傲慢な超幸運王子はある意味最強

第一側妃

晩食の間には第一側妃、第三側妃、第四側妃が花舞うお話と言う名の罵詈雑言をしていた。

第一側妃ミフィール・ルーリ・ロロリアは三大公爵であるロロリア公爵の長女であった。
紅の髪にルビーの様な瞳を持つ美女、そして豊満な体つきを見せびらかす様な真っ赤なドレスを好んでいる。

「ミィファルトはシルバー博士が勉学を教えておりますのよ？陛下もミィファルトの優秀さに喜ばれておりましたわ！」

第三側妃クロドナ・ルーリ・ベネチアーノはベネチアーノ王国の五男であった。
ベネチアーノ王国で多い茶髪に緑色の瞳を持っており、男だが可愛い顔つきをしている。
ロズバルド国王に一目惚れし強制的に嫁いだ強者だ。
白いレース付きのドレスの様な服装を好んでいる。
低身長だから許される服装だ。

「バリチェロは隣国の王女とよくお茶会をするのですよ。リバーナ王国の友好国である国の王女と仲が良い事に、ロズバルド陛下はとても喜ばれておりました」

第四側妃リリアン・ルーリ・ディーナはディーナ辺境伯爵の次女であった。
灰色の髪にブルーの瞳を持つ。
青色のドレスを好み、貧相な胸の所はレースを重ねて誤魔化している。

「アルファスは黄金騎士団団長に剣術を習って貰っていますのよ」

いかに自身の子が王国にとって利か語った後に始まる罵詈雑言。

その側妃の子らである王子達もやはり罵詈雑言。

「変態王子のバリチェロじゃないですか！噂はかねがね。やはりベネチアーノの者はそうじてていそうかんねんが無いですね！」

ミィファルトが笑顔で言う。
今の服装は黒のジャケットにズボンだ。袖口に金色の刺繍が施してある。

「こんにちは血濡れ王子のミィファルト兄上～違いますよ～ボクはどこかの誰かと違い、幼い頃から周囲の人が死んだりしませんので、皆さん好意で話しかけてくださるんです～！あ、別にミィファルト兄上の事では無いですよ？ははは！」

茶髪に緑金の瞳を持つバリチェロはミィファルトを冷たく見ながら言う。
同じ七歳なのだが少し早生まれのミィファルトよりバリチェロの方が背が大きい。
緑色のジャケットにズボン、同じく金の刺繍がされた服を着ている。

「………」

アルファスは何時もの使用人に対する時とは違い、驚くほど静かだ。
いや、話し掛けてくる人間がいないのだ。
ブルーの瞳が無感情に母親であるリリアンに向けられていた。
青のジャケットにズボン、また同じく金の刺繍がされた服を着ている。

そんな一部を除き黒い空間の中、再び晩食の間の扉が開かれる。

「なんとか間に合ったみたいだね！やぁ、こんばんわ！」

長い白金の髪にロズバルドと同じ濃い金目。
白のジャケットにズボン、そしてまたまた同じく金の刺繍。
そんな服装をしたスノーヴァが優雅に入室した。

「あら？今日はお部屋でなくて宜しいのですか？ご無理をなさらずお部屋で食べた方がよろしくて？」

ミフィールはつかさず嫌味を言う。

「ははは！ミフィール側妃は心配性だな！毎回元気だと伝えているだろう？貴女こそ、頭に欠陥があるのではないか？」

王城の黒い褒め言葉等が基準になってしまっているスノーヴァは自然と嫌味が言えていた。

「あら、第一王子ともあろう方が私にその様な事を仰有りますか？」

「？？側妃がなぜ僕に『様』をつけない？？挨拶もしなかったし、礼儀がなってないのでは？
子に王子を持つのだから礼儀はしっかりした方が良いぞ？？
それとも、出戻りしたいのか？」

王妃の子、王位継承権第一位を持つ王子スノーヴァ。
対してミフィールは側妃でも元ロロリア公爵の人間だ。

ロズバルドも軽視できない後ろ楯がミフィールにはあった。

「ふふ、スノーヴァ王子こそ、身の程を知った方が宜しくってよ？その内新たなおう「《あーーーーー》」な、なに！？」

妖精が大きな声を出しながら窓ガラスを割った。
ミフィールはその音に驚いて言葉を止める。

「何者だ！！」

「お怪我はございませんか！？」

近衛である黄金騎士団が側妃や王子達の前へ護るように出る。

「《こいつアウトーー！禁止単語発言、及び愛し子罵倒罪で死刑！》」

「《愛し子の血族の親だから許してたのに！》」

「《ヒャッハッー！やっとこいつ殺せる！愛し子罵倒の罪、隅々まで味わわせてやるー！》」

「《言わなくて良い事も世の中にはありますよね～》」

「く、くるしい…こ、きゅ、がっ！」

ミフィールの周囲の酸素が無くなっていく。
ミフィールは胸元を爪で引っ掻き、苦しそうにのたまう。

妖精達はクスクス笑う。
中にはハイタッチしている者もいる。

「お、お母様！？」

「ロロリア側妃！？いかがなさいましたか！？」

「医者を呼べ！」

「毒か！？」

ミィファルトと騎士達がミフィールの元へ集まる。
ミフィールの血色の良かった顔が青くなっていった。

「おい、どうなってんだよ！」

クロドナがミフィールを見て青ざめる。
原因不明の窓ガラス破壊に先程まで元気だった知り合いの原因不明の呼吸困難。

スノーヴァを除いたクロドナ以外も恐怖に震えていた。

（これは助けた方が良いのか…？）

そんな中、スノーヴァはただ困り果てていた。