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第一章 異世界に降り立つ!
07発目 冒険の仲間GETだぜ!
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「きて……!」
声が聞こえる……
誰かが俺を呼んでいるのだろうか……
「起きてください!」
「エレーヌさん……?」
その声を頼りに目を覚ますと、目尻に涙を浮かべるエレーヌさんに抱きしめられた。
「よかった……!」
「いったあ!」
彼女が無事だったのは何よりなのだが、全身の筋肉が張り裂けるような激痛に思わず声が出る。
「すみません、動きっぱなしだったからか、身体がスッゴイ痛いんでちょっと勘弁してもらえると……」
「あ、ごめんなさい!」
ジェロームとの激しい攻防のせいか、身体が悲鳴をあげているのがわかる。
「それよりもジェローム……
あの魔族は、どうなったんですか?」
「私もさっき目が覚めたばかりでわからないんですけど…… ただ、あの光がまた見えたから急いでここに来てみたら、あなたが倒れているのを見つけたんです」
少なくとも気を失っていた俺の命があるということは、奴を倒したと考えてもいいのだろうか?
「ただあの魔族は、あなたがなんとかしてくれたってことなんですよね?」
「それは、まあ……」
「ありがとうございます……」
会話を続け頭を下げてくるが、俺が魔族であるジェロームを倒したという事実に加え、光を見たというその言葉、彼女にはわかったことがあるはずだ。
「お礼なんてやめてください。それよりその、起こしてもらって早々なんですが、実は話さないといけないことがあるんです……」
そう思い、俺のスキルやそれのせいで魔族を呼んでしまったことについて話そうとしたのだが……
「大丈夫ですよ、無理に話さなくても」
「えっ?」
「どうやって魔族を倒したのかとか、あたりの様子はなんなのかとか、色々と気にはなりますけど、それでも何も言わずに黙っていたってことは、言いたくないことなんでしょう?」
彼女はそう言って、深く追求しようとはしてこなかった。
確かに言い出しにくい内容ではあるが、それでも、俺のせいであの村が襲われたという事実がある以上、ある程度話しておかないと、あまりにも不義理な気がしてならない。
それに、スキルのこと以外にも色々と嘘をついていた訳で、俺自身としても黙っているのには思うところがある。
「それはそうですけど、でもやっぱり、見ず知らずの私に良くしてくれたエレーヌさんに、記憶がないとか嘘をついていたのは……!」
「いいんです。仮に森を消した光や魔族を呼んだ原因があなたにあったとしても、私にとってはあなたは助けてくれた恩人で、それにどこか妹の面影を感じるような、そんな不思議な人…… ただそれだけで十分なんです」
だからと、最低限のことは伝えようとしたのだが、それも拒否されてしまった。
まあ拒否というよりも、言わなくてもある程度はわかったうえで、聞かないようにしてくれているらしい。
「……すみません、ありがとうございます」
黙っていたことや魔族を呼んでしまったことについては、許されたというよりも、見ないことにしてくれているといったところだろうが、それでも感じていた罪悪感はおかげで少し和らいだ。
「いいんですよ。ただ、その代わりにって言うと卑怯なのかもしれないんですけど……」
そしてその代わりに何かお願いがあるらしいが、言葉を詰まらせている。
一体どうしたんだろうか?
もしかして、やっぱり妹のフリを続けて欲しいとか……
「私をこれから一緒に連れて行ってくれませんか?」
「え……?」
なんて考える俺に対して発された言葉は、あまりにも意外なものだった。
連れて行って欲しいって、行くあてもない俺に?
「村はその、もうダメですし……」
確かにジェロームによって全員が殺されたというあの村に、この先一人で住み続けることは難しいだろう。
「行くあてがなくなったのは私も同じなので、旅をしているなら一緒に連れていってください!」
しかしそれでも、俺といれば、いつまたあんな魔族との衝突になって危険に晒されるかもわからない。
俺としても来て欲しい気持ちは山々だが、それでも彼女にとってリスクが高すぎる。
「それに、あなたは嘘をついていたって言ってっていましたけど、この辺りの地理なんかに詳しくないのは本当でしょうし、私がいたら力になれることも沢山あると思うんです……!」
「それは確かに、そうですけど……」
この世界について何も知らない俺にとって彼女の存在は心強いものになるのだろうが、それでも簡単に頷くことはできない。
「それに、私だってこういうことができるんですよ!」
そう言って、彼女は手のひらを俺の傷にかざし、何かを呟いたその瞬間
「治癒系の祈祷ですか……?」
彼女の手を通して放たれた温かい光が、ジェロームとの戦いの最中にできていた俺の傷を塞いでいく。
「はい。あなたの使ったあの光には及ばないとは思いますけど、これでも結構お役に立てるはずです!」
この世界の知識だけでなく、俺には使えない回復系のスキルまで使えるらしい。
だがしかし……
「それでも駄目ですか……?」
「駄目っていうか、その……」
そんな純粋な瞳を顔を向けないでくれ!
