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留木原 夜という人間

【彼は生きていた ①】

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「またね」

僕は馬車に乗るロイスを見送り、布団に籠った。

ロイスとは騎士団の話や学園の話をした。

「ふふふふふ」

僕は不気味な笑い声をあげる。

「ふふふふふ」

ロイス会話したロイス会話したロイス会話した!

「ふふふふふ!」

「いつもあんな感じですか?」

「いつもは天使の様に儚い方です」

セバス達が何か言っているがかまわない!

僕は至福の時を味わっていた。

思えば前世高校生時代でも一回目のルイ・カロアス時代でも誰かを好きになった…だが!同性の性別で諦めたり悪役だからと諦めたり…僕には春がなかった!皆無!

僕は今幸せです!

「ふふふふふ!」

この幸せを誰かと分かち合いたい…だがセバス達に知られると後の展開が…いや!

いるじゃないか!身近で話せる殺せる人間!

「セバス、内密に馬車の準備を!

スクエア邸へ…ロキ様の所へ遊びに行こう!」

「………………くっ…特別ですからね!」

セバスは何故か悔しそうな顔をして手続きをしてくれた。

「良いんですか?」

「久々に幸せそうな顔をしている坊っちゃまのお願い事を無視できません」

セバスはあの事件が起きなかったら基本僕に優しい人だ。

「ありがとうセバス!」

「…今回だけですよ」


***

「ようこそールイくんー久々だねー」

「………」

「えー?無視が流行ってるのー?私悲しいなー」

スクエア公爵が僕の顔をじーっと見る。

この人とは決して喋ってはいけない。

『ロキくんは疎まれていた君を可哀想に思って遊んであげていたのにーまさか恩を仇で返されるとはねーいやーそれより酷い仕返しだったねーまさかロキくんが殺されちゃうとはねーしかもしかもー?まさか生き続けるとはねー?恥が無いのかなー?まぁカロアス公爵は恥もプライドもないと思ってたけどーまさか君も受け継いでいるとはねーいやー遺伝子とは怖いものだねーあぁー残念だなー君が生きている価値よりあの子が生きている価値の方が会ったのになーねぇ何でまだ生きてるのー?あぁー何でこの世の中て悪い奴だけが生き残るんだろうねーそうそう君みたいな何の感情も感じない低能な魔物以下で使いようのない無価値な遺伝子を持つ存在みたいなさー』

一回目の時、領地視察の度に現れ相手にしていた。
そしてその度に正論という名のナイフで心臓をザクザク刺す言葉を放つ。

相手にしていると熱を出して倒れる。

「小さい頃は『こーしゃくしゃま』て可愛かったのにーやっぱり人間年を取ると礼儀も可愛げも消えていくんだねーあぁー悲しいなーまるでこの間会った君のお父さんの様に成長していくよー彼もねー私を無視してくるんだよーこれでも私はスクエア公爵家当主なのに皆礼儀がなってないんだよなー会議の時だって皆して渋った顔して私の話を聞いているんだよー皇帝に関しては空を眺めているしーなぜ皆私の有意義な意見を真面目に聞かないのだろうかー?会議に出ている人間達は給料を貰ってその場にいるのにー良くないよねぇ本当ーまぁそんな大人に君もなってきたのはーとても悲しいなー」

「こんにちは、スクエア様」

僕は白旗を上げた。
今途切らなかったら恐らく2~3分は続き、再び無視したらまた別の会話が始まる。

流石マリネット公爵の人間と結婚した人だ…うん。

少し…いや、大分変人だ。


「やっと返事してくれたねーやはり君は他の大人と違って純粋に育ちそうだねー」

「ありがとうございます。それで…ロキ様はいますか?」

途切って切って切りまくる。
この人にはこれが一番良いだろう!…無礼は承知です。

「ロキくんー?…………大丈夫だねーむしろ会ってあげて引き戻してあげてくれるかなー?いやー神殿に」

「そうですか!分かりました」

内容はよく聞いていないけど居るなら良いか!

「セバトルー案内してあげてー私は執務室にいるから何かあったら呼んでねーあ、そう言えば最近ロキくんがー本を買っ」

「ご案内します」

「宜しくお願いします」

セバトルと呼ばれた執事は公爵の扱いに慣れているようだ。

「息子を頼んだよ、ルイくん」

呼ばれた気がして後ろを振り向くが、そこにはいつも通り笑っている公爵がいた。
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