傲慢な超幸運王子はある意味最強

東間

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暴虐王子

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虐待とかなら救いはあっただろう。
僕は両親の死骸さえ食った人間だった。

そんな僕に神様は祝福をくれた。

†††

「アルファス!こんにちは!」

「ずが高いぞ、げみん!!」

「げ、下民!?」

スノーヴァは雷に打たれたかの様な衝撃を受けた。
罵倒をされた事がないからだ。

「この超絶天使で超幸運な王国で偉い僕が、下民!?頭が残念なのか!?」

((お前がな))

ミィファルトとステラは笑顔を保ちながらツッコム。
ミィファルトとステラは今スノーヴァを先頭にアルファス王子の部屋へ来ていた。
そして、部屋に入室した途端育ちが良い二人は驚愕する。
花瓶が割れ高そうな赤いカーペットは水浸しになり、これまた高そうな赤いカーテンは引き裂かれていた。
メイド達の何人かは気絶している。

「ぼくはえらいんだ!お前よりえらいんだ!」

「いやいや、僕は第一王子だぞ??常識的に考えて第五王子より偉いだろ?」

内密なはずだった魔力無しを大声で歌い、授業に参加せず、剣術も無視している王子に『常識』を問える資格があるのか不思議だが、今回はスノーヴァの方が正しかった。

「第一おうじ?…おまえは敵だ!!」

「え、やだ怖い。子供って何考えてるか分からない。僕を敵にまわすとか自殺宣言じゃん!」

スノーヴァがそう言った瞬間だった。
カーテンレールがアルファス王子の頭に落ちる。

「ふぎゃ!」

「王子!」

「大変!医者を呼んで!」

「アルファス王子!」

「私が治癒魔法で対応します!」

侍女達が慌てふためく。
ステラもアルファスにかけより治癒魔法をかける。

「お、おにいさま…?」

魔力がない、魔法が使えないはずのスノーヴァ。
だがあまりのタイミングに皆がスノーヴァを見る。
ミィファルトは唾を飲み込んだ。

「はぁ…やれやれ。ステラ、このぐらいならたん瘤程度だろう?治癒魔法なんて必要ないさ。

ーーーおい、お前らも慌ててないで氷と布を持ってこい!給料泥棒で全員クビにするぞ!」

スノーヴァの『クビ』発言に侍女達は急いで行動する。
その間スノーヴァはステラからアルファスを取り上げるとアルファスをベッドへ運んだ。

「さて」

ていっ、とスノーヴァはアルファスの腹を殴った。
ぐへぇ!と言う音と共にアルファスは目を覚ました。

「??」

「ここ30分前後の記憶はあるか?頭痛は?痺れは?」

「!僕をばかにするのか?!おまえ、ふけいでしけいだ!」

「やれやれ、僕にまたそんな事を言うなんて君こそ不敬で死刑になってしまうぞ?」

スノーヴァがそう言った瞬間、氷を持ってきた侍女が転び、氷がアルファスの上に落ちる。

「うわッ!!」

細かく割れていた氷だったので被害は少なかった。

「ほら、反省したか?」

「お兄様。あの、魔法…使えるのですか?」

「は?リンゴまで馬鹿になったのか?伝染病か?」

ミィファルトは馬鹿にされていると受け取っているが、スノーヴァは本気で驚いていた。
だがここ最近交流が出来たばかりのミィファルトはそれが分からない。

「もう良いです…!」

ミィファルトは顔を真っ赤にするとアルファスの部屋を退出する。

「リンゴはよく分からんな??」

「まだまだミィファルト王子も子供ですから…」

「おい!僕をむしするな!」

スノーヴァが溜め息をつきステラが苦笑すると、アルファスは再び怒り出す。

「そうだった!そろそろ晩食の時間だ!アルファス、一緒に行くか?」

「は、はぁ!?何で敵といっしょに行かないといけないんだよ!!」

「頭打っただろ?何かあったら大変だ!付き添ってやる!大丈夫さ、僕がいれば死ぬ事はない!」

侍女が『念の為医者の検診を受けてください』と言うがスノーヴァはアルファスを連れて部屋から出ようとしてしまう。

超幸運なスノーヴァが側についているのがアルファスにとって一番の良い結果になるのだが、侍女達は知らない。

「この城はいつから僕に逆らう事が許されたんだ???」

スノーヴァは普通にそう思い言った。だが侍女達にはそれが一番恐怖を呼ぶ。
アルファスとはまた違う恐怖だった。

「も、申し訳ございません」

「まったくだ!遅れてしまったら皆に怒られてしまう!行こう、アルファス!」

笑いながらアルファスを引くスノーヴァ。
アルファスは顔を真っ赤にしながら悪態をつき、スノーヴァに連れられた。

「あれが傲慢王子…」

「流石暴虐王子の兄弟ね」

「恐ろしい」

「いずれ廃嫡されるのに偉そうに」

「魔力無しが生意気よ」

侍女達はスノーヴァが出ていった後に思い思いに愚痴を言う。

彼女達は知らない。

【精霊の愛し子】を卑下する恐怖を。

「何か寒くない?」

「早く部屋から出ましょう」

「それにしても、本当に血の様で気持ち悪いわね第二王子」

「王家の呪いよ、きっと」

「あれ?ねぇ、部屋の扉が開かない」

「は?鍵をかけたの?」

「これ、内鍵の扉よ??ねぇ、どうして?」

扉をドンドン!と叩いて侍女達は部屋から出ようとする。

「立て付けが悪いのかしら?このままじゃ凍えてしまうわ!」

「さ、寒い!!」

部屋がマイナスに入る温度になっていく。

「《こいつら殺す?》」

「《僕達の愛し子を悪く言う奴嫌い》」

「《馬鹿ね。女なら顔を引き裂けば良いわよ!》」

妖精達がクスクス笑う。

「《どうする?》」

「《凍りづけ?》」

「《あ、良い事思い付いた!魔力無ししよう!さっき嫌がってたし!》」

「《えー愛し子と一緒なのー?》」

「《なら魔法を受け付けない様にしよう!》」

「《良いね!賛成!》」

「《てんさーい!》」

笑いながら妖精達は侍女達に粉をまく。

侍女達は今後、魔法を受け入れないだろう。
魔法がかけられたら、耐え難い痛みに変わる。


スノーヴァが王城で生き延びられたのは、精霊のお陰でもあった。













 
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