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4.三年後
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カレナ修道院に来てから三年半が過ぎた。
今日はハーブクッキーを焼いて、町のお祭りに出す準備だ。ハムやソーセージ、卵の燻製品等も出す。修道院では葡萄酒も作っているので出荷するし、ヤギや羊も品評会に出している。それで賞を取ると高値で取り引きされるというわけ。
町のお祭りと言っても私が育ったケレルではなく山を反対方向に降った所にあるもっと大きなメムクナという町だ。
修道院といえば収入のない人達の集まりという感じで誤解しがちだけどカレナ修道院は収入源をしっかりと持っている。それに肉やお酒も頂ける宗派だ。
守らなければならない規律は守るけど、葡萄酒だって肉や乳製品だって何かの時には皆にたーんと振る舞われるのだ。
今回の様にお祭りの参加後の打ち上げとかね。だからすごく楽しみだ。
戒律の厳しい宗派の違う修道院も別にある様だけど、カレナはそうじゃない。
ここだけの話し、修道長様もかなりいける口らしい。
修道院って私が逃げて来たから余計に暗いイメージがあったけど、勉強のためや家の都合で一時的にここに来ている人もいて、女性であっても薬師や騎士といった様々な経歴の持ち主の人もいるのだと知った。
ここで出来た同年代の友人の中には、剣を扱えるミリーと水の魔力を持つスワンがいた。修道女も有事の際には戦えなくてはいけないというカレナの精神に乗っ取り、皆日々家畜の世話や畑仕事で心身を鍛え、勉強もして、合間に武道も教わっている。カレナでは棒術を少しずつ習うと知った。これはちょっとした驚きだった。そして日々充実しているというか、忙しい。
泣き虫で痩せっぽちだった私も少しはたくましくなってきたかな?
「ラムリース、今回の祭の手伝いに貴女も行きなさい」
副修道長のダリューント樣からそう声をかけられた時は動きが止まった。
「ラムリース、聞こえましたか?」
「で、ですが副修道長樣・・・」
「俗世は修行の場です。ここに来て三年、貴女も成長しています。そろそろ次の段階へと進んでも良いでしょう」
鉄面皮と言っても過言でない普段は動かない表情が、葡萄酒でヘベレケになったのを見たと誰かが言っていたが想像できない。ダリューント樣は棒術の達人だった。年の頃は三十過ぎと聞いた事がある。背が高く男性的な雰囲気のある方で、恰好良いけどでも怖いのだ。とても反論できる雰囲気ではない。
「そ、そうです・・・ね」
気の弱い私は後ろに下がりたくなるのをぐっとこらえて返事をした。
「腰に短棒を付けて行きなさい。怖いものはありません。もし不届きな者がいれば打ち据えてもよろしいのですよ。私が責任を持ちます」
口の片方を器用に上げてそうおっしゃった。
「はい・・・」
棒術の棒には念を込めて使うと教えられる。この念とは魔力の事で、この世界の人々には多かれ少なかれ魔力を持っていると言われている。それと似たような力で神に仕える人の中に神力を扱える人もいるらしい。
意外な事に私は棒術に才能があるとダリューント樣に言われた事がある。こんな特技が自分に出来るとは思いもしなかった。念を込めると棒は伸び縮みしたり重さを感じなくなり自分の体の一部の様に扱える。
町の祭りの手伝いには十人出る事になり、修道院からは荷車を二台ロバに引かせて山を降りた。
一台は人を運ぶ座席付で、もう一台は荷運び用だった。どちらも雨が降った時の為にホロが張ってある。
ゆるゆると山を下り、会場となる教会前の広場には数日前から露店の準備がされていて、準備の人が集まりざわざわとした人の気配で熱気が高まっていた。
食べ物を焼いたり煮たりする匂いがしはじめていて、何だかワクワクする。
所定の場所に荷車を置くと、カレナ修道院用のテントに売り物を運ぶ準備だ。ヤギと羊の品評会には三人行く事が決まっていて、店の準備が済めば後は店番は交代制という取り決めで、露店を見て周ったり、町を散策しても良い事になっている。
私はミリーと二人で組む事になっていた。
「よし、今日は一緒に頑張りましょう」