今の体は女の子でも、あくまで俺の中身は男な訳で、エレーヌさんみたいな美少女にそんな風に上目遣いで見つめられると……
「よろしくお願いします……」
「はい!」
断れるわけがないんですよ……
---
「一つ聞きたいんですけどいいですか?」
二人で旅に出ることに決まってから数分が経った頃。
彼女の希望で村の人たちを埋葬するために戻っていたのだが、突然隣から声がかかる。
「あなたの名前を、教えてくれませんか?」
「え……」
「いや、言いたくないなら無理にとは言わないんですけど、やっぱりあなたとかって呼び続けるのはちょっと違和感があって……」
それは確かにもっともな意見だ。
しかも、これからの旅路を共にすると言うなら尚のこと名前ってのは必要だろう……
けど、俺の本名ってこの世界だと絶対変だよな?
「言いたくないって訳じゃないんですけど……」
「それなら教えてくださいよ!」
期待してくれてるのがわかる分、嘘をつくのは少し心苦しい気もするが、ここは前世のもう一人の俺の力を借りることにしようか……
「えっと…… 名前は、シャルロッテって言います」
「シャルロッテ…… この近くだとあんまり聞かないけど、素敵な名前ですね!」
「ははは……」
これは、Vtuberとして活動していたときの名義。
死因と絡めて少し思い出したくないことのはずだったんだが、異世界に来てから、あの活動での経験に助けられている部分も多い気がする。
「その、シャルさんって呼んでも良いですか?」
「好きに呼んでもらって大丈夫ですよ……」
「やった!」
嘘をついた分、こんなに喜ばれると心が痛い
まあ半分嘘でもないっちゃないが……
「そう言えば、これも聞きたかったんですけど、シャルさんはおいくつなんですか?」
「二十一歳ですよ」
これは本当。
日本人的な幼い容姿からして、彼女には信じられないかも知れないが、これに嘘はない。
「ウソ、私より三つも上……」
案の定というかなんというか、彼女はやはり俺より若く、そして俺のことを年下だと勘違いしていたようだ。
しかし、二人で旅をするとなると、俺はここでも女の子のフリをし続けないといけないのか……
なんて、この先の微妙な気苦労に肩を落としつつ、俺の方も気になっていたことを口にしてみる。
「名前も教えたことですし、その、せっかく一緒に旅をするんですから、多少年は離れてるといっても、いつまでも堅苦しい敬語のままって言うのはやめません?」
「……!」
彼女もその言葉を待っていたのか、その顔に笑顔が開き、元気な声が返ってくる。
「よろしくね、シャルさん!」
「よろしく、エレーヌ」
---
色々と旅に向けて話を続けているうちに、目的のキーシャ村へと到着した。
「これは……」
「…………」
ジェロームと対峙していたときはそれどころじゃなかったから見れていなかったが、村は血に塗れ相当に酷い有り様だ。
「大丈夫? エレーヌ」
「うん……」
聞いたはいいが、大丈夫ではないだろう。
先ほどまでは明るく笑顔だったエレーヌのその表情は、村に着いてからみるみるうちに曇っている。
それも当然、昨晩彼女から聞いた話では、この村の人達は両親を早くに亡くした彼女達を育ててくれたらしく、彼女にとっては親同然と言ってもいい人達だったのだろう。
見ず知らずの他人である俺でもこの状況に対して思うところはあるというのに、そんな存在を一気に失ったエレーヌが、普通でいられると考える方がおかしい。
「ごめんね、みんな……」
それでも涙を見せないで気丈に振る舞うのは、俺に罪悪感を感じさせないためか、それとも自分自身がおかしくなってしまわないためか……
「早く、埋葬してあげよう」
「そう、ですね……」
エレーヌの返事はどこか気が抜けているが、ともかく、別の魔族がまた来ないとも限らないし、彼女のことを考えても、しっかりと彼らを埋葬して直ぐにでもこの村を後にするべきだ。
「…………」
直接手を下したのはジェロームだったとは言え、その要因を作った俺は、この村の人たちを前にするとどこか罪悪感を感じずにはいられない。
エレーヌは気にしていないと言ってはくれたが、このままでは俺まで駄目になってしまいそうだ。
「…………」
そんな風に考えながら、重い空気のまま二人して淡々と埋葬用の穴を掘り続けていると、気付けば空が暗くなってきているのがわなる。
「急ごう……」
「うん……」
---
村人達の埋葬が終わって数時間ほど経った頃、時間は既に深夜に近づいているだろうか。
