さらうぞコラ!ヤクザの息子、異世界で魔法とギルドを創る

武者小路参丸

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第4話 異世界の「おとぎ話」を現実にする男と、時計を手に入れた女

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「・・・これ、ここらじゃ手に入らない?」

ミサオが恐る恐る確認する。

「それ何?何で炎が出んのよ!火花じゃなくて!」

興奮するヤヨイ。

「・・・俗に言うおとぎ話の魔法ですか?妖術ですか?」

呆然とするクミコ。

「ヤヨイさんもクミコさんも一旦落ち着いて。な?」


(この辺のリアクションはあるあるなんだよな・・・。)

今だに判断がつきかねるミサオ。


「これはライターと言って、火をつける道具。ここに液体見えるでしょ?これ液化ガス。これが燃える気体に変えられて、ここチャッチャッと回すと火花出て引火・・・そうだよね、わからんよね?」

キラキラした目でライターを見つめる2人。

「この液体無くなれば使えなくなるんだよこれ。使い捨て。便利だけど予備も無い。いずれは代替手段必要になるけど、迷惑かけたみたいだから・・・いるかい?これ。」

「は?こんな高級品を?私に?何馬鹿な事を・・・。」

言いながらも目が釘付けのクミコ。

「いいじゃない、もらっときなよ!そんで町に行って売れば・・・あんた大金持ちだよ?下手すれば一生困んないわよ?」 

そそのかすヤヨイ。

「盛り上がってるとこ悪いんだけど、これ、俺の住んでたとこだと100円そこそこだぜ?大金持ちとかそんな・・・。」

「はあ?100イェンそこそこ?どこよ!あたし仕入れに行くから!山も谷も、見たことの無い、ウワサの海も超えて知らない大陸まで行くわよ!」

「・・・あたしも行こうかな?夢あるし・・・。」

「ちょいちょいちょい。その俺の故郷さ・・・。この世界じゃ無いみたいなのよこれ。・・・こっちの人間みたいだろ?異世界人なんだぜ俺。」

無言になる女子2人。ミサオは渾身のギャグを放ったつもりなのだが・・・不発。

「・・・秘密なの?ヤバいのこれ?」

戸惑うヤヨイ。

「やはり重要機密ですよね?人に言わない方が・・・。」

焦るクミコ。

「待て~い!嘘とか誤魔化し無しで、俺この世界の人じゃないのよ。俺適当だからぶっちゃけるけどさ・・・。」

そこから2人には、ミサオが生まれてから転生までの人生、28年間を説明する。その間に2人が作ったゾースイを食しながら。

「・・・ごっそさん!と言うわけなんよ。・・・引くよな?色々な意味で。」


「・・・確かに、その通貨とライター?奇抜な服装見ると、納得出来なくもないような・・・。」

「・・・違う世界。そこから来たと。ミサオさんは神様・・・とかではないの?」

「それはない・・・と思うけど、俺自身理由分からんのよ。

大体この話も、本当の事だったら上手くすれば俺売り飛ばすだけで金になるだろ?リスクあんのよ実際。

ま、2人には一宿一飯の義理作っちまったから正直に言った。どう取られても構わんけど、売らないで貰えると助かる。」

頭を下げるミサオ。

「一宿一飯・・・泊まるの確定なんだ?へぇ~、ふ~ん。」

ジト目でミサオを見るヤヨイ。


「いや、それは言葉のアヤだから!クミコさんごめん!そういう・・・。」

下心が無いのを必死で伝えようとするミサオ。


「泊まらないんですか?行くとこ無いんでしょ?ウチには空いてる部屋あるし。落ち着くまでこの家に居て、ゆっくりこの先の事考えれば良くない?」

無邪気に言うクミコ。

「ヤヨイさん?この発言、俺的にどう受け止めたら?」

判断が付かず、助けを求めるミサオ。

「・・・ズバリ!天然!以上!」

何故かドヤ顔で宣言のヤヨイ。

「・・・うれしいのやら悲しいやら、俺のメンタルぐちゃぐちゃだよ・・・。」

「どうかしました?」

「いや・・・それじゃお言葉に甘えて、少しの間寝泊まりさせて下さい。正直助かります。力仕事やその他必要な事あったら声かけて下さい。」

こうしてミサオはクミコの家に仮に住む事となる。

「いいなぁ。クミコは晩婚だと思ったらいきなり後ろからぶち抜かれたわ。クソ、村中に言いふらしてやる!」

「ヤヨイさんそれマジ無理!俺的に色々困る!代わりにこれ・・・口止め料。」

ミサオは左手首に付けていた物を外してヤヨイに見せる。

「何これ?」

「へっへっへ。社長!これ腕時計と言いやしてね?時間を正確に教えてくれて、その上方角や気圧・・・天気の変化のキッカケつかんだりとかに使える道具。しかもソーラー充電。これあげるから、せめて親戚ぐらいの誤魔化し、してもらえやせんかね?」

「あんた、その顔悪そうな成分相当入ってるよ?・・・でもこの道具、使えそうだね。本当に貰っていいの?」

「・・・姐さん、世の中ギブアンドテイク。約束守って下さいよ?」

「ゲブアンダティーカ?わからんけどミサオは親戚。・・・結婚出来るくらいの親戚でいいんだよね?ヨシ乗った!」

「・・・それ卑怯だわ。姐さん、アンタそれやり口、卑怯過ぎるよ!・・・はいこれ。そのベルト手首に・・・そうそう。でこのボタンをね・・・。」

この世界初めてのライターを受け取ったクミコに続いてのソーラー腕時計は、この日ヤヨイの宝物となる。先々世界の宝物扱いとなるその品の事も、ミサオはまだ考えようもなかった。

ーーーーーーーーーーーー

あとがき

4話目までお付き合いいただきありがとうございます!  
今回、ミサオの「異世界人」であることがとうとう暴露され、クミコとヤヨイに受け入れられる(?)回になりました。  
ライターに続いて、ソーラー腕時計まで異世界に持ち込み、ヤヨイの宝物になるくだりは、彼の悪戯っぽい人柄も見えてクスっとしてしまいます。  
天然なクミコと、ちゃっかり者のヤヨイとの掛け合いもだんだん板についてきて、ますますこの先が楽しみです。  
ミサオの現代知識が、これからどんなふうに世界を変えていくのか、ぜひお楽しみに!
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