さらうぞコラ!ヤクザの息子、異世界で魔法とギルドを創る

武者小路参丸

文字の大きさ
3 / 42

第3話 異世界でも金は命より重い?そして火打石に革命を

しおりを挟む
「狭いとこですが、どうぞお座り下さい。」

クミコにほどこされてテーブルへと向かうミサオ。木で作られたテーブルとイス。

(・・・畳もなけりゃ、布団でも無い。ガワはあるあるで人だけ日本風。やりにくいわぁ・・・。)

戸惑うミサオ。どこまでテンプレが通用するのかわからぬまま、目の前に出された木で作られたコップから水を飲む。

(ぬるいわぁ。・・・冷蔵庫なんてあるわきゃないし、TVもねぇ。ラジオもねぇ。車もそれほど走ってねぇ。オラこんな村~イヤだ~ってか?)

車など1台も見かけない。いや、そもそも舗装された道路さえあるのかわからない場所で呑気な事を考えるミサオ。

「・・・それで、ミサオさんはどちらから来られたんですか?」

小首をかしげて聞くクミコ。

「え?何と言えば良いのかな・・・。日本(にっぽん)。そこの中に神奈川県てあって、そこの川崎市川崎区ってガラ悪いとこ。」

「ニッポン?この国に似ていますけど、違う場所ですよね?遠いんですか?」

「え?似てんの?ここ何て言うの?」

前のめりに尋ねるミサオ。

「・・・ニホン。この国はニホンと言います。ちなみにここ自体は47ある州の中ののサガーミの州。ヨコースカ伯爵が治めるキヌガーサと言う土地です。」

(・・・これ、ギャグなのか?笑うとこか?)

固まるミサオ。

「どうされました?」

「・・・いや、自分の無知を嘆いてるだけ。で、ここはキヌガーサ・・・だっけ?この村・・・栄えてる町からどれくらい離れてるの?」

「そうですね・・・歩きで1時間くらいですかね?私の足で。チュウオーまでは。」

「・・・俺だともっとかかりそうですかね?それよりチュウオーって・・・ギャグじゃないよね?俺騙したりしてないよね?」

「え?何故あなたを騙すんですか?得も無いのに?」

不思議そうにミサオの顔を覗き込むクミコ。

(近い!それまずいから!勘違いされるやつだぞそれ!)

顔を赤らめそっぽを向くミサオ。

「お~い!肉持って来たぞ!・・・あれ?あたしお邪魔な感じ?出直す?」

いきなりのヤヨイの登場。

手にはニワトリに似た生き物を持って家の入り口に立って居る。

「何で邪魔なの?」

無邪気に微笑むクミコ。

「・・・色気のある場面じゃないよ?気は使わなくていいが・・・それ鳥だよな?」

「そう。ニワートリ。野生なんだけど繁殖力凄くてさ。定期的に狩らないと駄目だし、肉も手に入る。卵も食用。良いこと尽くめなんだよ。今日はウチの分確保してるからこれ、食べな。野犬に追われてちゃ、材料取りも出来なかったろ?」

「ヤヨイごめんね?交換出来る薬草類全部走ってる時落としちゃった。・・・キノコもあったんだけど・・・。」

ジト目でミサオを見るクミコ。

「いや、あれ狙ってたよな野犬?命とどっち大事だよ!」

「もしかしてナットゥモドーキ?あれ臭いけど湯掻いたら臭み取れて、スープの出汁取れるし身も美味いし、売れるもんなそこそこで。」

(あ~っ。そういう事。貴重な収入源。売れなくても食えば美味い。未練残るか・・・。)

「クミコさんすまん。あの時は余裕なかった。あれがそんな貴重なものとは知らんかったから。」

素直に詫びるミサオ。

「・・・知らなかったなら、仕方ないですよね。・・・うん、仕方ない。」

自らに言い聞かせる様に言うクミコ。

「・・・ヤヨイさん?あのキノコ、いかほどで売れるの?」

「大きさや質にもよるけど・・・引き取りは最低1本3000イェンくらいかな?」

「待て待て。イェン?まさか通貨これ使えないよな?」

ミサオが財布から持ってた日本円を出す。

「また見事に種類そろってたもんだ。これが一万円。こっち五千円。千円札3枚に、500円玉1枚。100円玉3枚。50円玉1枚に10円玉2枚。で、5円玉と1円玉・・・18879円。どうだ!」

「これ・・・ミサオの国の通貨なのか?」

「・・・やっぱ違うのか。そんなやっつけ設定まではないかよな?」

「・・・つけせって?」

「クミコさん、流していいよ?・・・となるとだ。仕事探さにゃいかんわな。衣食住何とかしないと飢え死にか・・・。クミコさん、ヤヨイさん。この村に空き家とか無いかな?後仕事とか・・・。そうだ!こういう時のギルドか!定番じゃんか!町に出ればギルドとかあったりするよね?」

興奮して話すミサオ。

「無いよ?そのギル何とかって。聞いたことない。ね?クミコ?」

「・・・それってお店ですか?町ではまだ開店してないと思いますが・・・。」

「マジ?あるあるじゃねぇの?・・・わがらんわ、今だに。まぁおいおいだ。」

とりあえず疑問を押し込めるミサオ。

「とりあえずトリ使ってゾースイ作るか?コミあるだろ?クミコ。」

「コミは一応あるわよ?それぐらいはウチも常備してるし。一人暮らしだと減らないのよ中々。」

「じゃ、2人でぱぱっと作るか。」

段取りをつけてかまどに向かう女子2人。

(カチッ!カチッ!)

