無能とされた双子の姉は、妹から逃げようと思う~追放はこれまでで一番素敵な贈り物

ゆうぎり

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第一章 公爵令嬢の姉

11 姉として魔力を測り

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 キャサリン先生が辞めてからは、本当に酷くなった。
 両親も懲りたのか、王族と相談して妹の都合のいい教師を連れてきた。
 多分ここで学園長と懇意になったのだろう。

 私の王太子妃教育と次期公爵家当主となる為の勉強は過酷だった。
 午前中は妹と一緒に王太子妃教育を受ける。
 妹が教師に当てられ、間違えたらなだめられた。

「分かりにくかったかしら、次頑張りましょうね」

 私が間違えてしまったら叱責が飛んだ。

「こんな事も分からないなんて嘆かわしい。貴方は両親に無理を言って、王太子妃教育を受けているのでしょう?足を引っ張らないで」

 どうやら私はわがままを言って、王太子妃の勉強に参加している身の程知らずらしい。
 特別参加な私は、間違える事も許されなかった。

 そして、出された課題は妹の分もさせられた。
 当然同じ物にする訳にはいかないので少し変える。
 提出前に妹が自分の物を選び、残った物を私の分として提出した。
 字はいつも妹に似せている。
 書き直しさせられるのは真っ平だもの。

字だけは・・・・似ているのですね」

 大概の教師はそう言った。


 午後は公爵家領地の全般を学ぶ。
 教師だけでなく、公爵家の役職の者が教えに来たりもした。
 特別講師が来た時間、私は発言してはいけないらしい。
 父の治世に物申す形になるから、と強く教師に言われており、ただ話を聴くのみだった。

 最後に必ず失望と共に言われる言葉があった。

「マリアーヌ様にお教えしたかった」

 その時妹はお茶会をしている。
 教師や母や乳母兄弟達、時には役職のお供に付いてきた見目麗しい男性を迎えて。

 そんな勉強漬けの日々が続く中、突然の外出があった。
 前日に妹が無茶を言って、私は徹夜をした日だった。

「これ、渡すの忘れていたわ。提出明日だからやっておいて」

 ドサドサと音を立てた本と『クローディル国のお茶会と他国との違いをまとめること』と書かれた紙があった。

 八歳の誕生日に王妃様が来られた際お茶会をしたと言っていたが、その時に出された物だろう。
 私は無言で受け取って取り掛かったのだが、お茶会には縁がなく本の量も膨大で徹夜になってしまったのだ。


 連れて来られた所は教会だった。
 今日魔力を測るとの事で、午後に来たのだが測定者が当たり前の様に言った。

「昨日はよく眠れましたか?幼い頃の魔力は体調や気分によっても左右されます。ゆったりとした気持ちで受けてくださいね」

 妹は当然の様に返事をした。
 妹は知っていて、私は教えられていなかった。

 妹が先に測り、測定者を驚かせていた。

「おお、この様に水晶が輝くなどどれほどの魔力を秘めているのか」

 両親は大喜びで妹を褒め称えた。
 私は両親に体調不良を訴えたが、聞き入れられなかった。

 案の定と言うか何と言うか、私の結果に別の意味で測定者が驚いた。

「こ、これはなんと言っていいものやら……」

 私が手をかざした水晶は、中心部分に仄かに光があるだけだった。
 測定者が何やら説明をし始めたが、私は両親に引きずられる様に教会を後にした。

「こんなみっともない奴が公爵家に生まれたなんて一族の恥だ」
「マリアーヌは輝かしい魔力なのに、それに比べて貴方は……」
「あぁ、こんな人が姉だなんて、神様はなんて残酷なのでしょう」

 帰路の馬車の中で、私は妹の自信に満ちた顔と両親の失望と叱責をいつまでも聞いていた。



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