家族で国家機密──うちの犬がしゃべった、その先で

武者小路参丸

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第11話 迷子のあやねとジョロの警察官初任務──泣かないで、もう大丈夫!

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「やっぱり車でドライブ、いいよね!」

「いや、これも任務の一環だぞ?地域の見回り。巡回ってやつだからな?」

「固いこと言わないの!電話入ればすぐ出動なんだし、それまで遊んでる訳にもいかないしってことでの巡回なんでしょ?それをジョロが喜んでるだけの話じゃない?一石二鳥!ね、ジョロ!」

「甘い!ジョロに甘い!カルメ焼き並に甘い!・・・でも良いか。ただ、窓開けて顔出すのは危ないぞ?」

「はぁぃ!帽子とサングラスで、わからないかな?」

「平気平気!バレても可愛いから大丈夫!」

「マミ?それを人は無責任と言うんだぞ?」

ワイワイ言いながらの、巡回の名を借りたドライブ。

今日は横浜の山下公園から元町・本牧周辺をゆっくりと走行している。

「・・・話変わるんだけどね?前に斎藤司令から聞いた時、ジョロ見たいな存在、ワンコだけみたいなニュアンスで話してたわよね?あーくんとかヒメちゃんみたいに他の動物系いると思ってなかったから、びっくりしたわよ。」

クミコが言う。

「そうだったっけ?・・・そうだったな!あの言い方だと、そう受け取るよな?俺、場の雰囲気に流されて受け入れてたわ。結局、他のワンコ達も居るけど、他の動物達も居るって事だよな?・・・案外あの時、ウチの家族安心させる為にあえてあの言い方かもよ?」

「やりそうよね、斎藤さん。基本悪い人では無いけど、戦略的に考えてる所ありそうだもんね!」

「悪気は無いと思うよ司令。僕と出会ってマミとパピと暮らすまでの間も優しかったし、永井のお家に来る前の日、本当はお別れ悲しいって泣いてたもん。・・・隠れてだけど。」

斎藤司令の以外な一面を暴露するコジマル。

「・・・なんか意外。あの人いつも飄々(ひょうひょう)としてるもんね?」

「いや、でも好きじゃなければここまで頑張れないんじゃないかい実際。幾らお役目であってもさ?しかも毎回送り出す立場って辛いぜ?俺は出来ないよ。離れられなくなるよ。」

ミサオとクミコ、斎藤に改めての尊敬の念を抱く。

「あ!パピ!停めて!」

「どした!unknownか?」

コジマルの言葉に身構えるミサオ。

「ほら!泣いてる!女の子!」

コジマルの指差す先に、小さな泣いてる女の子。迷子だろうか?

「ほっとく訳にもいかんわな。おし。停めるぞ?」

元町方面から本牧ふ頭へ向かう途中。本牧南警察手前辺りの商店街の左側の歩道で1人で泣いてる女の子。すぐに停車させ、永井家の3人が降車する。

「・・・ママやパパとはぐれたの?お名前は?」

しゃがんで少女に優しく問いかけるコジマル。

少女の顔がこわばる。

「怖くないよ?僕ね、おまわりさん!ほら、これが警察手帳!わかるかな?後ろの2人もおまわりさん!僕のマミとパピなんだ!だから怖くないよ?」

「お兄ちゃん、おまわりさん?ほんと?」

コジマルの言葉に、少女の表情も少し和らぐ。

「お嬢さん、お名前は?」

「お家わかるかな?」

ミサオとクミコも優しく少女に話しかける。

「あの、ママと、お買い物来て、私ワンコ歩いてるの見て、後ついてったらマミいなくて、お家わからなくて・・・ウェ~ン!」

少女は説明の途中で泣き出してしまう。

少女を抱き上げるコジマル。

「そっか!ママいないと怖いよね?大丈夫!ジョロが探して上げる!」

「ヒック・・・ヒック。ジョロ?」

少女が泣き顔のまま聞き直す。

「んとね、本当はコジマルって名前なの。でもね、パピもマミもジョロって呼ぶの!だからジョロって読んで!ちなみに君は?」

「・・・あやね。ジョロって珍しいお名前ね?」

「そうかな?僕大好きだけど。あやねちゃんも良いお名前だね!」

「うん!・・・お家、帰れるかな?」

「平気だよ!ちゃんとママに会わせてあげるからね!」

2人の会話に、永井家の親2人も感慨深い表情となる。

「優しい子に育って嬉しいわ。ね、パピ。」

「出来た息子だな、まったく。俺ちょっと、所轄に届け出てないか確認するわ。マミ、ジョロと一緒にその辺聞き込みしてくれる?あやねちゃん連れて。んで、少したったらまたここで合流。」

「了解。ジョロ!あやねちゃん!ママ近くに居ないか、探しに行こ?じゃ、パピよろしく!」

「あいよ!気を付けてな!・・・もしもし?こちら、警察庁の警備局特異生命対処班所属、警部補の永井と申します。本日現在、迷子の事案と遭遇いたしました、そちらの方に、捜索願い・・・。」

