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第33章
異世界の女神サマは◯◯◯です(3)
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「女神様方! お願いですから、姉妹喧嘩はやめてください!」
「う――ん。魔王ちゃんのたってのお願いなら、きいてあげてもいいわよん」
といって、ミスティアナは妹を殴るのをやめた。
あいかわらずチョロい。
「オレを元の世界に帰してください!」
オレは正座して、深々と頭を下げる。
相手は女神だ。
ポンコツだろうが、ガサツだろうが、上位存在なんだ。こういうときは、ちゃんとしたお作法で、お願いしないといけないんだよ。
「だめに決まっているだろ!」
「できないに決まっているじゃない!」
姉妹は同時に答える。
微妙に言葉が違うので聞き取りにくい。
「どうしてですか! クエストを完結させていないからですか?」
「お――っ、さすが、姉サマのお気に入りは、理解力抜群じゃねーか。ちゃんとわかってるじゃないか」
アナスティミアは目を眇めながら、二カッと嗤う。
「アナスティミア様に選ばれた勇者として、魔王を退治したら、元の世界に戻れるということですか? 魔王はどこにいるのですか?」
時間制限を気にするオレは、畳み掛けるように質問する。少しでも多くの情報を女神から聞き出さなければならないからね。
「あ――っ。ソレなんだけど――な――」
オレの言葉に困ったような表情を浮かべながら、アナスティミアは髪をガシガシと掻きむしる。
「なんだか……手違いがあったみたいでな――」
「てちがい?」
なんとも……嫌な響きの言葉だよね。
「そっ。アタイはここ五十年のうちに、魔王が誕生するだろうから、異世界から勇者を喚べるように準備をするように……って、聖女に伝えたんだよな――」
「へ?」
オレの目が点になる。
アナスティミアは不思議そうに首を傾げ、ミスティアナはプリプリ怒りだす。
「お、オレ、いや、わたくしは、五年前に魔王が誕生したと……説明を受けましたが?」
「…………」
嫌な沈黙が、真っ白な空間に漂う。
「だよな? アタイは間違いなく、聖女に『五十年のうちに、魔王が誕生する』って伝えたんだ。で、聖女もちゃんと、大神官長に『五十年のうちに、魔王が誕生する』って宣言したのを見届けたぞ」
「…………」
「なのに……なぜか、魔王が五年前に誕生しているとかって、民たちが騒ぎだして、勇者召喚をやっちゃったんだよ」
(なんてこった! あいつら、どんな伝言ゲームやってるんだか……)
「……で、わたくしが召喚されてしまったと?」
「う――ん。どうしてだろうね?」
(おいおいおいおいおいおいおい!)
どうしてだろうね、じゃないだろう! なんだよ、その無責任な発言は!
「召喚に失敗し続ける期間が大体、ざっくり五十年と見積もったんだけど、なんでかわからないけどさぁ、姉サマの魔王ちゃんが、あんな不完全な魔法陣で、アタイが管轄する世界に、一発で召喚されてしまったわけよ? なんでだと思う?」
「……いや、そんな……わたくしに質問されましても」
(オレがわかるわけがないだろ――が!)
「う――ん。魔王ちゃんのたってのお願いなら、きいてあげてもいいわよん」
といって、ミスティアナは妹を殴るのをやめた。
あいかわらずチョロい。
「オレを元の世界に帰してください!」
オレは正座して、深々と頭を下げる。
相手は女神だ。
ポンコツだろうが、ガサツだろうが、上位存在なんだ。こういうときは、ちゃんとしたお作法で、お願いしないといけないんだよ。
「だめに決まっているだろ!」
「できないに決まっているじゃない!」
姉妹は同時に答える。
微妙に言葉が違うので聞き取りにくい。
「どうしてですか! クエストを完結させていないからですか?」
「お――っ、さすが、姉サマのお気に入りは、理解力抜群じゃねーか。ちゃんとわかってるじゃないか」
アナスティミアは目を眇めながら、二カッと嗤う。
「アナスティミア様に選ばれた勇者として、魔王を退治したら、元の世界に戻れるということですか? 魔王はどこにいるのですか?」
時間制限を気にするオレは、畳み掛けるように質問する。少しでも多くの情報を女神から聞き出さなければならないからね。
「あ――っ。ソレなんだけど――な――」
オレの言葉に困ったような表情を浮かべながら、アナスティミアは髪をガシガシと掻きむしる。
「なんだか……手違いがあったみたいでな――」
「てちがい?」
なんとも……嫌な響きの言葉だよね。
「そっ。アタイはここ五十年のうちに、魔王が誕生するだろうから、異世界から勇者を喚べるように準備をするように……って、聖女に伝えたんだよな――」
「へ?」
オレの目が点になる。
アナスティミアは不思議そうに首を傾げ、ミスティアナはプリプリ怒りだす。
「お、オレ、いや、わたくしは、五年前に魔王が誕生したと……説明を受けましたが?」
「…………」
嫌な沈黙が、真っ白な空間に漂う。
「だよな? アタイは間違いなく、聖女に『五十年のうちに、魔王が誕生する』って伝えたんだ。で、聖女もちゃんと、大神官長に『五十年のうちに、魔王が誕生する』って宣言したのを見届けたぞ」
「…………」
「なのに……なぜか、魔王が五年前に誕生しているとかって、民たちが騒ぎだして、勇者召喚をやっちゃったんだよ」
(なんてこった! あいつら、どんな伝言ゲームやってるんだか……)
「……で、わたくしが召喚されてしまったと?」
「う――ん。どうしてだろうね?」
(おいおいおいおいおいおいおい!)
どうしてだろうね、じゃないだろう! なんだよ、その無責任な発言は!
「召喚に失敗し続ける期間が大体、ざっくり五十年と見積もったんだけど、なんでかわからないけどさぁ、姉サマの魔王ちゃんが、あんな不完全な魔法陣で、アタイが管轄する世界に、一発で召喚されてしまったわけよ? なんでだと思う?」
「……いや、そんな……わたくしに質問されましても」
(オレがわかるわけがないだろ――が!)
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