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内定

005

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「それでさ、この前の話の事なんだけど……」

いよいよ本題に入る。
実際、こんなに事が早く、うまく転がると思ってなかった僕は少し浮き足立っていた。

「この前……あぁキャッチボールの……」

「屋上でキャッチボールしたら面倒だろ!!」

球が落ちたら拾いに行くのも大変だし、そもそも知らない人に落ちた球が当たったら申し訳ない。
とりあえず言葉のキャッチボールから始めよう。

「この前約束しただろ僕が就職したらその……デートするって」

「あぁ……それね。憶えてたわよ、頭の片隅に四つ折りにして端っこに詰める程度には」

「コンパクトにまとめ過ぎだ!!」

ジップロックよりコンパクトにまとめてやがる。
まぁ……まとめて記憶に置かれていただけでも良しとするか。

「それでどうなんだ?その……してくれるのか、嫌なのか」

「うーん……そうね」

立花は話しながらも、本から目を離さない。
本当に考えているのか、それともただ聞いてるだけなのか。

「別にいいけど、この前言った通りわたしイチャイチャとか嫌いだし、あなたが思ってるような展開にはならないわよ」

「大丈夫、僕も嫌いだからそういうの」

人前で気にせずそういう事が出来るのって、案外才能だと思う。
周りの視線って見えてないけど自然と感じるもので、そういう人たちからすると、それは感じないものなのだろう。
ある意味幸せ者だ。
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