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オリバーに婚約破棄された翌日の午後カリンは父がいる領地へと向かった。もちろん前日に先触れは出している。
カリンの希望としては朝早くから出発したかったが、国への資料提出やら受け取り等で遅くなってしまった。
領地ヘは学園のある王都から馬車で三日。
この国では比較的近くある部類に入り、治安が良い道が続いている。
馬を駆け急ぎ領地へ帰る事も考えたが、これから忙しくなるのがわかりきっている為書類整理をしながらゆっくり帰路に着くことを選んだのだ。
「これとこれは婚約関係の書類でしょう。こっちはハマー家への借用関係。うーん、これ返ってくるかなぁ?お父様に丸投げ?あっ、このメモ書きの清書した物も必要だね。これは屋敷に保管していたはずだから…………」
「お嬢様、独り言が多くなってきていますよ」
執事見習いのエンサーが言う。カリンは考えを整理しようとする時や纏まらない時に独り言を言う癖があった。
馬車の中にはもう一人侍女のモニカもいる。
四人用の馬車を使用しているが、馬車席の一人分を書類が占め、書類が入った箱が山積みだった。
「結婚の為にハマー家ターナー家の親戚縁者利害関係を洗い直して資料が増えたでしょう?優先順位が変わるのだから整理し直しだし、この機会を活かさないとね」
「短いとはいえこの様な旅路に書類箱の開け閉めを頻繁になさって、紛失されても知りませんよ」
「大丈夫よ。その為に宿を取らず馬車で寝泊まりする事にしたんじゃない、苦情は受け付けません」
カリンが宿への書類搬入の負担が無い分大丈夫だろうとの意味を込めて、ビシッとエンサーに言ったが隣のモニカは気にせず意見を言う。
「仮にも伯爵令嬢なのですから、野宿を当たり前に受け入れないで下さいませ。お嬢様だけでも宿を取ることを勧めます。宿にお金を落とすのも貴族の義務ですよ」
「貴族の義務は分かっているわよ。必要な時はきっちりするわ。今回は急遽で臨時。この街道は治安が良いし商人の行き来も多い。宿場町はそれなりに潤っている。貴族の小娘一人が宿を使わなくても大丈夫よ」
「カリンお嬢様はそう言っていつもいつも宿を使われません」
「そうだったかしら?」
「そうです」
カリンはとぼけて見せるが、確かに一人でこの街道を使う時に宿に泊まった事などない。いつも急遽で臨時として移動する為、毎回のカリンとモニカの言い合いだった。
「いつもなのにモニカは何時まで経っても慣れてくれないのね。エンサーはどう思って?」
「諦めました。モニカも早く諦めた方が良いですよ」
「そうよ、諦めが肝心よ!」
四つの非難の瞳を無視してカリンは書類に目を落とす。
ワイのワイのと賑やかなこの一行が婚約破棄されてすぐの令嬢の馬車だとはとても思えず、護衛に当たった兵士たちは首を傾げる程だった。
カリンの希望としては朝早くから出発したかったが、国への資料提出やら受け取り等で遅くなってしまった。
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「これとこれは婚約関係の書類でしょう。こっちはハマー家への借用関係。うーん、これ返ってくるかなぁ?お父様に丸投げ?あっ、このメモ書きの清書した物も必要だね。これは屋敷に保管していたはずだから…………」
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カリンが宿への書類搬入の負担が無い分大丈夫だろうとの意味を込めて、ビシッとエンサーに言ったが隣のモニカは気にせず意見を言う。
「仮にも伯爵令嬢なのですから、野宿を当たり前に受け入れないで下さいませ。お嬢様だけでも宿を取ることを勧めます。宿にお金を落とすのも貴族の義務ですよ」
「貴族の義務は分かっているわよ。必要な時はきっちりするわ。今回は急遽で臨時。この街道は治安が良いし商人の行き来も多い。宿場町はそれなりに潤っている。貴族の小娘一人が宿を使わなくても大丈夫よ」
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四つの非難の瞳を無視してカリンは書類に目を落とす。
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