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3.カレナ修道院
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規律正しくて質素な共同生活。俗世を離れて、神に祈りと労働と勉学を捧げる。でもそこは私にとって神様が与えてくれた安らぎの場所だった。
あの日、修道院に歩いてたどり着いた時、まるで来ることが分かっていたように門は開けられていた。
歩いて進んで行くと、白い修道服を着た一人の女性が出迎えてくれたのだった。
この修道院を建てた方は何代も前のこの国の王女だったそうだ。カレナ王女様という名でその名を取ってカレナ修道院と言われている。
強い守護の結界が張られていて内部には男性は入ることが出来ない。自給自足出来る様に広い畑や動物を飼う飼育舎もある。
もし世界が閉ざされたとしても、何年かは修道院の結界の中だけも生活できるというものだ。
修道院を作られた王女様が目指したものが何だったのか分からないけど、そうとうな覚悟が感じられる。
多分とてもいやな事があったに違いない。
もう一つ、女性が芸術や学問を勉強出来る様に図書室の蔵書も多かった。
祈りと労働の合間に勉学の時間も多く設けられているのは嬉しかった。
女性ばかりの修道院で、修道女として神を敬う彼女らは、清廉で内面が穏やかだった。その中でささくれ立っていた心が癒された。皆、何かを乗り越えてこの修道院に辿り着いた優しくて芯の強い人達ばかりだ。
驚いた事に修道長樣は王都の大修道院から代々派遣されているのだと伺ってびっくりした。大修道院と王家は王女様が修道院をこの地に拓いてからの長い付き合いなのだそうだ。
もしかしたら王女様も修道院に逃げたいと思うような事があったのかもしれない。ここに落ち着いてから私は目に見えて元気になった。
思えばいつも向けられていた攻撃的なリノの意思には心が摩耗したし、父親の一歩引いた態度にも心が軋んでいたのだ。私が繊細過ぎたのかもしれないけど。
「外界のこと全ては神が私達に与えられた試練です。試練を与えた人を恨んではいけません。心に留め置かず過去の事として水に流して忘れてしまえばよいのです」
「修道長様、私がここに来たのは試練から逃げてしまったという事なんでしょうか?」
私は不安になって聞いた。
「それは違います。貴女は神の導きによってここに来たのです。ここは終着点ではなく、生きている限り今からも試練は続いて行くのですよ」
正直、終着点なら嬉しかったのにとか考えてしまう。それと叔母さんには昨日やっと手紙を出した。
父さんに置いて来た手紙には修道院に行くとは書かなかったので、心配しているかもしれない。今まで生活の面倒を見てもらっていたのに心苦しい気持ちはあるけど、私に辛く当たるリノに会うのは嫌だし、無関心な父さんとの暮らしには戻りたくない。
叔母さんへの手紙には言えなかったリノの事や、父さんに対しての気持ちを書いた。そして修道院へ行こうと思ったのだと。初めて自分の気持ちを正直に書いた。でも後悔はしていない事と・・・そして、ごめんなさいと伝えたかった。
叔母さんからは直ぐに返事が来た。高いお金を払って早便にしてくれたのだろう。手紙には私を非難する言葉は全くなく、もっと気を付けていてあげれば良かったと謝罪や、私には自分の道を探して進みたい場所へ行きなさいと書かれてあった。
『お父さんの事は許してあげて下さい。こうなって真に理解できたと思います、貴女を失う事を恐れて間違ってしまったのです』
最後に書かれていた一行は、私にはもうよくわからなかった。人は気持ちが擦り切れるとそれ以上傷つかないように鈍感になってしまうのだろう。
許すも許さないもない。ただ育つ環境を整えてもらった事に感謝するだけだ。悪意をぶつけられたわけではないのだから。
でも、リノの事はまだどんな風にも心の中では処理出来ていない。
