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2 同志なのです
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カフェテリアを出てすぐのところでしょうか?
「貴女も大変ね」
ニッコリと美しい佇まいで微笑んでいらっしゃるご令嬢、アデルナ・エリメリヒ侯爵令嬢からお声を掛けられました。
「お見苦しい所をお見せしてしまいましたわ。アデルナ様の兄上バルトルト様がご卒業前でしたら、上手くお諫めされていたのでしょうが……」
わたくしでは難しいというポーズでお返事をいたしました。
「まぁそうですわね。わたくしにも無理ですわ」
そして二人顔を見合わせて苦笑、ですわ。
軽い雑談をしながら、わたくし達は生徒会室に向かいます。
わたくし達、ベルンハルト殿下からの被害を慰め合う同志ですの。
わたくしは婚約者として、アデルナ様は生徒会副会長して従兄弟として。
それ以外にも、殿下の側近であるバルトルト様からの頼まれ事もいろいろと請け負っていらっしゃるとの事。
アデルナ様はとても大変なお立場なのです。
わたくしは大変ではないのかって?
勿論大変ですわ。しかし大変さの中身が若干異なりますの。
婚約者のわたくしは、結婚をお約束しただけの状態ですわ。
王命とはいえ、まだ縁付いてはおりませんの。
王族、貴族がとても大切にしている『契約』を守る為の必要な前段階ですわね。
それなのに、やれ王子妃教育だ、政務だと王家にいいように使われている様な気もしますが、将来の為と思う事にしております。
殿下に当家とのお約束を守らす様に取り組むのは、王家であり、王妃様のご生家エリメリヒ侯爵家です。
血縁者であり、後ろ盾でもありますもの。
わたくしも、前段階だからといって放置はできません。
放置すれば、その行いが将来当家の返って来てしまいます。
わたくしは未来の為、アデルナ様は現在の為に今の殿下と接しているのです。
生徒会室に着いた途端に、わたくし達は少し淑女としての仮面を外してしまいました。
高位貴族として、学生の模範にならなければいけないのも大変な事なのです。
勿論、生徒会室に先約がいない事は確認しております。
「ああぁ、諦めてはダメなのは重々承知しているのですが、従兄弟とはいえ殿下の事に関しては、いっそ全て投げ出したくなりますわ~」
「わたくしも同じです。王命さえなければと何度思った事でしょう。あの態度、不敬かと思うのですが、ずっと無視していたくなりますわ。話が通じませんもの」
はぁ~と二人して大きなため息が生徒会に響きます。
淑女としてははしたないですが、今は二人だけですもの、ゆるされますわよね。
だってわたくし達、とてもとてもがんばっているのですもの。
二人して、殿下のフォローに回っておりますのよ。
殿下より1つ下ですのにね。
本来ならば逆だと思うのですが、ベルンハルト殿下ですから……
殿下の王家からの教育、なんとかしていただけないかしら。
「貴女も大変ね」
ニッコリと美しい佇まいで微笑んでいらっしゃるご令嬢、アデルナ・エリメリヒ侯爵令嬢からお声を掛けられました。
「お見苦しい所をお見せしてしまいましたわ。アデルナ様の兄上バルトルト様がご卒業前でしたら、上手くお諫めされていたのでしょうが……」
わたくしでは難しいというポーズでお返事をいたしました。
「まぁそうですわね。わたくしにも無理ですわ」
そして二人顔を見合わせて苦笑、ですわ。
軽い雑談をしながら、わたくし達は生徒会室に向かいます。
わたくし達、ベルンハルト殿下からの被害を慰め合う同志ですの。
わたくしは婚約者として、アデルナ様は生徒会副会長して従兄弟として。
それ以外にも、殿下の側近であるバルトルト様からの頼まれ事もいろいろと請け負っていらっしゃるとの事。
アデルナ様はとても大変なお立場なのです。
わたくしは大変ではないのかって?
勿論大変ですわ。しかし大変さの中身が若干異なりますの。
婚約者のわたくしは、結婚をお約束しただけの状態ですわ。
王命とはいえ、まだ縁付いてはおりませんの。
王族、貴族がとても大切にしている『契約』を守る為の必要な前段階ですわね。
それなのに、やれ王子妃教育だ、政務だと王家にいいように使われている様な気もしますが、将来の為と思う事にしております。
殿下に当家とのお約束を守らす様に取り組むのは、王家であり、王妃様のご生家エリメリヒ侯爵家です。
血縁者であり、後ろ盾でもありますもの。
わたくしも、前段階だからといって放置はできません。
放置すれば、その行いが将来当家の返って来てしまいます。
わたくしは未来の為、アデルナ様は現在の為に今の殿下と接しているのです。
生徒会室に着いた途端に、わたくし達は少し淑女としての仮面を外してしまいました。
高位貴族として、学生の模範にならなければいけないのも大変な事なのです。
勿論、生徒会室に先約がいない事は確認しております。
「ああぁ、諦めてはダメなのは重々承知しているのですが、従兄弟とはいえ殿下の事に関しては、いっそ全て投げ出したくなりますわ~」
「わたくしも同じです。王命さえなければと何度思った事でしょう。あの態度、不敬かと思うのですが、ずっと無視していたくなりますわ。話が通じませんもの」
はぁ~と二人して大きなため息が生徒会に響きます。
淑女としてははしたないですが、今は二人だけですもの、ゆるされますわよね。
だってわたくし達、とてもとてもがんばっているのですもの。
二人して、殿下のフォローに回っておりますのよ。
殿下より1つ下ですのにね。
本来ならば逆だと思うのですが、ベルンハルト殿下ですから……
殿下の王家からの教育、なんとかしていただけないかしら。
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