彼女がよく妹と一緒に寝ていたというベッドの上で、ふと目がさめてしまった。
本来なら直ぐに出発しようかとも思っていたものの、エレーヌに今日は一旦休んでから出発しようと言われ、彼女の家で共に床についていたのだが……
「エレーヌはどこに?」
その姿がベッドの上には見当たらない。
部屋全体に目をやれば、扉が開いているのがわかるが、もしかして外に行ったのだろうか……
「何か嫌な予感がするな……」
そう思い外に飛び出してみるが、見渡したところ、暗いのもあってか、彼女の姿は見つからない。
しかし、今の彼女を一人にしておくのは、間違いなく良くないということはわかる。
「変な気を起こしたりしてないといいんだけど……」
そう思い、集中して彼女を探そうとしたそのとき
「……ぅ、ぅ」
啜り泣くような声が、家の裏手から微かに聞こえてくる。
バレないように近づいて、覗き込んでみると、そこには口を手で押さえながら大粒の涙を流すエレーヌの姿があった。
気を遣ってか俺の前では涙を見せないよう、埋葬の最中まで気丈に振舞ってはいたようだが、彼女はまだ俺よりも幼い少女のはずなのに、なんて優しい子なんだろうか……
そんな彼女の思いを腐らせないためにも、俺はそのまま、元の寝室へと戻っていった。
声が聞こえる……
誰かが俺を呼んでいるのだろうか……
「起きてください!」
「エレーヌさん……?」
その声を頼りに目を覚ますと、目尻に涙を浮かべるエレーヌさんに抱きしめられた。
「よかった……!」
「いったあ!」
彼女が無事だったのは何よりなのだが、全身の筋肉が張り裂けるような激痛に思わず声が出る。
「すみません、動きっぱなしだったからか、身体がスッゴイ痛いんでちょっと勘弁してもらえると……」
「あ、ごめんなさい!」
ジェロームとの激しい攻防のせいか、身体が悲鳴をあげているのがわかる。
「それよりもジェローム……
あの魔族は、どうなったんですか?」
「私もさっき目が覚めたばかりでわからないんですけど…… ただ、あの光がまた見えたから急いでここに来てみたら、あなたが倒れているのを見つけたんです」
少なくとも気を失っていた俺の命があるということは、奴を倒したと考えてもいいのだろうか?
「ただあの魔族は、あなたがなんとかしてくれたってことなんですよね?」
「それは、まあ……」
「ありがとうございます……」
会話を続け頭を下げてくるが、俺が魔族であるジェロームを倒したという事実に加え、光を見たというその言葉、彼女にはわかったことがあるはずだ。
「お礼なんてやめてください。それよりその、起こしてもらって早々なんですが、実は話さないといけないことがあるんです……」
そう思い、俺のスキルやそれのせいで魔族を呼んでしまったことについて話そうとしたのだが……
「大丈夫ですよ、無理に話さなくても」
「えっ?」
「どうやって魔族を倒したのかとか、あたりの様子はなんなのかとか、色々と気にはなりますけど、それでも何も言わずに黙っていたってことは、言いたくないことなんでしょう?」
彼女はそう言って、深く追求しようとはしてこなかった。
確かに言い出しにくい内容ではあるが、それでも、俺のせいであの村が襲われたという事実がある以上、ある程度話しておかないと、あまりにも不義理な気がしてならない。
それに、スキルのこと以外にも色々と嘘をついていた訳で、俺自身としても黙っているのには思うところがある。
「それはそうですけど、でもやっぱり、見ず知らずの私に良くしてくれたエレーヌさんに、記憶がないとか嘘をついていたのは……!」
「いいんです。仮に森を消した光や魔族を呼んだ原因があなたにあったとしても、私にとってはあなたは助けてくれた恩人で、それにどこか妹の面影を感じるような、そんな不思議な人…… ただそれだけで十分なんです」
だからと、最低限のことは伝えようとしたのだが、それも拒否されてしまった。
まあ拒否というよりも、言わなくてもある程度はわかったうえで、聞かないようにしてくれているらしい。
「……すみません、ありがとうございます」
黙っていたことや魔族を呼んでしまったことについては、許されたというよりも、見ないことにしてくれているといったところだろうが、それでも感じていた罪悪感はおかげで少し和らいだ。
「いいんですよ。ただ、その代わりにって言うと卑怯なのかもしれないんですけど……」
そしてその代わりに何かお願いがあるらしいが、言葉を詰まらせている。
一体どうしたんだろうか?
