断罪された大聖女は死に戻り地味に生きていきたい

花音月雫

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最終章

バルの隙ですわ

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「このクソ野郎が......」

皆様、お口が悪くてごめんなさいね。
バル?エリアス王太子様がクソ野郎だったのは前の人生ですわ。今はクソ野郎ではないのですよ?

私はギラギラした赤い目でエリアス王太子様を睨んでいます。

「クソ野郎......とは?どういう意味なのか分からないが私に敵意が見て取れるな」

エリアス王太子様が剣を抜き構えます。

あ、意味が分かりませんの?
意味が分からなくて良かったですわ。
流石に王族の間では使わないお言葉ですのね?

「お前はもうアイラ大聖女ではないのだな」

エリアス王太子様は汚い物を見る目で私を見ていますわ。
......1回目の人生を思い出してしまいます。あの時もこの様な目で私を見ていましたわ。

「待って下さい!王太子様!あれはアイラです!あの娘なのです!」

お父様がエリアス王太子様の腕を掴みながら訴えていますわ。
腕を掴むだなんて不敬になりませんの⁉︎
一応、ここは戦場なので不問なのでしょうか?

「聖騎士団長、気持ちは分かるがあのような化け物になり、言っている事も訳がわからない。残念ながら......」

そう言ってまた構え直していますわ。
切り替えが早いですのね。
少しは躊躇して欲しかったのですけれど国を背負っていかなければならない方としてはこれが正解なのでしょう。

エリアス王太子様が私に向かってきますわ。何度も、何度も、魔力を込めた剣で切り掛かってくるのですが私の鱗は頑丈で切り傷一つつける事さえできません。

エリアス王太子様の魔力を見る限り本気で殺しにきていますのね。
これ、少し前までは私でしたのに。
全然関係なくガンガン来ますわ。
2回目言いますけれど王太子様としては正解の行動ですわよね。でも少しイラっとしますわ......。

このままではエリアス王太子様もあの男のように潰されてしまうでしょう。力の差がはっきりしていますもの。
バルに私と入れ替われる『隙』はないのでしょうか?少しの間だけでもよいのですが......。

闇は1回目の人生で作られたものなのでその時に心の底から好きな人はいなかったでしょうか?自分の事なのにあまり分かりませんわ。
好きだった人に何か言われれば動揺して『隙』ができないでしょうか?

『恋』の好きは無かったと記憶していますわ。それでは家族?先程お父様を見てもバルがそれ程気にした様子がありませんでしたわ。まぁ、他の人よりはなんとなくですが何か思う事があるような感じもしますが。それもうっすらですわ。

そして今、アクアからお母様を渡されて抱きしめながこちらを泣きそうな顔で見ていますがバルは無反応ですわよね。
お母様をチラッと見たもののこちらも反応無しです。あと家族といえば。

......え⁉︎まさかのお兄様ですの?確かに1回目の人生では妹を溺愛していましたわ。今とは違って婚約者もいましたし、それこそお兄様が私に対して抱いていた愛は『家族愛』でした。
お父様が諦めてしまってもお兄様だけは諦めずに最後の最後まで私の無実を訴えてくれていましたわ。
可能性はありますわね。
ですが、今のお兄様は......。
変態すぎて......そこら辺はどうなのでしょう?

「アイラ!ここに居るのか⁉︎キメラを退治していて遅くなった!」

お兄様の声ですわ。
どうやら移転魔法を使ってここにやって来たようです。

お兄様はお父様とお母様を見てホッとしながら周りを見渡して私とエリアス王太子様が戦っている事に気がついたようですわ。

「はぁ......。ちょこまかと面倒だ。この廃墟ごと潰すか」

え?あ?ちょっと待って!待って下さいバル!そんな突然大雑把な!

「エリアス王太子様⁉︎何故アイラに剣を向けているのですか?私のアイラに!」

お兄様が叫びました。
え⁉︎もう既に見目は私の原型はとどめていないのですけれど?

ピクッ。

あら?バルが動きを止めましたわ。
と、いうか、まさかお兄様には私がバルに見えていないとか?
いえ、いえ。そんな事があるわけありませんわよね?

「何を言っているのだ!もうあの可愛かったアイラ大聖女は居ないのだ!ここに居るのは化け物だ!殺さねばこの世界が壊されてしまう!」

うっ。その通りなのですけれど化け物と言われてしまうと傷つきますわ。

「はぁ?化け物になっていてもアイラはアイラだ!お前こそ何を言っているのだ?」

ぎゃあーーー!お兄様!
エリアス王太子様に対してなんて不敬な事を!お前だなんて!

お兄様がこちらに振り向きズンズンと私の側まで歩いて来ましたわ。
あら?バルが少し嬉しそう?

「皆でよってたかって。怖かっただろう?私が来たからにはもう大丈夫だ。な?アイラ?」

そう言ってお兄様はバルの私をギューと抱きしめました。
えぇぇぇぇーーー⁉︎
この見目なのに抱きしめられるのですの⁉︎気持ち悪くないのでしょうか?
真の変態、恐るべしですわ!!

「お......お......お兄様?」

「そうだよ?アイラの最愛のお兄様だ」

私の最愛ではないのですが。
しかしですわ!バルが嬉しさと動揺でパニックになっています!
お兄様!変態ですがやる時はやる男ですわね!

この機会しかありませんわ。
そしてチャンスは一度きりです。

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