断罪まであと5秒、今すぐ逆転始めます

山河 枝

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1章 断罪回避

13 これで安心?

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「約束だよ、絶対離れないでね」

「はい」

「ずーっと一緒にいてね。どこかに行こうとしたら、追いかけてしがみつくから!」

 私はイザークの手を全力で握り返した。
 イザークも少しずつ、でもしっかりと握る力を強めてくる。
 澄んだ緑の瞳で、まっすぐに私を見つめて……

(って、見とれてる場合じゃないでしょ!生きるか死ぬかの瀬戸際なのに)

 イザークから目をそらすと、レオナルドが視界に入った。
 止めようかどうしようか、といった顔でオロオロしている。

 なんでそんなに困っているんだろう……と思ったけど、仕方ないかもしれない。
 追いかけてしがみつくって、妖怪じゃあるまいし。

(でも、妖怪にでも何でもなるよ。デスゲーム並みに危ない状況なんだから)

 とはいえ、身の安全は確保できそうだ。
 安心したらお腹が減ってきた。

 私はイザークの手を離し、レオナルドに尋ねた。

「そういえば、ご飯まだ?」

 聞いた途端、レオナルドががっくりと肩を落とす。

「君、処刑されかけたショックで恐怖が麻痺しちゃったの?呑気すぎるよ」

「私が呑気?もっと魔物を怖がれってこと?そう言われても、ペンダントがあれば一撃必殺だからなあ」

「いや、今の脅威は魔物じゃなくて……」

「魔物じゃない脅威?」

「……何でもない、気にしないでくれ」

 気にするなと言われても、気になる。
 でも、レオナルドは再び考え事を始めてしまった。
 
 何を悩んでいるんだろう。
 私も考えようとしたけど、お腹が空いて頭が回らない。

「ねえ、ご飯の時間ってわかる?」

 イザークに尋ねると、淡々と答えが返ってきた。

「城の夕食時間は、たしか三十分後だったかと」

「三十分後かあ、楽しみだな」

 昨夜は具沢山の野菜スープとパン。
 今朝は玉ねぎたっぷりのチーズリゾットだった。

 ゲームプレイ時は、魔物がはびこるディストピアだから、食糧不足なのかと思っていたけど……

 王都周辺の農村は、リリィや兵士がすぐ助けに行ける。
 農民も防壁内に避難しやすい。

 だから、王都への食糧供給量は大きく減っていないようだ。
 ……元箱入り娘のアナベルが、把握している範囲では。

「では、ご挨拶も終わりましたので、私は失礼いたします」

 イザークは頭を下げ、少しの間、私を見つめた。
 それから部屋を出ていった。

「じゃあ、僕もまた二週間後。当日は、朝食後すぐに迎えにくるから」

「わかった。レオナルド、お疲れ様」

 浮かない顔のレオナルドを見送ってから、私は拳を突き上げた。

「よーし、これから頑張るぞ!」

 まずは二週間後、二匹目の精霊──地の精霊に会いにいく。
 
 プレイ時はかなり苦労した。
 地の精霊を見つけても、すぐ逃げられてしまうのだ。
 森の中をひたすら追いかけ回した。

 その間、何度も狼の魔物に襲われてボロボロに。
 たまに出現するボス狼に遭遇したら、即死である。

 一般的なプレイヤーが、「クリアさせる気があるのか」とキレるのも当然だ。
 
(でも、毒舌キャラだったナギが私を賞賛してくれたし。地の精霊は自分から来てくれるかも。というか来て!)

 そう願わずにいられない。
 だって大チャンスなんだから。

 現地に行くのは、リリィとその仲間たち。
 レオナルドやギデオンもいる。

 ギデオンは、国王親衛隊を率いる騎士隊長に報告するだろう。
 騎士隊長なら、議会へ意見書を提出できる。
 私の力を議員に伝えられる。

 そこで、国王のレオナルドが後押ししてくれたら。

 議員もマチルダも黙るしかない。
 死刑の取り消しに一歩近づきそうだ。

(イザークにしがみついてたら死なずに済むし。リリィも一度は私を頼ってくれたんだから、すぐにペンダントを貸りられるよね。上手くいきそう)

 ホッとした私は、お腹いっぱいご飯を食べて、ふわふわのベッドの中で、ぐっすりと眠った。
 そんなことをしている場合ではなかったのに。

 とはいっても、想像できるはずがない。




 私が活躍すればするほど、リリィが「魔物じゃない脅威」に追い詰められるなんて。
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