無能とされた双子の姉は、妹から逃げようと思う~追放はこれまでで一番素敵な贈り物

ゆうぎり

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国境へ

2 私の作るポーションは

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 その村にはあまり若い人はいないみたいで、すれ違うのはご年配の人ばかりだった。
 ゆっくり馬車を走らせていると、幌馬車から声をかけられた。

「どこのお孫さんかねぇ」
「えーっと、村長にお会いしたくて……」
「村長のお客さんかい、ここからまっすぐもう少し行った所の突き当たりさぁ。こんな可愛いお客さんなら村長も喜ぶねぇ」
「あ、ありがとうございます」

 聞き慣れないお世辞を言われてしまった。
 着いた村長の家に、不躾ながら宿をお願いすると快く泊めて貰えた。

「路銀が足りないと?街に何を売るつもりかのぅ」
「作ったポーションを売ろうと思っています」
「どれ、ちょっと見せてもらっても良いか?」

 村長宅で、夕食まで頂いて「旅の話でも聞かせてくれんかの」と請われた時の会話だった。
 私はカバンからポーションを取り出し、村長に手渡した。
 村長は暮れ始めた日にポーションをかざし、小刻みに振ってみた。

「うーん、これは難しいかもしれんなぁ」
「え?どうしてですか?私はこれで何度も怪我が治りましたよ」
「基準とされとるポーションと色が若干違っておる。多分かなりのオリジナル要素が含まれておるんじゃろう。こういうのは協会は好まんのじゃ。ある程度の均一性が求められるからのぉ」
「……そうなのですね」

 まさか、定期的に収入が得られると思っていたポーションが売れない可能性があるなんて思いもしなかった。
 私はかなり落ち込んでいたのだろう。

「そう落ち込むでない。ポーションが作れるということは薬草は持っておらんのか?」
「えっ、薬草ですか?」
「ほれ、持っとるなら見せてみい」

 私は採取したての新鮮な薬草を取り出した。
 これは街道からそれて、この村にたどり着くまでに取ったもの。
 珍しくはないだろうけど、他のはしなびてきているから。

「これは傷によく効く薬草だのぉ。すり潰して軟膏にもなる代物じゃ。薬師の店でも買い取っておる。何なら儂が買い取ってもよいぞ」

「あの、これは差し上げます。その、泊めて頂きましたから……」
「何子供が遠慮しとる。ほれ、代価はこれな」
「……ありがとうございます」

 手に小袋を乗せられ、村長は早々に薬草を使ってみせた。

「因みにこう揉んで傷に貼り付けると、応急処置にええぞ。ちょうど指に傷があったから丁度良かった」

 村長は笑顔でそう言ってくれた。
 その日は何時ぶりだろう、ゆっくりと休めた。
 翌日は朝食も頂き、昼食用にとパンも貰った。

 私は何度もお礼を言い、馭者席からも振り向きお礼言った。

「本当にありがとうございました」
「こら、危ない。しっかり事故のないようにな。良い旅を」


 大きな街に入り、協会所属の薬師の店にポーションを売りにいった。
 村長が言った様に引き取っては貰えなかった。
 それならと、薬草を売った。

 萎びたものでもいいと言われたので、持っている複数種類のものを渡した。
 査定が終わり、渡された金額は村長から頂いたものとほぼ同額だった。
 村長宅からここ迄来るのに摘んだ薬草は、村長に渡したものと同じ位の量だった。
 村長は随分色を付けてくれていたようだ。

 再度村長に心の中でお礼を言った。



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