「あのすみません。こちらに、お買い物でこの子と、子のお母さんの姿とか見たり覚えてたりしませんか?・・・そう、迷子なんですよ。・・・そうですか。ご協力、ありがとうございます。ジョロ、そっちは?」

「・・・こっちも見た人居ない。マミもダメ?」

「うん。ここじゃないのかな?ワンコ見て後歩いてたって言ってたもんね。あやねちゃん、マミとお買い物、いつも行くとこのお名前わかる?」

「・・・今日はね、お肉屋さん。いつもの所。」

「そっか、お肉屋さんか。・・・情報薄いけど、お肉屋さんで検索掛けるかな?ジョロ!あやねちゃん!1回戻ろ!」

クミコの言葉でミサオの居る場所まで3人で戻る。

「お!やっぱ所轄で当たり!今、ママ来るよ!」

ミサオの電話で母親も分かり、ここまで所轄のパトカーで向かってる事を告げる。

「・・・ママ、怒ってる?」

コジマルに掴まるその小さな手に力がこもる。

「あやねちゃん。・・・ちゃんとごめんなさい、言おうね?ママ、泣いてるよ?あやねちゃんが居なくなって、探して探して、別のおまわりさんにお願いしに行ってるぐらい心配してたんだよ?」

コジマルが優しく諭す。

「・・・。」

言葉はないが、小さく首を縦に振る。

「あやねちゃんえらい!それならママも、わかってくれるよ。僕も一緒に謝るからね?」

「ウチの息子は、どこまで優しく育ったんだマミ?」

コジマルの言動や行動に、涙を抑えるので精一杯のミサオ。見られない様に顔を横にそらす。

「なんかあんまり大人びると、寂しいわね。今日はイイコイイコ、2倍?いや3倍ね!」

「いや、俺もやるわそれ!」

話してる間に、すぐ傍の警察署からサイレンの音。

すぐにパトカーがミサオの車の後ろに停車する。

「ご苦労様です!こちらが親御さんになります。後はこちらで処理いたします。お疲れ様てございました。」

パトカーの運転席から降車し、ミサオ達永井家に敬礼する制服警察官。もう1人の警察官が母親をコジマルの傍へと誘導している。

ミサオとクミコも敬礼を返し、コジマルの元へ。

「・・・あやね!ママ、心配したん・・だからね?」

「ママッ!・・・ゴメンね?あやね、ワンコたん見て、かわいいのずっと歩いて見てたら、ママいなくて・・・ウエ~ン!ママ~!」

親子が抱きしめ合う。

「・・・やっぱり家族は一緒じゃなきゃね?・・・ママさん、あやねちゃん、あんまり怒らないでね?」

コジマルの言葉にうなずく母親。

「ジョロお兄ちゃん・・・ありがと。ありがとね!」

「気にしないで!ママと会えてよかったね!さ、マミ、パピ!僕達も行こう!ドライブの続き!」

コジマルの言葉に、所轄の警察官2人が反応し、振り向く。

「ば、ジョロ!冗談キツいな?は、はは。」

「さ、行くわよ!みんな乗って乗って!それじゃ私達はこれで。後お願いしますね?はは、ははは!」

慌ててその場を離れる永井家。

「・・・頼むわジョロ、ドライブはあの場でまずいわな?」

「そう?」

「嘘ではないんだけどね?・・・空気読むのも覚えてみようね?」

コジマルに理解してもらうのに苦慮する永井家夫婦。

「ま、でも今日は、警察としてのある意味初公務じゃね?」

「あ!そうよね?偽装と言えども警部補だもんね。これからはこういう事も、あっておかしくないわよね?ジョロも立派にお巡りさんしてたもんね?」

親2人は鼻高々である。

「迷子の迷子の子猫ってか?困ってしまってとかはなかったけどな。」

「泣いてる子がいたらほっとけないもんね?マミとパピもそうでしょ?」

笑顔で言うコジマル。

「ウチの子が出来過ぎで困る件。俺も恥ずかしくない様にしないとな。」

「あたしも気をつけないとね。親として。」

「それじゃ、そろそろお家帰って、カリカリ食べよ?」

「カリカリ言われても、俺等は食えんぞ?」

「せめてご飯って言おうジョロ?ね?」

車は静かに横須賀方向へと進路を変えた。

ーーーーーーーーーーーー

あとがき:

今回のお話は、「ジョロが“警部補”として最初に関わる事件」という意味もあり、少しだけリアルな警察もの要素を入れてみました。それでもやっぱり、どこまでも“家族”が軸になってしまうのが、永井家らしいところですね。

ジョロの優しさ、ミサオとクミコのさりげないフォロー、小さな女の子・あやねの涙と再会――
こういう小さな奇跡が、少しでも読んでくださった方の心に届けば幸いです。

次回も引き続き、ジョロの“日常”と“ちょっと特別な出来事”をお届けします。
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