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マーガレット・アンクール辺境伯令嬢の場合
13 二人の態度は相変わらずで
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父は今までの婚約の経緯やそれに伴っての不和を、会議に集まった貴族達に向かって改めて説明した。
もちろん、陛下の事は抜きにしてだ。
貴族の関係でいえば、ここに居る貴族達は父より寄親の侯爵に近い。
だからこそ侯爵の「辺境伯家の婿教育が厳しすぎる」という言葉を素直に信じたのだろう。
……昔、父が王城に勤めていた時の武勇伝も関係していたとは思うが。
しかし今、ガルディの珍行を目にし、その認識が改められていった。
最初は、それでも庇おうとする貴族はいた。
特にローディング侯爵家と、家族ぐるみで付き合いのある貴族家は「若気の至りというし……」と出来るだけ穏便に済ませようとしていた。
寄親の息子であるガルディは、傲慢すぎる無礼な振る舞いだが、態度が悪すぎるだけともいえる。
致命的な失言はしていないのだから、なんとか、なんとか穏便に……という思いが根底にあったのだろう。
しかし、父が話をしている最中の二人を見て、庇う声は小さくなっていった。
二人は、大人達の話を他人事の様に思っているのか、イチャつき我関せずといった態度だったのだ。
爵位の件も、二人に問うてもはぐらかされる状態。
結果、侯爵の何らかの言葉を間違って解釈したか、次期侯爵には子供がまだいないから、次の次と言われたのかも等々憶測だけが膨らんでいく。
既に若いから気持ちが先走った、では見過ごせない。
二人は皆に、貴族としての資質なしと判断出来るだけの材料を提供していた。
二人は良い席に陣取ってご機嫌だったのだが、貴族の長い話に短慮な者がそうそう耐えられる筈もなく……。
「ねぇ、いつまで待たせるのよ?」
「そうだぞ。辺境伯は婚約破棄を認めるだけ。他は俺とビオラとの仲を認めるだけの簡単な事だろう?」
「ねぇ、ガルディ。辺境伯は受け入れられないんじゃないかしら。だって婚約破棄したらそこの娘が確実に行き遅れになるのでしょう?だから若く優秀なあなたを手放したくなくて、認められないのよ」
「ははは、大体最初からこの婚約は間違っているんだ。俺に行き遅れを押し付ける方が悪いんだろ」
バカ笑いをする二人にムカつきながらも、婚約が間違っていることだけは私も同意よ!と強く思った。
しかし、私達が婚約したのは三年前、私が十六歳でガルディが十四歳の時。
この国での適齢期は、ある一部を除き十代後半と言われている。
婚約時は、適齢期の真っ最中。
行き遅れ状態で婚約した訳ではない。
しかし、そんな理屈は二人には通用しないだろう。
二人の中では、私が二十歳になる前にガルディと結婚する為、今とても焦っている。
だから、強い発言力のある父親に任せ引っ込んでいるだけの卑怯者、とでも思っているのだろう。
政略結婚を阻止し、愛し合う二人の未来を守ろうと考えて行動した。
自分達が行っているのは、愛の為の正義だと信じて自分達に酔っている。
会議の間もれ聞こえる、二人の言葉から汲み取った推論だけれど、概ね合ってると思う。
そして、チラチラとこちらを見る視線からは、ガルディは嫌悪、ビオラ嬢からは侮蔑の色が見て取れた。
私は、ここで仕事を放棄して、この二人と同じだと思われたくはない。
私は私の職務を全うするつもり。
だから、早く誰か私に意見を求めてくれないかしら。
もちろん、陛下の事は抜きにしてだ。
貴族の関係でいえば、ここに居る貴族達は父より寄親の侯爵に近い。
だからこそ侯爵の「辺境伯家の婿教育が厳しすぎる」という言葉を素直に信じたのだろう。
……昔、父が王城に勤めていた時の武勇伝も関係していたとは思うが。
しかし今、ガルディの珍行を目にし、その認識が改められていった。
最初は、それでも庇おうとする貴族はいた。
特にローディング侯爵家と、家族ぐるみで付き合いのある貴族家は「若気の至りというし……」と出来るだけ穏便に済ませようとしていた。
寄親の息子であるガルディは、傲慢すぎる無礼な振る舞いだが、態度が悪すぎるだけともいえる。
致命的な失言はしていないのだから、なんとか、なんとか穏便に……という思いが根底にあったのだろう。
しかし、父が話をしている最中の二人を見て、庇う声は小さくなっていった。
二人は、大人達の話を他人事の様に思っているのか、イチャつき我関せずといった態度だったのだ。
爵位の件も、二人に問うてもはぐらかされる状態。
結果、侯爵の何らかの言葉を間違って解釈したか、次期侯爵には子供がまだいないから、次の次と言われたのかも等々憶測だけが膨らんでいく。
既に若いから気持ちが先走った、では見過ごせない。
二人は皆に、貴族としての資質なしと判断出来るだけの材料を提供していた。
二人は良い席に陣取ってご機嫌だったのだが、貴族の長い話に短慮な者がそうそう耐えられる筈もなく……。
「ねぇ、いつまで待たせるのよ?」
「そうだぞ。辺境伯は婚約破棄を認めるだけ。他は俺とビオラとの仲を認めるだけの簡単な事だろう?」
「ねぇ、ガルディ。辺境伯は受け入れられないんじゃないかしら。だって婚約破棄したらそこの娘が確実に行き遅れになるのでしょう?だから若く優秀なあなたを手放したくなくて、認められないのよ」
「ははは、大体最初からこの婚約は間違っているんだ。俺に行き遅れを押し付ける方が悪いんだろ」
バカ笑いをする二人にムカつきながらも、婚約が間違っていることだけは私も同意よ!と強く思った。
しかし、私達が婚約したのは三年前、私が十六歳でガルディが十四歳の時。
この国での適齢期は、ある一部を除き十代後半と言われている。
婚約時は、適齢期の真っ最中。
行き遅れ状態で婚約した訳ではない。
しかし、そんな理屈は二人には通用しないだろう。
二人の中では、私が二十歳になる前にガルディと結婚する為、今とても焦っている。
だから、強い発言力のある父親に任せ引っ込んでいるだけの卑怯者、とでも思っているのだろう。
政略結婚を阻止し、愛し合う二人の未来を守ろうと考えて行動した。
自分達が行っているのは、愛の為の正義だと信じて自分達に酔っている。
会議の間もれ聞こえる、二人の言葉から汲み取った推論だけれど、概ね合ってると思う。
そして、チラチラとこちらを見る視線からは、ガルディは嫌悪、ビオラ嬢からは侮蔑の色が見て取れた。
私は、ここで仕事を放棄して、この二人と同じだと思われたくはない。
私は私の職務を全うするつもり。
だから、早く誰か私に意見を求めてくれないかしら。
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