恋人だと思っていたのは私だけだったようです~転移先で女神から後付けでスキルを貰えたので、気分を切り替え何とかやっていきます

ゆうぎり

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街の外

7 突然の事態

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 洞の朝は早く、朝食はたき火で沸かした湯に練った木の実の粉を溶かした物だった。
 栄養はあると思うんだけど、はっきり言って美味しくはない。
 そんな私達の元に大きな音が鳴り響いた。

 爆発音というか、破裂音だろうか?
 腹の底に響く不吉な音。
 木が倒れる音も聞こえる。

「チッ、誰かが派手に魔法を使ってやがる」
「林の奥でしょうか?」
「あの辺りだと、大熊の縄張りか?」
「魔法で相手をするというなら変異種の可能性も……」

 この林に詳しい人達が、状況を予測しあっている。

「大方昨日の狩りで調子に乗って、肉でも献上しようとしたんだろうさ。迷惑な」

 クルトさんが、吐き捨てる様に言った。
 皆が洞から出て音のする方を眺めていると、煙が立ち昇り始めた。

「くそっ、火をつけやがった」
「一旦火がつくと消すのが大変なのに」
「……逃げるぞ」

 全員が当たり前の様に、洞に戻り荷物をまとめ始める。
 随分遠くに見えるのにと、不思議そうにしている私にヨハンが説明してくれた。

「この時期、木に火がつくのも回るのも早いんだ。それに俺達がいるというのはこの場合、お貴族様や騎士様にとっては好都合なのさ」
「好都合?」

「そっ、異国民が邪魔をした。アイツらが火を放った。理由なんてどうでもいいんだ。自分達の不都合を押し付けられさえ出来ればな」

 説明を聞いている間も、火の勢いは止まらなかった。

「火の魔法が使えるなら、付けた人が責任を持って魔法で消してよね」
「カーリは無茶を言うわね。一気に燃え上がった火を消すのにどれだけ強力な水魔法が必要だと思っているの?」

「でもレーナ、王族についてきた人達なら魔法の威力だって凄そうじゃない」
「水魔法は修得が難しいのよ。それに大きな魔法になればなるほど使える人は限られてくるわ」

 手は動かしながらも、そんな話をいていた私達に焦った声が割り込む。

「近くまで煙が見えるぞ!」
「くそっ、早すぎる。大きい荷物は捨てていく。いいな?」
「仕方ない」

 皆が頷き洞から出る際、私の横を通った男がボソリと言った。

「お前が派手に魔法を使ったからだ」

 瞳に宿る陰鬱な光に、私の体は固まった。

「カーリ、何してる。急げ」
「クルトさん。私の昨日の魔法で……」

 私の態度で何か言われた事を察したのか、クルトさんは首を横に振った。

「先遣隊なら索敵が出来る者もいるだろう。こっちが何人か見かけているなら、向こうにも確認されたと見るべきだ。目零しを願ったが、こういう状態じゃあまず無理だ。カーリのせいじゃない」

「でも……」
「ぐすぐすしている時間はないぞ」

 クルトさんは励ましてくれたが、その隣からさっきの男が告げた。

「俺達は林の出口に向かう。なーに、王族なんてお偉いさんは林近くに野営なんてしないさ。そんで、女。お前は来るな。邪神の話をする女なんて、縁起でもないからな」

 そう吐き捨てて、四人で走っていった。
 残ったのはクルトさんにレーナ、ヨハン、ベンと私。 

「野営しなくても、移動してこの近くまで来てるかも知れんだろうに」

 皆の視線がクルトさんに集まる。

「一旦街とは逆方向に逃げる。違う街近くに出るかもしれんが、火から逃げるのが先だ」

「嫌よ。街から離れるなんて」

 レーナが声を上げた。



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