仕事人達のグルメ事情〜新世界食放浪記〜

小倉 悠綺(Yuki Ogura)

文字の大きさ
25 / 36
第2話 鉄鋼街のコロッケパン

第2話 鉄鋼街のコロッケパン 18

しおりを挟む
「でもフブキさん、スジカイさんにも頑張って捜してもらったんですし、何より撃たれたんですから、報酬が3万だけというのは流石に可哀想だと思いますよ」
「お嬢ちゃん……」

 サヤカがスジカイに情けを掛けると、スジカイはそれを聞いて目を潤ませた。

「チッ……じゃあ報酬は3万のままで、それとは別でお前に投資をしてやる。それでどうだ?」
「と……投資ですかい?」

 唐突なレンタロウからの提案に、スジカイは首を捻った。

「そうだ。これからお前に俺は100万リョウ投資してやる」
「どえええええええええええええええええええっ!! ひ……ひゃくまんですかい!?」
「お前! そんな大声出したら――!」

 レンタロウが危惧やいなや、唐突に病室の扉が勢い良く開いた。

「静かにしなさいって言っとるでしょうがっ!!」
「ヒェッ!! す、すいやせん!!」
「その声もうるさいっ!!」
「も、申し訳ねぇです!」
「今度うるさくしたら退院してもらいますからね!」

 口を酸っぱくして看護師は注意勧告をすると、また扉を激しく閉めて出て行った。

「お、おっかねぇ看護師ですね……」
「てか一番うるさいのあの看護師だろ……」

 閑話休題、二人は話を戻した。

「それで旦那、投資の条件ってのは?」
「ああ……そうだサヤカ、今から俺が言う条件を契約書にしてくれないか?」
「えっ? まあいいですけど……」

 レンタロウに言われ、サヤカはナノデジの書類作成機能を呼び出すと、サヤカの前にエアキーボードと打ち込み文字確認用のエアディスプレイが現れた。

「それじゃあまず、情報屋として活動している事を随時俺に報告する事。月単位で収益と損失額、あと活動記録を記したファイルを俺に送って来い。ナノデジで全部出来るから大丈夫だろ?」
「へ、へい! 了解しやした!」
「二つ目が、俺がもしお前から情報を買う事になった際、必ず適正な値段で提供し、もしその情報が値段に見合わなかった場合は、提示額の半分を差し引く事」
「ええっ! は、半分ですかい!?」
「お前が俺からぼったくろうなんて生意気な事をしなけりゃいい話だよ。ちなみに適正な価格かどうかはサヤカ、お前が判断してくれ」
「ワタシがですか?」
 ほとんど他人事だと思って書類データを作成していたサヤカだったが、急に自分の名前が上がって思わず驚いてしまった。

「金を払うのは俺なんだから、俺が決めたら公平性が無いだろ?」
「まあ確かに……分かりました」
「お嬢ちゃん、お手柔らかにな?」
「……ちなみに支払いがあまりにかさむと、その分飯代が無くなる事になるからな」
「スジカイさん、悪いですけどあくまでこ・う・へ・いにやらせていただきます!」
「そんなぁ~……トホホ……」

 スジカイはサヤカに媚を売ろうとしたが、あっさりレンタロウに買収されてしまいガックリと肩を落とした。

「そんで最後の三つめが、もし情報屋を辞める事になったら必ず俺に報告し、かつ今回投資した資金100万リョウはしっかり耳を揃えて返す事。もし資金をもって雲隠れをしたりした時は、その時は命の保証は無いと思え」
「命……」
「条件は以上だ。サヤカ、契約書は?」
「出来ました。立会証人はワタシにしてあります」

 サヤカは作成した契約書データが映し出されているエアディスプレイをレンタロウに見せ、レンタロウは中身を入念にチェックし、次にスジカイに確認をさせた。

「この条件を呑むのなら投資をする。呑まなければここで報酬を渡してお前とは金輪際会う事は無いだろう。どうする?」
「…………」
「言っておくが、もうちょっと考えたいってのは無しだ。土壇場でチャンスを投げ出すような人間は信用ならんからな」
「いえ、こんな機会断る訳がねぇです。ただ……」
「ただ?」
「ただ……こんな値段を受け取る程、自分自身に価値があるのか自信がねぇんです。俺はずっと人生負け続けてきやした……学校でも、仕事場でもずっと。旦那と会ったあの日だって、仕事をクビにされて、生活費を手に入れるために初めて手を出した盗みで捕まって……何もかも上手くいった事なんて一度も無いんで、一番俺が俺の事を信用出来ねぇんです」

 その自信の無さの表れか、スジカイは表情を陰らせ、俯いてしまった。
 今までの人生、何度か悩んだ事はあれど、スジカイにとってこれほど本気で物事に慎重に向き合い、頭を抱え込んだのは生まれて初めての事だった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

サイレント・サブマリン ―虚構の海―

来栖とむ
SF
彼女が追った真実は、国家が仕組んだ最大の嘘だった。 科学技術雑誌の記者・前田香里奈は、謎の科学者失踪事件を追っていた。 電磁推進システムの研究者・水嶋総。彼の技術は、完全無音で航行できる革命的な潜水艦を可能にする。 小与島の秘密施設、広島の地下工事、呉の巨大な格納庫—— 断片的な情報を繋ぎ合わせ、前田は確信する。 「日本政府は、秘密裏に新型潜水艦を開発している」 しかし、その真実を暴こうとする前田に、次々と圧力がかかる。 謎の男・安藤。突然現れた協力者・森川。 彼らは敵か、味方か—— そして8月の夜、前田は目撃する。 海に下ろされる巨大な「何か」を。 記者が追った真実は、国家が仕組んだ壮大な虚構だった。 疑念こそが武器となり、嘘が現実を変える—— これは、情報戦の時代に問う、現代SF政治サスペンス。 【全17話完結】

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

愛していました。待っていました。でもさようなら。

彩柚月
ファンタジー
魔の森を挟んだ先の大きい街に出稼ぎに行った夫。待てども待てども帰らない夫を探しに妻は魔の森に脚を踏み入れた。 やっと辿り着いた先で見たあなたは、幸せそうでした。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

処理中です...