「今日は着きが悪いわね?」

「それって火打石?このわらに火ぃつけんの?代わって。俺火ぐらいつけるよ。」

ポケットからライターを取り出し、藁束の先端に火をつけてかまどに放り込むミサオ。

「これでヨシ!・・・何?俺下手売った?」

口を大きく開けたまま固まる女子2人。

「・・・テヘペロ?」

ミサオはやらかしたようだった。

ーーーーーーーーーーーー

あとがき

ここまでお読みいただきありがとうございます!  
3話目では、異世界の暮らしが少しずつ見えてきましたね。  
村の文化や通貨の違いに戸惑いながらも、なんだかんだで現代知識でドヤ顔するミサオ。  
ライターで火をつけて女子たちを固まらせるシーンは、思わず笑ってしまったのではないでしょうか。  
異世界の常識とミサオの常識のギャップが、これからも面白い化学反応を起こしてくれそうです。  
引き続き、彼の奮闘を見守ってください!
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

チート魔力はお金のために使うもの~守銭奴転移を果たした俺にはチートな仲間が集まるらしい~

桜桃-サクランボ-
ファンタジー
金さえあれば人生はどうにでもなる――そう信じている二十八歳の守銭奴、鏡谷知里。 交通事故で意識が朦朧とする中、目を覚ますと見知らぬ異世界で、目の前には見たことがないドラゴン。 そして、なぜか“チート魔力持ち”になっていた。 その莫大な魔力は、もともと自分が持っていた付与魔力に、封印されていた冒険者の魔力が重なってしまった結果らしい。 だが、それが不幸の始まりだった。 世界を恐怖で支配する集団――「世界を束ねる管理者」。 彼らに目をつけられてしまった知里は、巻き込まれたくないのに狙われる羽目になってしまう。 さらに、人を疑うことを知らない純粋すぎる二人と行動を共にすることになり、望んでもいないのに“冒険者”として動くことになってしまった。 金を稼ごうとすれば邪魔が入り、巻き込まれたくないのに事件に引きずられる。 面倒ごとから逃げたい守銭奴と、世界の頂点に立つ管理者。 本来交わらないはずの二つが、過去の冒険者の残した魔力によってぶつかり合う、異世界ファンタジー。 ※小説家になろう・カクヨムでも更新中 ※表紙:あニキさん ※ ※がタイトルにある話に挿絵アリ ※月、水、金、更新予定!

無属性魔法使いの下剋上~現代日本の知識を持つ魔導書と契約したら、俺だけが使える「科学魔法」で学園の英雄に成り上がりました~

黒崎隼人
ファンタジー
「お前は今日から、俺の主(マスター)だ」――魔力を持たない“無能”と蔑まれる落ちこぼれ貴族、ユキナリ。彼が手にした一冊の古びた魔導書。そこに宿っていたのは、異世界日本の知識を持つ生意気な魂、カイだった! 「俺の知識とお前の魔力があれば、最強だって夢じゃない」 主従契約から始まる、二人の秘密の特訓。科学的知識で魔法の常識を覆し、落ちこぼれが天才たちに成り上がる! 無自覚に甘い主従関係と、胸がすくような下剋上劇が今、幕を開ける!

高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません

下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。 横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。 偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。 すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。 兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。 この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。 しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。

ハズレスキル【地図化(マッピング)】で追放された俺、実は未踏破ダンジョンの隠し通路やギミックを全て見通せる世界で唯一の『攻略神』でした

夏見ナイ
ファンタジー
勇者パーティの荷物持ちだったユキナガは、戦闘に役立たない【地図化】スキルを理由に「無能」と罵られ、追放された。 しかし、孤独の中で己のスキルと向き合った彼は、その真価に覚醒する。彼の脳内に広がるのは、モンスター、トラップ、隠し通路に至るまで、ダンジョンの全てを完璧に映し出す三次元マップだった。これは最強の『攻略神』の眼だ――。 彼はその圧倒的な情報力を武器に、同じく不遇なスキルを持つ仲間たちの才能を見出し、不可能と言われたダンジョンを次々と制覇していく。知略と分析で全てを先読みし、完璧な指示で仲間を導く『指揮官』の成り上がり譚。 一方、彼を失った勇者パーティは迷走を始める……。爽快なダンジョン攻略とカタルシス溢れる英雄譚が、今、始まる!

祝・定年退職!? 10歳からの異世界生活

空の雲
ファンタジー
中田 祐一郎(なかたゆういちろう)60歳。長年勤めた会社を退職。 最後の勤めを終え、通い慣れた電車で帰宅途中、突然の衝撃をうける。 ――気付けば、幼い子供の姿で見覚えのない森の中に…… どうすればいいのか困惑する中、冒険者バルトジャンと出会う。 顔はいかついが気のいいバルトジャンは、行き場のない子供――中田祐一郎(ユーチ)の保護を申し出る。 魔法や魔物の存在する、この世界の知識がないユーチは、迷いながらもその言葉に甘えることにした。 こうして始まったユーチの異世界生活は、愛用の腕時計から、なぜか地球の道具が取り出せたり、彼の使う魔法が他人とちょっと違っていたりと、出会った人たちを驚かせつつ、ゆっくり動き出す―― ※2月25日、書籍部分がレンタルになりました。

【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。 木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。 しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。 そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。 【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】

処理中です...