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01回 違和感と焦燥感
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「一成!」
叫び声と共に突き飛ばされ、二つの衝撃が走る。
一体これは何度目だろうか。
全部思い出したよ。
「あぁ……」
そんなに強く押さなくたって
どうせ俺は死ねないのに……
「……」
それに、俺を庇ってお前はここで……
「……さく」
視界は既にぼやけ
意識が闇に引き摺り込まれた。
---
目が覚めると、慣れた景色が俺を出迎える。
既に見飽きた天井が視界の全てを攫い、止む事のない蝉の声が耳を襲う。
また帰ってきたのだ。
何度経験しても言い表せない気色の悪い感覚、もう何回、いや何百回かも分からない十八歳の夏に目眩を覚え、思わず喉奥から息が漏れる。
「なんなんだよ……」
そんな気持ちの悪さを表すように、やるせない思いを吐きだすが、どこへも届かず消えてゆく。
そして俺は、寸分違わぬ世界で瞳を閉じ、また同じ時の流れに身を委ねる──
「……」
はずだった。
もうじき病室へとやって来る母を待つため横にした身体を起き上がらせ、再び時計の方へと向ける。
「花瓶……?」
俺はただ、それを見つめている。
そしてそれだけであるのに、動揺が隠せない。
何万回と繰り返してきたから分かるのだ。
本来そこには花瓶などない。
「有り得ない……」
あるはずがない。
身体が、脳が、至る所まで違和感に包み込まれる。
今回も世界は俺が生まれてから常に変わらず同じ時を歩み続けてきた。
そしてそうであるならば、これまでのように干渉する者が存在しない以上、この世界において埃の一片さえ変化が生じることはないはずであるというのに……
「花瓶なんて、こんなところになかった」
側から見ればただの花瓶、しかしそれが今の俺の目には、これまでの全てを覆す巨大なものに映り、言い表せない恐怖を覚える対象として脳に侵食してくる。
病室の外へ
外にはまた、変わらない世界があるのではと、失いつつある自制心を何とか取り戻すため、重い身体を無理に動かし扉へ向かう。
「起きたのか、一成……」
しかし俺の予想は容易に砕かれる。
「与、作……?」
見慣れているのに見慣れないはずの男が、
俺を強く抱きしめた。
叫び声と共に突き飛ばされ、二つの衝撃が走る。
一体これは何度目だろうか。
全部思い出したよ。
「あぁ……」
そんなに強く押さなくたって
どうせ俺は死ねないのに……
「……」
それに、俺を庇ってお前はここで……
「……さく」
視界は既にぼやけ
意識が闇に引き摺り込まれた。
---
目が覚めると、慣れた景色が俺を出迎える。
既に見飽きた天井が視界の全てを攫い、止む事のない蝉の声が耳を襲う。
また帰ってきたのだ。
何度経験しても言い表せない気色の悪い感覚、もう何回、いや何百回かも分からない十八歳の夏に目眩を覚え、思わず喉奥から息が漏れる。
「なんなんだよ……」
そんな気持ちの悪さを表すように、やるせない思いを吐きだすが、どこへも届かず消えてゆく。
そして俺は、寸分違わぬ世界で瞳を閉じ、また同じ時の流れに身を委ねる──
「……」
はずだった。
もうじき病室へとやって来る母を待つため横にした身体を起き上がらせ、再び時計の方へと向ける。
「花瓶……?」
俺はただ、それを見つめている。
そしてそれだけであるのに、動揺が隠せない。
何万回と繰り返してきたから分かるのだ。
本来そこには花瓶などない。
「有り得ない……」
あるはずがない。
身体が、脳が、至る所まで違和感に包み込まれる。
今回も世界は俺が生まれてから常に変わらず同じ時を歩み続けてきた。
そしてそうであるならば、これまでのように干渉する者が存在しない以上、この世界において埃の一片さえ変化が生じることはないはずであるというのに……
「花瓶なんて、こんなところになかった」
側から見ればただの花瓶、しかしそれが今の俺の目には、これまでの全てを覆す巨大なものに映り、言い表せない恐怖を覚える対象として脳に侵食してくる。
病室の外へ
外にはまた、変わらない世界があるのではと、失いつつある自制心を何とか取り戻すため、重い身体を無理に動かし扉へ向かう。
「起きたのか、一成……」
しかし俺の予想は容易に砕かれる。
「与、作……?」
見慣れているのに見慣れないはずの男が、
俺を強く抱きしめた。
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