上 下
1 / 42
第一章 公爵令嬢の姉

1 姉としての徹夜

しおりを挟む
 私リディアーヌは、いつものように困っていた。

 王宮から疲れはて、屋敷に戻って来たところだった。
 待ち構えていた様に、侍女に呼び止められたのだ。
 応接室に来るようにと言われ、ついて行ってみるとテーブルに何冊もの本が積んであった。

「マリアーヌお嬢様よりのご伝言です。明日提出されるとの事でした。ではお任せします」

 素っ気なく用件のみ伝えた侍女は、私の返事も聞かずそのまま退出していった。

「この膨大な課題を明日までって……」

 双子の妹マリアーヌに押し付けられた学園の課題は、とても一日で片付けられるものではない。

「今夜も徹夜かぁ」

 慣れているとはいえ、たまったものではない。
 だが許されなかった。
 私はこの家で一番立場が弱い。

 優先順位は何を置いても妹だった。
 例え私の課題が出来ていなくても、妹の物は先に仕上げなければならない。

 私はそっとため息を付いた。
 そして課題を部屋に運び入れ、取り掛かっていった。



 我がエイヴァリーズ公爵家には、双子の姉妹がいる。

 私が姉として生まれて、次期公爵ではあるがある事情・・・・で蔑まれながら生活していた。

 妹は生まれてすぐに、王太子の婚約者となった。
 生まれてからずっと、蝶よ花よと甘やかされている。
 将来エイヴァリーズ公爵家を引き立ててくれるのだからと、両親はなんでもわがままを聞いた。

 王家の対応も甘い。
 陰で私に課題を丸投げしている事など、知っている事だろう。
 王太子との仲が良好だからと言って、妹が嫌がる国の書類仕事を私にさせるのはどうかと思う。

 私は将来国政に関わるつもりはないのだから、必要のない事なのだ。
 将来の王太子妃の仕事だろうと、言えればいい。
 だが、両親に言っても妹に言っても、私には折檻が待っているだけだった。

 王宮で私は、自分に関係のない仕事を押し付けられている。
 その間、妹は王太子やご友人という名の太鼓持ちに囲まれて、楽しい時間を過ごす。

 そして私は疲れてゆっくり休むことも出来ず、学園の課題に取りかかるのが今の生活だった。




しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

劇場の紫陽花

ライト文芸 / 完結 24h.ポイント:0pt お気に入り:0

幼馴染がそんなに良いなら、婚約解消いたしましょうか?

恋愛 / 完結 24h.ポイント:19,207pt お気に入り:3,528

婚約破棄された地味令嬢(実は美人)に恋した公爵様

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:355pt お気に入り:1,481

転生幼女。神獣と王子と、最強のおじさん傭兵団の中で生きる。

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:688pt お気に入り:14,277

あまり貞操観念ないけど別に良いよね?

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:2,002pt お気に入り:2

王妃となったアンゼリカ

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:170,561pt お気に入り:7,833

愛される王女の物語

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:156pt お気に入り:8,264

異世界転生令嬢、出奔する

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:18,106pt お気に入り:13,937

処理中です...