魔術師の妻は夫に会えない

山河 枝

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4章 呪われた竜

2月23日 曇り

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今日は、久々に家へ帰ってきた。
そうしたら屋敷のあちこちが、ちょっと散らかってるというか、小汚いというか。
それに、ラウルさんもマリさんも、なんだか動きが鈍いの。ミュトスまでのろのろしてたわ。いつもはフライパンを吹っ飛ばしそうな勢いで、ちょろちょろしてるのに。

クロップさんだけがあくせく働いてた。何があったのか聞いたら、「ウィルブローズ様がいらっしゃらなくて、魔術が切れかけちまってるんですよ」だって。
どうして魔術が切れると、3人の元気がなくなるのかしら。

とにかく病気じゃないみたいだし、みんなも「大丈夫」って言ってたから、探しものに集中した。
私の部屋の引き出し、クローゼット、本棚……文字通り、ぜーんぶひっくり返した。

でも、これといった収穫はなし。
小説もプレゼントされたものだけど、触ったのなんて1、2回だし。
しかもラウルさんに確認したら、ウィルブローズ様が選んだんじゃなくて、本屋さんのおすすめだったらしいわ。

一応ウィルブローズ様の部屋も覗いてみたけど、私たちと関係がありそうなものはなかった。
それより気になったのが、作業台に積まれた紫色の草やら謎の干物やら、薬くさい木の実やら……。

たぶん、あれだよね。例のドロドロの材料。
こっそり捨てちゃおうかなって思ったけど、作業台の前ですっっごく悩んだけど、ギリギリのところで踏みとどまった。
偉かった、私!

まあ、それは置いておいて。
明日はもう1回、自分の部屋を探してみよう。それでも使えそうなものが見つからなかったら、家じゅう捜索しなくっちゃ。
時間があれば、日記も見直してみようかな。もしかしたら、忘れてることがあるかもしれないし。

今日嬉しかったことは、久しぶりにみんなに会えたことね。でも、ウィルブローズ様がいないと元気が出ないみたいだから、早く連れて帰らないと!
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