傲慢な超幸運王子はある意味最強

東間

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黄金騎士団団長

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(これは助けた方が良いのか…?)

スノーヴァはただ困り果てていた。

自身を何時も助けてくれる妖精が、笑いながらも瞳が激怒を表すレベル。
ミフィールより妖精を大切にしたいスノーヴァは妖精らのする事にあまり口を出したくなかった。

「《あと何秒かな?》」 

「《愛し子、勝負しようよ!ボクは10秒だと思う!》」

「《あーずるーい!ワタシも参加するー!》」

「おい!医者はまだか!!」

「お待たせしました!すぐに状態を見させて頂きます!!」

妖精達がクスクス飛び回る中、騎士の怒号が飛び医者が走って到着した。
医者はすぐに魔法を使いミフィールの状態を確認している。

妖精の罰フェアリーペナルティー?」

医者が不思議そうに首を傾げる。

「えっと、この者は妖精様に何かしたのですか?」

「何故そうなる!?」

「いえ、状態異常の欄に妖精の罰フェアリーペナルティーと…………私には手の施しようが御座いません!神官様をお呼び下さい!」

綺麗な土下座をして医者は孟スピードで去る。

(神から世界の管理を任されている妖精。
穏和で有名な妖精達を怒らすのは馬鹿しかいないと言われている。
そんな妖精を怒らせられる人間に…関わりたくない!!!)

医者は涙を流しながら走ったのだった。

「おい!待て貴様!!」

騎士達は動揺する。『妖精の罰』など初めて聞いたからだ。

「《あら?以外と生きてるわ?》」

「ん~…」

「《愛し子?どうしたの?》」

スノーヴァは唸りながら考える。
ミフィールはスノーヴァのお気に入りのミィファルトの母親だ。

「お、お兄様!お兄様は何かご存知ですか?」

青ざめながらもスノーヴァに駆け寄ったミィファルトはスノーヴァに問いかけた。
アルファスの部屋での出来事をミィファルトは思い出していたのだ。

「ん~…」

ミィファルトがポロポロと涙を流しながらスノーヴァを見る。
血のような瞳から透明な涙が出るのは、一種の神秘にも感じた。
スノーヴァがどんな返事をしようと他の人間はミフィールに気を取られて聞き取れないだろう。
スノーヴァは妖精とミィファルトを見比べて、溜め息をついた。

「うん、そうだね。その歳で母親を亡くすのは可哀想だ」

「《》」

「《ボクたちこいつ嫌い!!!》」

「《でも愛し子が嫌がってるよ?》」

「《多数決しよ!》」

妖精達が集まり各々手をあげる。
結果は…

「《延命結果!》」

「カハッ!」

ミフィールが咳き込みながらも呼吸を繰り返す。

「お母様!」

「何がどうなっているんだ…??」

黄金騎士団は首を傾げる。
だがそれより王族の避難が先だと、それぞれ避難を開始した。

「スノーヴァ王子、お部屋まで護衛させて頂きます」

そう言ってスノーヴァの元に来たのは黄金騎士団団長レオン・ライ・パルマだった。
オレンジ色の髪に瞳。そして名の通り黄金の鎧を身に纏っている。
三十代には思えない野生じみた美貌も、市民の間では人気があった。
レオンには三人の子供がおり、長男はスノーヴァと同い年だ。
ご学友になる可能性が高い。

「レオン殿、宜しく頼む」

「畏まりました」

レオンと数人の騎士がスノーヴァに付き、スノーヴァの部屋に向かう。

「!?これはどういう事だ!?」

スノーヴァの広い部屋は窓ガラスがない。
いや、ガラスを嵌めるべき場所にガラスがないのだ。

今は冬に近い時期だが、随時外の風が入ってくる。
装飾品も無くダブルベッドと勉強机に椅子、そして数冊の本だけだ。

「スノーヴァ王子、ここは王子の部屋なのですか?」

「あぁ、そうだが?」

閉所恐怖症。
主な原因は過去のトラウマによる物が多く、スノーヴァは前世からその症状を患っていた。

本来スノーヴァの自室程の広さで症状が起こる事はない。だがスノーヴァは密室を苦手としていた為、この様な状態になった。

「私の隊から数人送ります。」

「必要ない。僕は超幸運だ!」

「……では、部屋付の従者を増員します。従者を呼んできます」

「?いないが??」

「はッ!?」

レオンが部屋を一周見て顔をしかめる。
第一王子のスノーヴァだが今まで護衛騎士や従者、侍女がいなかった。
本来あってはならない事だが、他の側妃達が上手く手を回していた。
側妃ら以外、誰も知らなかったのだ。

妖精達も市民を見る事が多いので異常に気がつかない。前世一般人のスノーヴァもだ。

【日常生活において、人間は自分の事は自分でする】

その認識だと考えていた。

「団長、この事は王に知らせた方が宜しいのでは?」

「俺報告してきます。ついでに人材を一時的に見繕ってきます」

「《え、これ駄目なの??》」

「《愛し子育児放棄されてたの??》」

「《ヒャッハッー!しちゃう??》」

妖精が困った様にウロウロする。

「いや必要ない!今まで出来ていたんだ、今更だ!」

それは主に妖精が手伝っていたからだ。
魔力無しはお湯を熱くできないしドライヤーも使えない。
トイレも流せない。
それに侍女もいないなら掃除も出来ていなかっただろう。

妖精の涙ぐましい過保護をスノーヴァは知らない。

「王子、取り敢えず今日は貴賓室へお泊まりください」

「え、やだ」

「…王子、今日襲撃があった事はご存知のはずです。」

レオンがスノーヴァを窘める様に言う。
スノーヴァは九歳にしては小柄な身長だ、六歳と言っても良い程。
その性でレオンは自身の息子である三男を思い浮かべていた。

「王子」

「僕に物申せるのは国王だけだ!」

「王子の安全の為ならば申し上げます」

「…………」

「…………」

「《………えっと、取り敢えず殺っちゃう?》」

シリアスな空気が流れる中、妖精が混乱しながらも粉を撒こうとする。
スノーヴァは大きく溜め息をついた。

「今回は僕が折れてやろう…僕は大人だからな!」

「感謝いたします。」
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