叔母さんは、手紙を送る為の切手と綺麗な便せんセットやペンやインクも一緒に送ってくれていた。
王都の美しい王城の絵葉書も入っていたのでその美しさに驚いたのだった。
あの日、修道院に歩いてたどり着いた時、まるで来ることが分かっていたように門は開けられていた。
歩いて進んで行くと、白い修道服を着た一人の女性が出迎えてくれたのだった。
この修道院を建てた方は何代も前のこの国の王女だったそうだ。カレナ王女様という名でその名を取ってカレナ修道院と言われている。
強い守護の結界が張られていて内部には男性は入ることが出来ない。自給自足出来る様に広い畑や動物を飼う飼育舎もある。
もし世界が閉ざされたとしても、何年かは修道院の結界の中だけも生活できるというものだ。
修道院を作られた王女様が目指したものが何だったのか分からないけど、そうとうな覚悟が感じられる。
多分とてもいやな事があったに違いない。
もう一つ、女性が芸術や学問を勉強出来る様に図書室の蔵書も多かった。
祈りと労働の合間に勉学の時間も多く設けられているのは嬉しかった。
女性ばかりの修道院で、修道女として神を敬う彼女らは、清廉で内面が穏やかだった。その中でささくれ立っていた心が癒された。皆、何かを乗り越えてこの修道院に辿り着いた優しくて芯の強い人達ばかりだ。
驚いた事に修道長樣は王都の大修道院から代々派遣されているのだと伺ってびっくりした。大修道院と王家は王女様が修道院をこの地に拓いてからの長い付き合いなのだそうだ。
もしかしたら王女様も修道院に逃げたいと思うような事があったのかもしれない。ここに落ち着いてから私は目に見えて元気になった。
思えばいつも向けられていた攻撃的なリノの意思には心が摩耗したし、父親の一歩引いた態度にも心が軋んでいたのだ。私が繊細過ぎたのかもしれないけど。
「外界のこと全ては神が私達に与えられた試練です。試練を与えた人を恨んではいけません。心に留め置かず過去の事として水に流して忘れてしまえばよいのです」
「修道長様、私がここに来たのは試練から逃げてしまったという事なんでしょうか?」
私は不安になって聞いた。
「それは違います。貴女は神の導きによってここに来たのです。ここは終着点ではなく、生きている限り今からも試練は続いて行くのですよ」
正直、終着点なら嬉しかったのにとか考えてしまう。それと叔母さんには昨日やっと手紙を出した。
父さんに置いて来た手紙には修道院に行くとは書かなかったので、心配しているかもしれない。今まで生活の面倒を見てもらっていたのに心苦しい気持ちはあるけど、私に辛く当たるリノに会うのは嫌だし、無関心な父さんとの暮らしには戻りたくない。
叔母さんへの手紙には言えなかったリノの事や、父さんに対しての気持ちを書いた。そして修道院へ行こうと思ったのだと。初めて自分の気持ちを正直に書いた。でも後悔はしていない事と・・・そして、ごめんなさいと伝えたかった。
叔母さんからは直ぐに返事が来た。高いお金を払って早便にしてくれたのだろう。手紙には私を非難する言葉は全くなく、もっと気を付けていてあげれば良かったと謝罪や、私には自分の道を探して進みたい場所へ行きなさいと書かれてあった。
『お父さんの事は許してあげて下さい。こうなって真に理解できたと思います、貴女を失う事を恐れて間違ってしまったのです』
最後に書かれていた一行は、私にはもうよくわからなかった。人は気持ちが擦り切れるとそれ以上傷つかないように鈍感になってしまうのだろう。
許すも許さないもない。ただ育つ環境を整えてもらった事に感謝するだけだ。悪意をぶつけられたわけではないのだから。
でも、リノの事はまだどんな風にも心の中では処理出来ていない。
叔母さんは、手紙を送る為の切手と綺麗な便せんセットやペンやインクも一緒に送ってくれていた。
王都の美しい王城の絵葉書も入っていたのでその美しさに驚いたのだった。
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