もしかして、やっぱり妹のフリを続けて欲しいとか……
「私をこれから一緒に連れて行ってくれませんか?」
「え……?」
なんて考える俺に対して発された言葉は、あまりにも意外なものだった。
連れて行って欲しいって、行くあてもない俺に?
「村はその、もうダメですし……」
確かにジェロームによって全員が殺されたというあの村に、この先一人で住み続けることは難しいだろう。
「行くあてがなくなったのは私も同じなので、旅をしているなら一緒に連れていってください!」
しかしそれでも、俺といれば、いつまたあんな魔族との衝突になって危険に晒されるかもわからない。
俺としても来て欲しい気持ちは山々だが、それでも彼女にとってリスクが高すぎる。
「それに、あなたは嘘をついていたって言ってっていましたけど、この辺りの地理なんかに詳しくないのは本当でしょうし、私がいたら力になれることも沢山あると思うんです……!」
「それは確かに、そうですけど……」
この世界について何も知らない俺にとって彼女の存在は心強いものになるのだろうが、それでも簡単に頷くことはできない。
「それに、私だってこういうことができるんですよ!」
そう言って、彼女は手のひらを俺の傷にかざし、何かを呟いたその瞬間
「治癒系の祈祷ですか……?」
彼女の手を通して放たれた温かい光が、ジェロームとの戦いの最中にできていた俺の傷を塞いでいく。
「はい。あなたの使ったあの光には及ばないとは思いますけど、これでも結構お役に立てるはずです!」
この世界の知識だけでなく、俺には使えない回復系のスキルまで使えるらしい。
だがしかし……
「それでも駄目ですか……?」
「駄目っていうか、その……」
そんな純粋な瞳を顔を向けないでくれ!
今の体は女の子でも、あくまで俺の中身は男な訳で、エレーヌさんみたいな美少女にそんな風に上目遣いで見つめられると……
「よろしくお願いします……」
「はい!」
断れるわけがないんですよ……
---
「一つ聞きたいんですけどいいですか?」
二人で旅に出ることに決まってから数分が経った頃。
彼女の希望で村の人たちを埋葬するために戻っていたのだが、突然隣から声がかかる。
「あなたの名前を、教えてくれませんか?」
「え……」
「いや、言いたくないなら無理にとは言わないんですけど、やっぱりあなたとかって呼び続けるのはちょっと違和感があって……」
それは確かにもっともな意見だ。
しかも、これからの旅路を共にすると言うなら尚のこと名前ってのは必要だろう……
けど、俺の本名ってこの世界だと絶対変だよな?
