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4 王城謁見の間―ロンドリオ

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―――ロンドリオ視点


「貴様は何を考えておる」

 王城の謁見の間で俺は父上からの怒声を浴びていた。

「何と言われましても……マリナリアと婚約破棄してサリーニアと婚約を結び直す事ですが……」

 父上の激情に煽られ尻すぼみになっていく俺の声が、余計に苛立たせてしまったようで父上は顔を顰められた。

「マリナリアと婚約した意味はわかっているのだな」
「はい、わかっています」

 父上の憤怒の声に思わず答えた。えーっと意味?意味……多分あれだ、あれ。前侯爵の意向?……だったらサリーニアでもいいじゃないか!

「ロンドリオ、それで本当によいのですか?」
「勿論です、母上。サリーニアは素晴らしいのです。私が剣術を活かしたいと話すと……」
「ロンドリオ、サリーニアとのお話はまた別の機会に設けましょう」

 正妃である母上が尋ねられたので、自信を持って答えたのにサリーニアの話を遮られてしまった。

 母上は永らく子が出来なかった。
 その為父上が側妃を娶って子を成した後、俺が生まれた。
 本来なら俺が一番・・に生まれてくるはずだったのだ。

 この国では生まれた順に継承権が与えられる。
 父上、何故俺が王太子ではないのですか?他国では正妃が生んだ子が王太子と言うではありませんか。

 これを知って俺は勉強を止めた。馬鹿らしい。代わりに好きな剣術に磨きをかけた。
 何も考えず思いのまま体を動かすのは楽しい。義父になるタリ・タス・テス侯爵もそう言っていた。
 周りは上手だと褒めてくれる。俺には才能があるからな。
 今では一緒に励む者はいない。孤高だがついてこられないのだから仕方がない。


「はぁ、何を言っても変わらんか」

 そう、俺の決意は固い。父上にはため息をつかれたがわかって貰えた。

「お前が本当にそれでいいと言うのなら構わん。だが今後一切マリナリアには近づくな。あれには別の相手を宛てがわねばならんからな」
「何故父上が探すのですか?あんな奴放っておけばいいではないですか」
「そういう訳にもいかん」

 はん、誰が近づくか。マリナリアは自分の父親にも嫌われているから、仕方無く父上が探すのだろう。
 側妃の姪だから甘いのだ。変なのが来て、王家との関係が良くない相手だと困るのだろう。
 あんな五月蝿い性格でも見た目はまあまあ良いからな。サリーニアには及ばないけど。
 考えると、サリーニアに会いたくなった。


 こうして俺は謁見の間を出てサリーニアに会いに行く事にした。
 だからその後父上と母上がどの様な話をされたかは知らない。



「陛下、申し訳ございません」
「よい、だが余計な事をした場合はわかっているな」
「ええ、その場合は母の情を捨て、妃として判断致します」
「それにしても、何故ああいう奴が稀に王家に生まれるのか……」




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