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第33章
異世界の女神サマは◯◯◯です(4)
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「ひどいよ――。アナスティミアちゃん、アタシの魔王ちゃんを返してよっ! アナスティミアちゃんには必要ないでしょ! 返品して! 返品!」
(オレは不良品かよ……)
「魔王がまだ誕生していないのなら、オレを元の世界に帰してください! 五十年も待てません!」
必死に詰め寄るオレたちに、アナスティミアは両手を大仰に振ってダメダメと言う。
「無理だよ。神の定めたルールだからね。まぁ……帰すことができたとしても、こんな、オモシロい子を帰したくないけどさぁ」
「そ、そんな……」
目の前が真っ暗になる。
女神に『オモシロい子』認定なんかされたくない。絶対、この先、苦労するに決まっているよ……。
「魔王ちゃんなら、五十年なんて、あっという間だよ。細かいことは気にするな!」
「気にします! 神様の尺度と、ヒトの尺度は違います!」
「え――っ。そんな、ワガママ言うなよ。五十年くらい、アタイの相手をしてくれたって、バチは当たらないよ」
(ワガママ言ってるのは、ソッチだろうが――!)
思いっきり抗議したいが、立場上、それははばかれる。リーマン勇者に学んだ処世術だが、反論できないのがとても悔しいよ。
今度は、アナスティミアに抱き寄せられ、なんと、頬に「チュッ」とキスをされる。
「ほ――ら。これで、魔王ちゃんは、アタイのモノになった」
ふわり、と、なんとも言えないよい香りが漂い、オレの周囲にまとわりつく。
呪いとほぼ同レベルの女神の色香に、オレは意識が飛びかけるが、後頭部に走った衝撃がオレを正気に戻す。
「ちょ、ちょ、ちょっっとおおおっ! アタシでも、やりたくてもできなかったことを、アナスティミアちゃんたら! なに、初対面でシレっとやらかしてくれてちゃってるの!」
ミスティアナの頭突きがオレの後頭部にヒットする。
(なんで頭突きなんだ!)
あまりの痛さと衝撃に言葉もでない。
オレは目に涙を浮かべながら、鋭い目線でミスティアナを睨みつける。
かなり動揺しているのか、ミスティアナの挙動と発言がさらにおかしいものとなっている。最後の方の言葉、なんかおかしかったもんな……。
「五十年もこっちの世界にオレがいたら、元の世界はどうなるんですか! 三十六番目の勇者も同じように五十年、放置ですか!」
アナスティミアの捕縛から逃れようとするのだが、どういうわけかがっちりとホールドされてしまって、びくともしない。
というか、オレがジタバタ暴れれば暴れるほど、アナスティミアとの密着が激しくなる。
「それは大丈夫だ! 心配いらない」
オレの頬にいくつものキスを落としながら、アナスティミアは豪快に嗤う。
「姉サマの世界の魔素は、魔王ちゃんが運命の番と愉しいコトをやってるときに、魔王ちゃんがたっぷり消費してるから、安心しな」
「…………どういうことでしょうか?」
「ん? そのまんまのコトだけど?」
(オレは不良品かよ……)
「魔王がまだ誕生していないのなら、オレを元の世界に帰してください! 五十年も待てません!」
必死に詰め寄るオレたちに、アナスティミアは両手を大仰に振ってダメダメと言う。
「無理だよ。神の定めたルールだからね。まぁ……帰すことができたとしても、こんな、オモシロい子を帰したくないけどさぁ」
「そ、そんな……」
目の前が真っ暗になる。
女神に『オモシロい子』認定なんかされたくない。絶対、この先、苦労するに決まっているよ……。
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「気にします! 神様の尺度と、ヒトの尺度は違います!」
「え――っ。そんな、ワガママ言うなよ。五十年くらい、アタイの相手をしてくれたって、バチは当たらないよ」
(ワガママ言ってるのは、ソッチだろうが――!)
思いっきり抗議したいが、立場上、それははばかれる。リーマン勇者に学んだ処世術だが、反論できないのがとても悔しいよ。
今度は、アナスティミアに抱き寄せられ、なんと、頬に「チュッ」とキスをされる。
「ほ――ら。これで、魔王ちゃんは、アタイのモノになった」
ふわり、と、なんとも言えないよい香りが漂い、オレの周囲にまとわりつく。
呪いとほぼ同レベルの女神の色香に、オレは意識が飛びかけるが、後頭部に走った衝撃がオレを正気に戻す。
「ちょ、ちょ、ちょっっとおおおっ! アタシでも、やりたくてもできなかったことを、アナスティミアちゃんたら! なに、初対面でシレっとやらかしてくれてちゃってるの!」
ミスティアナの頭突きがオレの後頭部にヒットする。
(なんで頭突きなんだ!)
あまりの痛さと衝撃に言葉もでない。
オレは目に涙を浮かべながら、鋭い目線でミスティアナを睨みつける。
かなり動揺しているのか、ミスティアナの挙動と発言がさらにおかしいものとなっている。最後の方の言葉、なんかおかしかったもんな……。
「五十年もこっちの世界にオレがいたら、元の世界はどうなるんですか! 三十六番目の勇者も同じように五十年、放置ですか!」
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というか、オレがジタバタ暴れれば暴れるほど、アナスティミアとの密着が激しくなる。
「それは大丈夫だ! 心配いらない」
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「ん? そのまんまのコトだけど?」
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