「言いたくないって訳じゃないんですけど……」
「それなら教えてくださいよ!」
期待してくれてるのがわかる分、嘘をつくのは少し心苦しい気もするが、ここは前世のもう一人の俺の力を借りることにしようか……
「えっと…… 名前は、シャルロッテって言います」
「シャルロッテ…… この近くだとあんまり聞かないけど、素敵な名前ですね!」
「ははは……」
これは、Vtuberとして活動していたときの名義。
死因と絡めて少し思い出したくないことのはずだったんだが、異世界に来てから、あの活動での経験に助けられている部分も多い気がする。
「その、シャルさんって呼んでも良いですか?」
「好きに呼んでもらって大丈夫ですよ……」
「やった!」
嘘をついた分、こんなに喜ばれると心が痛い
まあ半分嘘でもないっちゃないが……
「そう言えば、これも聞きたかったんですけど、シャルさんはおいくつなんですか?」
「二十一歳ですよ」
これは本当。
日本人的な幼い容姿からして、彼女には信じられないかも知れないが、これに嘘はない。
「ウソ、私より三つも上……」
案の定というかなんというか、彼女はやはり俺より若く、そして俺のことを年下だと勘違いしていたようだ。
しかし、二人で旅をするとなると、俺はここでも女の子のフリをし続けないといけないのか……
なんて、この先の微妙な気苦労に肩を落としつつ、俺の方も気になっていたことを口にしてみる。
「名前も教えたことですし、その、せっかく一緒に旅をするんですから、多少年は離れてるといっても、いつまでも堅苦しい敬語のままって言うのはやめません?」
「……!」
彼女もその言葉を待っていたのか、その顔に笑顔が開き、元気な声が返ってくる。
「よろしくね、シャルさん!」
「よろしく、エレーヌ」
---
色々と旅に向けて話を続けているうちに、目的のキーシャ村へと到着した。
「これは……」
「…………」
ジェロームと対峙していたときはそれどころじゃなかったから見れていなかったが、村は血に塗れ相当に酷い有り様だ。
「大丈夫? エレーヌ」
「うん……」
聞いたはいいが、大丈夫ではないだろう。
先ほどまでは明るく笑顔だったエレーヌのその表情は、村に着いてからみるみるうちに曇っている。
それも当然、昨晩彼女から聞いた話では、この村の人達は両親を早くに亡くした彼女達を育ててくれたらしく、彼女にとっては親同然と言ってもいい人達だったのだろう。
見ず知らずの他人である俺でもこの状況に対して思うところはあるというのに、そんな存在を一気に失ったエレーヌが、普通でいられると考える方がおかしい。
「ごめんね、みんな……」
それでも涙を見せないで気丈に振る舞うのは、俺に罪悪感を感じさせないためか、それとも自分自身がおかしくなってしまわないためか……
「早く、埋葬してあげよう」
「そう、ですね……」
エレーヌの返事はどこか気が抜けているが、ともかく、別の魔族がまた来ないとも限らないし、彼女のことを考えても、しっかりと彼らを埋葬して直ぐにでもこの村を後にするべきだ。
「…………」
直接手を下したのはジェロームだったとは言え、その要因を作った俺は、この村の人たちを前にするとどこか罪悪感を感じずにはいられない。
エレーヌは気にしていないと言ってはくれたが、このままでは俺まで駄目になってしまいそうだ。
「…………」
そんな風に考えながら、重い空気のまま二人して淡々と埋葬用の穴を掘り続けていると、気付けば空が暗くなってきているのがわなる。
「急ごう……」
「うん……」
---
村人達の埋葬が終わって数時間ほど経った頃、時間は既に深夜に近づいているだろうか。
彼女がよく妹と一緒に寝ていたというベッドの上で、ふと目がさめてしまった。
本来なら直ぐに出発しようかとも思っていたものの、エレーヌに今日は一旦休んでから出発しようと言われ、彼女の家で共に床についていたのだが……
「エレーヌはどこに?」
その姿がベッドの上には見当たらない。
部屋全体に目をやれば、扉が開いているのがわかるが、もしかして外に行ったのだろうか……
「何か嫌な予感がするな……」
そう思い外に飛び出してみるが、見渡したところ、暗いのもあってか、彼女の姿は見つからない。
しかし、今の彼女を一人にしておくのは、間違いなく良くないということはわかる。
「変な気を起こしたりしてないといいんだけど……」
そう思い、集中して彼女を探そうとしたそのとき
「……ぅ、ぅ」
啜り泣くような声が、家の裏手から微かに聞こえてくる。
バレないように近づいて、覗き込んでみると、そこには口を手で押さえながら大粒の涙を流すエレーヌの姿があった。
気を遣ってか俺の前では涙を見せないよう、埋葬の最中まで気丈に振舞ってはいたようだが、彼女はまだ俺よりも幼い少女のはずなのに、なんて優しい子なんだろうか……
そんな彼女の思いを腐らせないためにも、俺はそのまま、元の寝室へと戻っていった。
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