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プロローグ
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「早く来いよ、一成!」
「わかってるよ……」
響く声に気怠さを隠さず返す。
「んだよ、つれないな。夜中に抜け出してここまで来てるんだから、一成だって興味はあったんだろ?」
「だからわかってるって…… 相変わらずお前は、夜中でもどこでも、関係なく元気が過ぎる奴だな」
「ありがとさん?」
「全く褒めてない……」
俺達が歩くのは、町の中心にある山の中。
真夏の嫌な空気に晒されながら、夜中にこんなところまで来た理由はあるにはあるが……
「でも本当にあるかな?」
「お前が言い出したのに、なんで俺が知ってんだ…… なかったらここまで来た苦労が無駄になるし、そりゃあって欲しいとは思うけどさ」
興奮気味の声色とは対照に、俺は今にも眠気に負けそうな様子で返す。
しかし、何が悲しくてこんなことに付き合わされなければならんのか。
こいつはすっかり忘れているらしいが、俺はあと数分もすれば十七歳の誕生日を迎えて、気分良く眠ることができていたと言うのに……
なんて、そんな風に考えながら俺は、放課後の教室での会話を思い出していた。
---
「そういや俺、昨日見ちまったんだ!」
突然課題を進める手を止め、頬杖をついて暇そうにする俺にそんなことを言ってくる、いかにもヤンチャそうな茶髪の男。
「なんだ、ツチノコでも見つけたのか?」
何を見ても一々世紀の大発見かのように振る舞うこいつのことだ。
どうせ犬猫の喧嘩でも見たんだろうが、こんなときは適当に相手をするのが一番だと、ぶっきらぼうに言葉を返す。
「ツチノコ? それがもっと凄いもんよ!」
「なら、UFOとか?」
なんて……
「大当たり! 昨日の台風のときに外眺めてたら、お前ん家の裏手、町の真ん中にあるあの山に向かって落ちてくのが、部屋の窓から見えたんだよ!」
冗談めかして言ったのだが、本当にUFOを見たとのことらしい。
しかし俺はそんな戯言を信じる程、純粋でもなければお花畑でもない。
「へぇ…… そんなことより、そこ間違ってるぞ」
このまま話しを続けさせれば、一緒に見に行こうだの何だのと、話が面倒なことになりそうなので、できるならここは早々に切り上げたいところだ。
「話逸らすなって、お前信じてないんだろ? そんな態度取るなら俺は別にいいぜ、一人でこの大発見を世間に知らしめるだけだか──」
「はいはいお好きにどうぞ。ほんじゃまた明日な与作」
興味本位の探検の誘いから逃れるため、俺は荷物を持って立ち上がった。
放課後には、俺に関係のないこいつの課題に付き合ってやったっていうのに、夜中まで付き合ってられない。
「あ、おい! どこ行くんだよ!」
「そろそろ用事の時間だから先に帰るんだよ」
「用事って、そんなこと言ってたっけ?」
「ああ、今できたんだ」
「嘘じゃねーか!」
「まあまあ、お前もそんなこと言ってないで、早く課題終わらせとけ。提出まであと一時間もないんだろ?」
その言葉を聞き、時計に目をやり唸る与作を尻目に、俺は適当な理由を付けて教室の扉に手をかける。
「今日の夜、0時前ぐらいに家の前で待ってるからな! 連絡したらちゃんと出て来いよー!」
「……はぁ」
しかしそんな俺に、与作はお構いなしといった様子で約束をふっかけてきた。
どうして夜中なんだ、そもそも確定事項になってんのか、てかこいつ遊びまわっててまともな成績取れんのか…… なんてあれこれ浮かんでくるが考えても仕方がない。
俺は適当に返事をしつつ、与作が夜になる頃にはどうでも良くなって来ないことを祈り、帰路へと足を進めた。
---
「なのに何で、本当に来ちまったんだよ……」
思わずため息と共にそんな言葉が漏れる。
与作のあの発言はいつもの奇行の一環で、飽き性のコイツのことだからどうせ来ないだろうと、そうタカを括っていたのだが、どうしてか来てしまった……
生返事だったとは言え約束は約束。
そんな訳で俺は今、仕方なく蒸し暑い夜空の下に放り出されている訳だ。
「何か言ったか? それより、足止まってるぞ!」
「悪い、考えごとしてた」
なんて考えている内に歩みが止まっていたらしく、与作が声をかけてきた。
「それより与作、何でこんな夜中に出発しようと思ったんだよ。昨日の台風で地面もぬかるんでるってのにさ」
「探検ってのは夜にやるのが相場だぞ?」
「おい待て、そんなくだらない理由で俺は、この時間に付き合わされる羽目になったってのか……?」
自分の中にある考えをさも常識かのように語り、俺の言葉を無視して先へと進んでいく与作に頭を抱えるが、同時にその言葉に与作らしさを感じてしまう。
「あ、一成! あそこだ!」
なんて少し呆れていると突然、与作が俺の方を向き声を掛けてくる。
指差しで何かを伝えようとしているので、俺は指の示す方向へと視線をやったのだが、
「アレは……」
本当にあった。UFOらしき何かがそこに。
期待していなかったゆえに受けた衝撃は大きく、一瞬言葉の続きを忘れて見入ってしまった。
「おい与作、アレはいったい──」
「一成!」
気を取り直して続けようとすると、言い切る前に横から与作に突き飛ばされた。
そして同時に視界が暗転し、意識が途切れる──
