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一話
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「これはね…………『ローマ教皇』だって」
「(なんで言うんだよ!考えてたのに!)」
「ごめんごめんー。迷ってたから」
「(もう言うなよ!わかったな?)」
「はぁい」
僕の背後には、女の子がいる。
中学2年生くらいに見えるその子の名前は、カンナと言う。
碧眼と茶髪のミディアム。僕が見た女性の中ではかなり可愛い部類に入る。
でも、その子は僕の背後で踊っていようが、喋っていようが、鼻をほじっていようが、誰にも気づかれることはない。
それはなぜか?
簡単だ。
僕以外の人にカンナは一切見えないのだ。
それだけじゃない。僕以外の人には声も一切聞こえないし、触ることもできない。
逆にいえば、僕だけが彼女の存在を知っているわけだ。
っで。それをいいことに、カンナは現在高校生一発目のテストをしている僕に色々話しかけてくる。
「ねーねー。家に帰ったら昨日のドラマ見たい」
「(……)」
「ねー聞いてるの?ねーね。おーいバカものー」
「(……)」
「はぁ。バカには容姿端麗ぴちぴち爽やかな女の子の声は通らないかー」
「(うるせぇ!静かにしてろ!)」
ちなみに僕が声を出すと即刻退場処分と早速怒号が飛ぶので、心の声で会話している。
どうやらカンナは心の声も聞き取れるらしいから。
まぁそのせいで僕はむふふなことを考えることができない。
迷惑な話だよ。全く。
カキカキカキカキ…と静寂な空間に音が響く。
そういえば受験もこんな感じだったなぁとか、みんな一発目と言うこともあって気合が入っているのかなぁとか、そんなことを考えながらペンを進めるうちに残りの10分があっという間に過ぎ去ってしまう。
キーンコーンガー…キーンコーンガー…
「ようし。後ろから回収!」
先生の掛け声の後に、早速たくさんのため息が聞こえる。
それに続けてザワザワと答えを確認しあったりする声も耳に入った。
僕はなんやかんや(カンナから教えてもらったのは結局書いた)で全部埋めれたから良かった良かった。
…みんな出会ってまだ1ヶ月も経っていないのに仲がいいなぁ。
正直うらやましい。
そのコミュニケーション能力の高さを僕にも分けてください。
「自分から話しかけに行けばいいじゃん」
後ろからの女声。カンナだ。
「(僕はな、コミュニケーション能力がない、皆無なんだよ!)」
「よくそんなんで中学生過ごせたね」
「(中学生っぽく見えるお前がよく言うよ全く。僕は皆無とは言ったが中学校では友達がいたんだぞ。ちゃんと)」
そう。僕にはちゃんと友達がいた。いたんだが、みんな違う高校へ行ってしまった。
遊ぶときはワイワイ遊んだし、協力するときは息を合わせて頑張りあった。
ケンカもしたけど、次の日にはいつのまにか仲直りできる友達だった。
でも、今はそんな友達の存在の有り難みが身にしみる。
「でもさ、入学して3週間くらい経ったけど、実際話した人はいないよね?」
「(痛いところをつくな)」
「ふふ~。…ん?タク。前」
そうだ言い忘れていた。僕の名前はタクマ。
「タク君…」
「はい?」
振り返るとそこには長髪を一つに結んだ…oh。非常に可愛い女の子だ。
ってか早速タクマじゃなくてタク君って言われてるし。
嬉しい。
「おいタク。誰だその女の子」
っと思ったら後ろから…oh。非常に怖い声。
「(いや、知らないってマジで)」
「あ、あの。大問3の6番って覚えてる?」
「あぁ~。それってマルタ会談のやつでしたっけ?」
「うん…」
「それはプッシュ大統領とゴルバチョフですね。あ、間違えてたらすいません」
「う、嘘!わたしそんなの習ってないよ!どうしよう!」
「…空欄にしたってことですか?」
「うん」
ヤベェ可愛い。全てが癒される。高校生最初の会話がこの子とか、嬉しすぎる。
「おいタク」
「痛!」
「え?どうしたの?」
「い、いや全然大丈夫ですよ。なんかあの、たまに背中が急に痛くなるんですよ」
「そう…。心配だなぁ」
心配されてるとか嬉しい。
「でも、ありがとうね」
「あ、はい!」
っじゃ、と言うと彼女は自分の席へ戻った。
席の並びは出席番号順だから彼女の席は…は行くらいかな?
