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最終章
堕天使ですわ
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「あのう、バルの名前の由来を聞いても?」
「ああ、バルトカピは魔法使いの原始語で『闇の者』という意味なのです」
成程です。そのまんまですわね。
『今、少しは捻ろよって思っただろう?』
ミカエル様が私にしか聞こえない声で言ってきましたわ。何故分かったのかしら?
『顔だ、顔!注意しろよ』
はい。分かりましたわ。
「次にアイバンについてですね?大聖女様はアイバンに付き纏われてバルトカピにしてやると言われているとか。あの男ならやりそうです」
シャーロットが事前に軽く話しておいてくれたらしいのですわ。その話を聞いて私と会ってくれる事になったようですの。
「あの男にいつ会ったのですか?」
「あれは一番最初にバルトカピが誕生してしまって後始末をしている時でした。堂々と魔法使いの研究室に入って来たのですよ。その時は私しかその部屋に居ませんでした。多分それを狙って入って来たのだと思いますが」
だと思いますわ。
「何やら面白い事になっているな、と言いながらやってきたアイバンは自分は堕天使だと言いました。そんなのは神話の世界でしか聞いた事がありませんでしたのでどこか頭がおかしい人が迷い込んで来たのだと思ったものです」
「私達からすると魔法使いさんがいた時代も神話の世界ですわ」
「あらあら、そうなりますか?そうかもしれませんね」
お師匠さんは柔らかな笑顔で答えてくれました。
「アイバンは全然信じていない私に自分の羽を見せてきました。その立派な羽の上の方三分の一ぐらいが黒く変化していて驚いたのを覚えています。白い羽が全部黒くなると堕天使になりもう天使には戻れないと言っていました」
「その姿を見て納得しましたか?」
「はい。羽を広げたアイバンはこの世の者ではなかった。あのような神々しいものは神か天使かしかいないと私の体や脳が納得しました。貴方達はアイバンが羽を出したところを見てはいませんよね?実際に見てみないとこの感覚は分からないと思います」
お部屋の中が静寂に包まれました。
あの男がその様に見えたのですね。それなら本物の元天使だと納得するでしょう。私もミカエル様の羽を見て納得したのでしたわ。思い出しました。
「そうですか......。追放されて神様への恨みからこの世界を壊そうとしているのでしょうか?」
「いいえ。どうやら違うようですよ?彼の話だと元々天界でも問題児だったようでこの世界での悪さはその延長線だと。人を不幸にする事が楽しくて仕方ないようです。それでこの世界に絶望を与えられる何かないかと考えていたところにバルトカピを見つけたんだそうです」
「そもそも天使だった時からおかしかったのですわね」
「その様です。そして一瞬にして彼はバルトカピの薬の作り方を脳に記憶したようでした。先程言いました個人の魔力に合わせて唱える呪文はその後に分かる事でしたがアイバンはきっとその時に分かったのだと思います。神様や天使は我々人間が思っているより凄い力があるのだと思いますよ」
「それならあの男はいつでもバルを作れる知識はあったわけですわね?それなのに何故今までそれを実行しなかったのでしょう?」
私は首を傾げた。
「多分ですが、アイバンの目に適う人物が居なかったのだと。彼の理想としている媒体が無かったのだと思います。そして今、この時代に大聖女様、貴方が生まれた」
「今までの大聖女様では駄目だったということですか?」
「ええ。貴方は今までの大聖女様に比べると桁が違います。聖力もそうですが見た目、知識、聖人として全てが完璧なのです。その完璧な聖人を闇に引きずり落とす事もアイバンは楽しんでいるのでしょう」
「なんて奴なんだ......。私のアイラを闇に引きずり落とすなどと。そんな事は絶対にさせない」
今まで黙って聞いていたお兄様が怒りで握りしめている手が震えていますわ。
「そうよ!私達が阻止してみせるわ!」
シャーロットも顔を真っ赤にして怒っていますわ。
ミカエル様はやっぱりな、あの男のやる事だ、ってお顔をしていますね。
「大聖女様、貴方は沢山の人から愛されていますね。そして貴方の力ならアイバンとも互角に戦える気がします。それに私が付け足した『天使の血』の呪文もありますが......あれはこの世界に神様も天使も絶対に来れない、自分は堕天使だから来ているとアイバンが言っていたので付け足したのですよ」
そこまで言ってお師匠さんは少し黙ってミカエル様を一瞬見た様な気がします。
「とりあえず、バルトカピになってしまっては人間に戻れません。それが完璧なバルトカピでなくてもです。死ぬまでバルトカピなのです。ですので絶対に大聖女様がなってはいけませんよ?なった瞬間からこの世界は破滅に向かいます」
「分かりましたわ。色々情報をありがとうございました。感謝しますわ」
お礼を言って帰ろうとした時、私の頭の中にお師匠さんの声がしました。
『あの聖騎士の1人は......天使ですね?アイバンと同じオーラがあります。アイバンに絶対に近付けてはいけません。まさか天使がこの世界に来ているとは思っていませんでした』
『はい。お見通しでしたのね。アイバンを捕らえる為に神様が命を削ってこちらの世界に派遣しています。私しか知りませんの。分かりましたわ。あの男には近付けさせません』
そんな会話を最後にしましたわ。
「ああ、バルトカピは魔法使いの原始語で『闇の者』という意味なのです」
成程です。そのまんまですわね。
『今、少しは捻ろよって思っただろう?』
ミカエル様が私にしか聞こえない声で言ってきましたわ。何故分かったのかしら?