またか
「わかってるよ……」
響く声に気怠さを隠さず返す。
「んだよ、つれないな。夜中に抜け出してここまで来てるんだから、一成だって興味はあったんだろ?」
「だからわかってるって…… 相変わらずお前は、夜中でもどこでも、関係なく元気が過ぎる奴だな」
「ありがとさん?」
「全く褒めてない……」
俺達が歩くのは、町の中心にある山の中。
真夏の嫌な空気に晒されながら、夜中にこんなところまで来た理由はあるにはあるが……
「でも本当にあるかな?」
「お前が言い出したのに、なんで俺が知ってんだ…… なかったらここまで来た苦労が無駄になるし、そりゃあって欲しいとは思うけどさ」
興奮気味の声色とは対照に、俺は今にも眠気に負けそうな様子で返す。
しかし、何が悲しくてこんなことに付き合わされなければならんのか。
こいつはすっかり忘れているらしいが、俺はあと数分もすれば十七歳の誕生日を迎えて、気分良く眠ることができていたと言うのに……
なんて、そんな風に考えながら俺は、放課後の教室での会話を思い出していた。
---
「そういや俺、昨日見ちまったんだ!」
突然課題を進める手を止め、頬杖をついて暇そうにする俺にそんなことを言ってくる、いかにもヤンチャそうな茶髪の男。
「なんだ、ツチノコでも見つけたのか?」
何を見ても一々世紀の大発見かのように振る舞うこいつのことだ。
どうせ犬猫の喧嘩でも見たんだろうが、こんなときは適当に相手をするのが一番だと、ぶっきらぼうに言葉を返す。
「ツチノコ? それがもっと凄いもんよ!」
「なら、UFOとか?」
なんて……
「大当たり! 昨日の台風のときに外眺めてたら、お前ん家の裏手、町の真ん中にあるあの山に向かって落ちてくのが、部屋の窓から見えたんだよ!」
冗談めかして言ったのだが、本当にUFOを見たとのことらしい。
しかし俺はそんな戯言を信じる程、純粋でもなければお花畑でもない。
「へぇ…… そんなことより、そこ間違ってるぞ」
このまま話しを続けさせれば、一緒に見に行こうだの何だのと、話が面倒なことになりそうなので、できるならここは早々に切り上げたいところだ。
「話逸らすなって、お前信じてないんだろ? そんな態度取るなら俺は別にいいぜ、一人でこの大発見を世間に知らしめるだけだか──」
「はいはいお好きにどうぞ。ほんじゃまた明日な与作」
興味本位の探検の誘いから逃れるため、俺は荷物を持って立ち上がった。
放課後には、俺に関係のないこいつの課題に付き合ってやったっていうのに、夜中まで付き合ってられない。
「あ、おい! どこ行くんだよ!」
「そろそろ用事の時間だから先に帰るんだよ」
「用事って、そんなこと言ってたっけ?」
「ああ、今できたんだ」
「嘘じゃねーか!」
「まあまあ、お前もそんなこと言ってないで、早く課題終わらせとけ。提出まであと一時間もないんだろ?」
その言葉を聞き、時計に目をやり唸る与作を尻目に、俺は適当な理由を付けて教室の扉に手をかける。
「今日の夜、0時前ぐらいに家の前で待ってるからな! 連絡したらちゃんと出て来いよー!」
「……はぁ」
しかしそんな俺に、与作はお構いなしといった様子で約束をふっかけてきた。
どうして夜中なんだ、そもそも確定事項になってんのか、てかこいつ遊びまわっててまともな成績取れんのか…… なんてあれこれ浮かんでくるが考えても仕方がない。
俺は適当に返事をしつつ、与作が夜になる頃にはどうでも良くなって来ないことを祈り、帰路へと足を進めた。
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「なのに何で、本当に来ちまったんだよ……」
思わずため息と共にそんな言葉が漏れる。
与作のあの発言はいつもの奇行の一環で、飽き性のコイツのことだからどうせ来ないだろうと、そうタカを括っていたのだが、どうしてか来てしまった……
生返事だったとは言え約束は約束。
そんな訳で俺は今、仕方なく蒸し暑い夜空の下に放り出されている訳だ。
「何か言ったか? それより、足止まってるぞ!」
「悪い、考えごとしてた」
なんて考えている内に歩みが止まっていたらしく、与作が声をかけてきた。
「それより与作、何でこんな夜中に出発しようと思ったんだよ。昨日の台風で地面もぬかるんでるってのにさ」
「探検ってのは夜にやるのが相場だぞ?」
「おい待て、そんなくだらない理由で俺は、この時間に付き合わされる羽目になったってのか……?」
自分の中にある考えをさも常識かのように語り、俺の言葉を無視して先へと進んでいく与作に頭を抱えるが、同時にその言葉に与作らしさを感じてしまう。
「あ、一成! あそこだ!」
なんて少し呆れていると突然、与作が俺の方を向き声を掛けてくる。
指差しで何かを伝えようとしているので、俺は指の示す方向へと視線をやったのだが、
「アレは……」
本当にあった。UFOらしき何かがそこに。
期待していなかったゆえに受けた衝撃は大きく、一瞬言葉の続きを忘れて見入ってしまった。
「おい与作、アレはいったい──」
「一成!」
気を取り直して続けようとすると、言い切る前に横から与作に突き飛ばされた。
そして同時に視界が暗転し、意識が途切れる──
またか
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