ミリーがニッと笑った。
「うん、頑張ろうね!」
広がった青空に風が気持ちよかった。
今日はハーブクッキーを焼いて、町のお祭りに出す準備だ。ハムやソーセージ、卵の燻製品等も出す。修道院では葡萄酒も作っているので出荷するし、ヤギや羊も品評会に出している。それで賞を取ると高値で取り引きされるというわけ。
町のお祭りと言っても私が育ったケレルではなく山を反対方向に降った所にあるもっと大きなメムクナという町だ。
修道院といえば収入のない人達の集まりという感じで誤解しがちだけどカレナ修道院は収入源をしっかりと持っている。それに肉やお酒も頂ける宗派だ。
守らなければならない規律は守るけど、葡萄酒だって肉や乳製品だって何かの時には皆にたーんと振る舞われるのだ。
今回の様にお祭りの参加後の打ち上げとかね。だからすごく楽しみだ。
戒律の厳しい宗派の違う修道院も別にある様だけど、カレナはそうじゃない。
ここだけの話し、修道長様もかなりいける口らしい。
修道院って私が逃げて来たから余計に暗いイメージがあったけど、勉強のためや家の都合で一時的にここに来ている人もいて、女性であっても薬師や騎士といった様々な経歴の持ち主の人もいるのだと知った。
ここで出来た同年代の友人の中には、剣を扱えるミリーと水の魔力を持つスワンがいた。修道女も有事の際には戦えなくてはいけないというカレナの精神に乗っ取り、皆日々家畜の世話や畑仕事で心身を鍛え、勉強もして、合間に武道も教わっている。カレナでは棒術を少しずつ習うと知った。これはちょっとした驚きだった。そして日々充実しているというか、忙しい。
泣き虫で痩せっぽちだった私も少しはたくましくなってきたかな?
「ラムリース、今回の祭の手伝いに貴女も行きなさい」
副修道長のダリューント樣からそう声をかけられた時は動きが止まった。
「ラムリース、聞こえましたか?」
「で、ですが副修道長樣・・・」
「俗世は修行の場です。ここに来て三年、貴女も成長しています。そろそろ次の段階へと進んでも良いでしょう」
鉄面皮と言っても過言でない普段は動かない表情が、葡萄酒でヘベレケになったのを見たと誰かが言っていたが想像できない。ダリューント樣は棒術の達人だった。年の頃は三十過ぎと聞いた事がある。背が高く男性的な雰囲気のある方で、恰好良いけどでも怖いのだ。とても反論できる雰囲気ではない。
「そ、そうです・・・ね」
気の弱い私は後ろに下がりたくなるのをぐっとこらえて返事をした。
「腰に短棒を付けて行きなさい。怖いものはありません。もし不届きな者がいれば打ち据えてもよろしいのですよ。私が責任を持ちます」
口の片方を器用に上げてそうおっしゃった。
「はい・・・」
棒術の棒には念を込めて使うと教えられる。この念とは魔力の事で、この世界の人々には多かれ少なかれ魔力を持っていると言われている。それと似たような力で神に仕える人の中に神力を扱える人もいるらしい。
意外な事に私は棒術に才能があるとダリューント樣に言われた事がある。こんな特技が自分に出来るとは思いもしなかった。念を込めると棒は伸び縮みしたり重さを感じなくなり自分の体の一部の様に扱える。
町の祭りの手伝いには十人出る事になり、修道院からは荷車を二台ロバに引かせて山を降りた。
一台は人を運ぶ座席付で、もう一台は荷運び用だった。どちらも雨が降った時の為にホロが張ってある。
ゆるゆると山を下り、会場となる教会前の広場には数日前から露店の準備がされていて、準備の人が集まりざわざわとした人の気配で熱気が高まっていた。
食べ物を焼いたり煮たりする匂いがしはじめていて、何だかワクワクする。
所定の場所に荷車を置くと、カレナ修道院用のテントに売り物を運ぶ準備だ。ヤギと羊の品評会には三人行く事が決まっていて、店の準備が済めば後は店番は交代制という取り決めで、露店を見て周ったり、町を散策しても良い事になっている。
私はミリーと二人で組む事になっていた。
「よし、今日は一緒に頑張りましょう」
ミリーがニッと笑った。
「うん、頑張ろうね!」
広がった青空に風が気持ちよかった。
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