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1 いつもの事ですわ
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「アンゲリータ、君はなんて心が狭いんだ!ベティーナがこんなに困っているのに手を貸さないなんて、それでも姉か!」
わたくしアンゲリータ・バルツァーナは、学園のカフェテリアで一人ゆっくりと紅茶を楽しんでいました。
そこに、婚約者である第3王子のベルンハルト殿下が息せき切ってやって来ました。
「やっと出来た休息時間を邪魔されたくなかったわ……」
わたくしは小さく呟いてしまいましたわ。
勿論、他の方に聞こえないように気を付けております。
それにベティーナが困っているですか……今度は何に困っているのかしら。
髪飾り一つで困った、合わない、これじゃないと騒ぐのですもの。
まあ、いつもの事ですけれど、わたくしに当たられましてもねぇ。
「ベティーナは今回の課題に苦慮している。この国の成り立ちから始まり、自身の血筋、家柄に関しての作成だ。君だってやっただろう。なぜその資料を見せない!」
見せても意味がない事をご存知のはずの殿下が、大きな声で怒鳴っていらっしゃる。
カフェテリアは無人ではございませんのよ。
生徒の憩いの場だというのを忘れていらっしゃるのかしら。
ほら、あちらこちらで楽しげな話し声が聞こえていましたのに。
今ではピタリと止んでおりますわ。
ここで殿下を無視する訳にもいきません。
わたくしは仕方なく口を開きました。
「ごきげんよう、ベルンハルト殿下。ベティーナとは学年が違いますのに、良くご存知でいらっしゃいますわね」
ベティーナは1年、わたくしは3年、ベルンハルト殿下は最終学年の4年です。
この時期の1年の恒例授業だからかしら?
まず、殿下がどうしてこのような発言をしたのか、知らなくては。
「あぁ、ベティーナは勇気を持って私のクラスまで陳情に来たのだ。妹を蔑ろにして楽しいのか?」
そういえば、わたくしのクラスにと最近よく顔を出していたとか、クラスに戻った時に人伝に聞きましたが……。
あまりにも会えないものだから、殿下のところに行きましたのね。
そんな時間があるのなら、図書館にでも行けばよろしいものを。
殿下にお願いに行くなんて、相変わらずですこと。
「課題はベティーナ自身がするべきものですもの。わたくしには関係ありませんわ」
わたくしが当然の事を言いましても「冷たい姉」だと侮蔑に満ちた眼差しと表情でがなり立てていらっしゃいます。
わたくしはお返事をしました。
これ以上お答えしましても、意味がありませんから無言です。
一応しおらしく聞いている風を装っております。
しかし言ってはあれですけれど、こんなお話の相手をするのも馬鹿らしいのです。
わたくしの反応がないからか、言いたい事だけを言って殿下は去っていきました。
殿下はわたくしを貶すのが大好きなのです。
そして、ベティーナが大のお気に入り。
「婚約をなんだと思っているのかしら。王命でなければ……」
つい、小さく呟いてしまいます。
まだ周りが注目しているのにいけませんわ。
それに破棄を願うわたくしは、貴族としては良くないのでしょう。
でも、わたくしは侯爵家の教育に始まり、王子妃教育に殿下がやりたがらない学園の生徒会の仕事。
押し付けられる様に殿下の公務の一部も担っているのです。
この上異母妹の事までなんて、知りません。
仲がいいならまだしも、そうではないのですから。
大きなため息を一つつき、わたくしは冷めた紅茶を飲み干しました。
そして、ひそひそと控えた声のみとなったカフェテリアを出ていきました。
『皆様お騒がせいたしました』と一言添えて。
わたくしアンゲリータ・バルツァーナは、学園のカフェテリアで一人ゆっくりと紅茶を楽しんでいました。
そこに、婚約者である第3王子のベルンハルト殿下が息せき切ってやって来ました。
「やっと出来た休息時間を邪魔されたくなかったわ……」
わたくしは小さく呟いてしまいましたわ。
勿論、他の方に聞こえないように気を付けております。
それにベティーナが困っているですか……今度は何に困っているのかしら。
髪飾り一つで困った、合わない、これじゃないと騒ぐのですもの。
まあ、いつもの事ですけれど、わたくしに当たられましてもねぇ。
「ベティーナは今回の課題に苦慮している。この国の成り立ちから始まり、自身の血筋、家柄に関しての作成だ。君だってやっただろう。なぜその資料を見せない!」
見せても意味がない事をご存知のはずの殿下が、大きな声で怒鳴っていらっしゃる。
カフェテリアは無人ではございませんのよ。
生徒の憩いの場だというのを忘れていらっしゃるのかしら。
ほら、あちらこちらで楽しげな話し声が聞こえていましたのに。
今ではピタリと止んでおりますわ。
ここで殿下を無視する訳にもいきません。
わたくしは仕方なく口を開きました。
「ごきげんよう、ベルンハルト殿下。ベティーナとは学年が違いますのに、良くご存知でいらっしゃいますわね」
ベティーナは1年、わたくしは3年、ベルンハルト殿下は最終学年の4年です。
この時期の1年の恒例授業だからかしら?
まず、殿下がどうしてこのような発言をしたのか、知らなくては。
「あぁ、ベティーナは勇気を持って私のクラスまで陳情に来たのだ。妹を蔑ろにして楽しいのか?」
そういえば、わたくしのクラスにと最近よく顔を出していたとか、クラスに戻った時に人伝に聞きましたが……。
あまりにも会えないものだから、殿下のところに行きましたのね。
そんな時間があるのなら、図書館にでも行けばよろしいものを。
殿下にお願いに行くなんて、相変わらずですこと。
「課題はベティーナ自身がするべきものですもの。わたくしには関係ありませんわ」
わたくしが当然の事を言いましても「冷たい姉」だと侮蔑に満ちた眼差しと表情でがなり立てていらっしゃいます。
わたくしはお返事をしました。
これ以上お答えしましても、意味がありませんから無言です。
一応しおらしく聞いている風を装っております。
しかし言ってはあれですけれど、こんなお話の相手をするのも馬鹿らしいのです。
わたくしの反応がないからか、言いたい事だけを言って殿下は去っていきました。
殿下はわたくしを貶すのが大好きなのです。
そして、ベティーナが大のお気に入り。
「婚約をなんだと思っているのかしら。王命でなければ……」
つい、小さく呟いてしまいます。
まだ周りが注目しているのにいけませんわ。
それに破棄を願うわたくしは、貴族としては良くないのでしょう。
でも、わたくしは侯爵家の教育に始まり、王子妃教育に殿下がやりたがらない学園の生徒会の仕事。
押し付けられる様に殿下の公務の一部も担っているのです。
この上異母妹の事までなんて、知りません。
仲がいいならまだしも、そうではないのですから。
大きなため息を一つつき、わたくしは冷めた紅茶を飲み干しました。
そして、ひそひそと控えた声のみとなったカフェテリアを出ていきました。
『皆様お騒がせいたしました』と一言添えて。
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