「おいタク」
「痛痛痛痛痛痛痛!」
「なんだよあの子」
「(知らねぇよ!全然全く一切知らねぇよ!)」
「って言う割には、慣れた感じで会話してたじゃん」
「(いや、本当に知らん!それにお前自分で言ってたじゃん。僕はまだこのクラスで会話したことがなかったんだぜ?)」
「はぁん」
っと、カンナは冷たすぎる視線で僕を見つめた。
続く
「(なんで言うんだよ!考えてたのに!)」
「ごめんごめんー。迷ってたから」
「(もう言うなよ!わかったな?)」
「はぁい」
僕の背後には、女の子がいる。
中学2年生くらいに見えるその子の名前は、カンナと言う。
碧眼と茶髪のミディアム。僕が見た女性の中ではかなり可愛い部類に入る。
でも、その子は僕の背後で踊っていようが、喋っていようが、鼻をほじっていようが、誰にも気づかれることはない。
それはなぜか?
簡単だ。
僕以外の人にカンナは一切見えないのだ。
それだけじゃない。僕以外の人には声も一切聞こえないし、触ることもできない。
逆にいえば、僕だけが彼女の存在を知っているわけだ。
っで。それをいいことに、カンナは現在高校生一発目のテストをしている僕に色々話しかけてくる。
「ねーねー。家に帰ったら昨日のドラマ見たい」
「(……)」
「ねー聞いてるの?ねーね。おーいバカものー」
「(……)」
「はぁ。バカには容姿端麗ぴちぴち爽やかな女の子の声は通らないかー」
「(うるせぇ!静かにしてろ!)」
ちなみに僕が声を出すと即刻退場処分と早速怒号が飛ぶので、心の声で会話している。
どうやらカンナは心の声も聞き取れるらしいから。
まぁそのせいで僕はむふふなことを考えることができない。
迷惑な話だよ。全く。
カキカキカキカキ…と静寂な空間に音が響く。
そういえば受験もこんな感じだったなぁとか、みんな一発目と言うこともあって気合が入っているのかなぁとか、そんなことを考えながらペンを進めるうちに残りの10分があっという間に過ぎ去ってしまう。
キーンコーンガー…キーンコーンガー…
「ようし。後ろから回収!」
先生の掛け声の後に、早速たくさんのため息が聞こえる。
それに続けてザワザワと答えを確認しあったりする声も耳に入った。
僕はなんやかんや(カンナから教えてもらったのは結局書いた)で全部埋めれたから良かった良かった。
…みんな出会ってまだ1ヶ月も経っていないのに仲がいいなぁ。
正直うらやましい。
そのコミュニケーション能力の高さを僕にも分けてください。
「自分から話しかけに行けばいいじゃん」
後ろからの女声。カンナだ。
「(僕はな、コミュニケーション能力がない、皆無なんだよ!)」
「よくそんなんで中学生過ごせたね」
「(中学生っぽく見えるお前がよく言うよ全く。僕は皆無とは言ったが中学校では友達がいたんだぞ。ちゃんと)」
そう。僕にはちゃんと友達がいた。いたんだが、みんな違う高校へ行ってしまった。
遊ぶときはワイワイ遊んだし、協力するときは息を合わせて頑張りあった。
ケンカもしたけど、次の日にはいつのまにか仲直りできる友達だった。
でも、今はそんな友達の存在の有り難みが身にしみる。
「でもさ、入学して3週間くらい経ったけど、実際話した人はいないよね?」
「(痛いところをつくな)」
「ふふ~。…ん?タク。前」
そうだ言い忘れていた。僕の名前はタクマ。
「タク君…」
「はい?」
振り返るとそこには長髪を一つに結んだ…oh。非常に可愛い女の子だ。
ってか早速タクマじゃなくてタク君って言われてるし。
嬉しい。
「おいタク。誰だその女の子」
っと思ったら後ろから…oh。非常に怖い声。
「(いや、知らないってマジで)」
「あ、あの。大問3の6番って覚えてる?」
「あぁ~。それってマルタ会談のやつでしたっけ?」
「うん…」
「それはプッシュ大統領とゴルバチョフですね。あ、間違えてたらすいません」
「う、嘘!わたしそんなの習ってないよ!どうしよう!」
「…空欄にしたってことですか?」
「うん」
ヤベェ可愛い。全てが癒される。高校生最初の会話がこの子とか、嬉しすぎる。
「おいタク」
「痛!」
「え?どうしたの?」
「い、いや全然大丈夫ですよ。なんかあの、たまに背中が急に痛くなるんですよ」
「そう…。心配だなぁ」
心配されてるとか嬉しい。
「でも、ありがとうね」
「あ、はい!」
っじゃ、と言うと彼女は自分の席へ戻った。
席の並びは出席番号順だから彼女の席は…は行くらいかな?
「おいタク」
「痛痛痛痛痛痛痛!」
「なんだよあの子」
「(知らねぇよ!全然全く一切知らねぇよ!)」
「って言う割には、慣れた感じで会話してたじゃん」
「(いや、本当に知らん!それにお前自分で言ってたじゃん。僕はまだこのクラスで会話したことがなかったんだぜ?)」
「はぁん」
っと、カンナは冷たすぎる視線で僕を見つめた。
続く
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