシにしてあります」
サヤカは作成した契約書データが映し出されているエアディスプレイをレンタロウに見せ、レンタロウは中身を入念にチェックし、次にスジカイに確認をさせた。
「この条件を呑むのなら投資をする。呑まなければここで報酬を渡してお前とは金輪際会う事は無いだろう。どうする?」
「…………」
「言っておくが、もうちょっと考えたいってのは無しだ。土壇場でチャンスを投げ出すような人間は信用ならんからな」
「いえ、こんな機会断る訳がねぇです。ただ……」
「ただ?」
「ただ……こんな値段を受け取る程、自分自身に価値があるのか自信がねぇんです。俺はずっと人生負け続けてきやした……学校でも、仕事場でもずっと。旦那と会ったあの日だって、仕事をクビにされて、生活費を手に入れるために初めて手を出した盗みで捕まって……何もかも上手くいった事なんて一度も無いんで、一番俺が俺の事を信用出来ねぇんです」
その自信の無さの表れか、スジカイは表情を陰らせ、俯いてしまった。
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