『顔だ、顔!注意しろよ』
はい。分かりましたわ。
「次にアイバンについてですね?大聖女様はアイバンに付き纏われてバルトカピにしてやると言われているとか。あの男ならやりそうです」
シャーロットが事前に軽く話しておいてくれたらしいのですわ。その話を聞いて私と会ってくれる事になったようですの。
「あの男にいつ会ったのですか?」
「あれは一番最初にバルトカピが誕生してしまって後始末をしている時でした。堂々と魔法使いの研究室に入って来たのですよ。その時は私しかその部屋に居ませんでした。多分それを狙って入って来たのだと思いますが」
だと思いますわ。
「何やら面白い事になっているな、と言いながらやってきたアイバンは自分は堕天使だと言いました。そんなのは神話の世界でしか聞いた事がありませんでしたのでどこか頭がおかしい人が迷い込んで来たのだと思ったものです」
「私達からすると魔法使いさんがいた時代も神話の世界ですわ」
「あらあら、そうなりますか?そうかもしれませんね」
お師匠さんは柔らかな笑顔で答えてくれました。
「アイバンは全然信じていない私に自分の羽を見せてきました。その立派な羽の上の方三分の一ぐらいが黒く変化していて驚いたのを覚えています。白い羽が全部黒くなると堕天使になりもう天使には戻れないと言っていました」
「その姿を見て納得しましたか?」
「はい。羽を広げたアイバンはこの世の者ではなかった。あのような神々しいものは神か天使かしかいないと私の体や脳が納得しました。貴方達はアイバンが羽を出したところを見てはいませんよね?実際に見てみないとこの感覚は分からないと思います」
お部屋の中が静寂に包まれました。
あの男がその様に見えたのですね。それなら本物の元天使だと納得するでしょう。私もミカエル様の羽を見て納得したのでしたわ。思い出しました。
「そうですか......。追放されて神様への恨みからこの世界を壊そうとしているのでしょうか?」
「いいえ。どうやら違うようですよ?彼の話だと元々天界でも問題児だったようでこの世界での悪さはその延長線だと。人を不幸にする事が楽しくて仕方ないようです。それでこの世界に絶望を与えられる何かないかと考えていたところにバルトカピを見つけたんだそうです」
「そもそも天使だった時からおかしかったのですわね」
「その様です。そして一瞬にして彼はバルトカピの薬の作り方を脳に記憶したようでした。先程言いました個人の魔力に合わせて唱える呪文はその後に分かる事でしたがアイバンはきっとその時に分かったのだと思います。神様や天使は我々人間が思っているより凄い力があるのだと思いますよ」
「それならあの男はいつでもバルを作れる知識はあったわけですわね?それなのに何故今までそれを実行しなかったのでしょう?」
私は首を傾げた。
「多分ですが、アイバンの目に適う人物が居なかったのだと。彼の理想としている媒体が無かったのだと思います。そして今、この時代に大聖女様、貴方が生まれた」
「今までの大聖女様では駄目だったということですか?」
「ええ。貴方は今までの大聖女様に比べると桁が違います。聖力もそうですが見た目、知識、聖人として全てが完璧なのです。その完璧な聖人を闇に引きずり落とす事もアイバンは楽しんでいるのでしょう」
「なんて奴なんだ......。私のアイラを闇に引きずり落とすなどと。そんな事は絶対にさせない」
今まで黙って聞いていたお兄様が怒りで握りしめている手が震えていますわ。
「そうよ!私達が阻止してみせるわ!」
シャーロットも顔を真っ赤にして怒っていますわ。
ミカエル様はやっぱりな、あの男のやる事だ、ってお顔をしていますね。
「大聖女様、貴方は沢山の人から愛されていますね。そして貴方の力ならアイバンとも互角に戦える気がします。それに私が付け足した『天使の血』の呪文もありますが......あれはこの世界に神様も天使も絶対に来れない、自分は堕天使だから来ているとアイバンが言っていたので付け足したのですよ」
そこまで言ってお師匠さんは少し黙ってミカエル様を一瞬見た様な気がします。
「とりあえず、バルトカピになってしまっては人間に戻れません。それが完璧なバルトカピでなくてもです。死ぬまでバルトカピなのです。ですので絶対に大聖女様がなってはいけませんよ?なった瞬間からこの世界は破滅に向かいます」
「分かりましたわ。色々情報をありがとうございました。感謝しますわ」
お礼を言って帰ろうとした時、私の頭の中にお師匠さんの声がしました。
『あの聖騎士の1人は......天使ですね?アイバンと同じオーラがあります。アイバンに絶対に近付けてはいけません。まさか天使がこの世界に来ているとは思っていませんでした』
『はい。お見通しでしたのね。アイバンを捕らえる為に神様が命を削ってこちらの世界に派遣しています。私しか知りませんの。分かりましたわ。あの男には近付けさせません』
そんな会話を最後にしましたわ。
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