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林の中での攻防戦
閑話 お心を慮ります
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―――アードルフィオ国第二王子側近アールン(元彼、騎士アルバンの兄)視点
私は、第二王子ファービリアン殿下がお産まれになった時から、側近として仕えている。
我が侯爵家は、正妃で嫁いだ方のお子を王として君臨させる様に、様々に働きかけているのだ。
側妃などというあの様な卑しい血筋の者が、この国を牛耳ろうなどと片腹痛いものだと思っている。
あの力のない大神官とて、側妃が陰から推したと聞く。
力があれば、中途半端な神の言葉などではなく、正しい言葉を聞いただろう。
今回の王族の遠征でも本物の『豊穣の賢女様』を、探すのは大変な苦労だ。
もう、一年半近くになるが見つかっていないのだからな。
しかし、もし見つからなかった時の為に、既に別の者は用意している。
目が黒い、異国民の女だ。
髪は辛い思いをしたとか言って、誤魔化せる程度には濃い色だ。
当然の事だろう。
手は幾つ打っても、足りないのだからな。
王族は賢女は分かるというが、誰も本当のところは分かっていない。
文献に残っているだけで、美化されたのかもしれないだろう。
もし偽りだと、用意した『豊穣の賢女様』が言われる様になっても、私まで辿り着けないようにしている。
政敵を、間に挟んでいるからな。
追い落とす手段にすれば良いだけだ。
それに、神からの言葉を聞いたなどと言った大神官は、既に更迭している。
王族にこれだけの労力を使わせているのだから、当然の処置だ。
本当に聞いたのかも怪しいものだ。
色々あって遅れていたが、もうすぐ街中に入る。
全部の部隊を一度に入れず、交代で街外にも待機する。
アルバンと会うのは久しぶりだ。
正直、会いたくはない。
父が、アルバンの方が王族の血が多く流れているなどと、世迷い言を言って一族をかき乱すのだ。
私は先手を打って、この辺境の地へ追いやったがな。
あれは、呑気すぎる。
当主なんて務まるわけないのが分からないなど、父も耄碌したものだ。
「アールン様、失礼致します」
今後の事を考えていると、私の手札の影が戻って来た。
「影、この傷はどうした」
私は自分が命令する際、部下の監視用に影を付ける。
信用していない訳ではない。
不測の事態に備えているのだ。
「何故か、手練がおりました。かなりの遠方で観察し、戻ろうとした所を……申し訳ございません」
「騎士達はどうした?」
「全て、捕えられてしまいました」
「チッ、あれだけ大きな事を言っておいて、この体たらくか。無様だな」
「どう致しましょう?」
「何、その内勝手に逃げてくるだろう。禁魔法を編み込んだ縄でもない限り、魔法で何とかすれば良い。また火が付いても、あの林は勝手に消えるみたいだからな」
禁魔法付きの縄は、高レベルの聖騎士が自分が使う捕縛用に作る物だ。
融資して買い上げた時もあったが、聖騎士の職を無くしたと言ってきた。
俺が便利に使ってやったんだ。
聖騎士といえど平民出なら十分だろう。
それにしても、殿下が言った『女』はなんだったのか。
捨て置けと言われながらも、かなり気にされているご様子だった。
こちらから贈呈すれば、喜ばれると思ったのだがな。
逃げた五人の中に唯一いた女を、部下に命じて連れて来させた。
私も見てみたが、ただのみすぼらしい女だった。
あんな化粧もしていない、下働き以下の女を殿下の通る側に居させるのも不快だった。
しかし、確認の為にと思っておいたが、全く見向きもされない。
いやいや、側近はお言葉の外も慮って対応しなければならないのだ。
あの女ではなく、誰か違う場面を思い出されていたのかもしれない。
さて、あの女をどうしようか。
街には、いい女が待っている。
例え歓楽街への出入りを禁止されようと、いい女を用意する事は出来る。
街の長辺りが、気を効かせているだろう。
あんな薄汚い女に、手を出す物好きなんていないさ。
私は、第二王子ファービリアン殿下がお産まれになった時から、側近として仕えている。
我が侯爵家は、正妃で嫁いだ方のお子を王として君臨させる様に、様々に働きかけているのだ。
側妃などというあの様な卑しい血筋の者が、この国を牛耳ろうなどと片腹痛いものだと思っている。
あの力のない大神官とて、側妃が陰から推したと聞く。
力があれば、中途半端な神の言葉などではなく、正しい言葉を聞いただろう。
今回の王族の遠征でも本物の『豊穣の賢女様』を、探すのは大変な苦労だ。
もう、一年半近くになるが見つかっていないのだからな。
しかし、もし見つからなかった時の為に、既に別の者は用意している。
目が黒い、異国民の女だ。
髪は辛い思いをしたとか言って、誤魔化せる程度には濃い色だ。
当然の事だろう。
手は幾つ打っても、足りないのだからな。
王族は賢女は分かるというが、誰も本当のところは分かっていない。
文献に残っているだけで、美化されたのかもしれないだろう。
もし偽りだと、用意した『豊穣の賢女様』が言われる様になっても、私まで辿り着けないようにしている。
政敵を、間に挟んでいるからな。
追い落とす手段にすれば良いだけだ。
それに、神からの言葉を聞いたなどと言った大神官は、既に更迭している。
王族にこれだけの労力を使わせているのだから、当然の処置だ。
本当に聞いたのかも怪しいものだ。
色々あって遅れていたが、もうすぐ街中に入る。
全部の部隊を一度に入れず、交代で街外にも待機する。
アルバンと会うのは久しぶりだ。
正直、会いたくはない。
父が、アルバンの方が王族の血が多く流れているなどと、世迷い言を言って一族をかき乱すのだ。
私は先手を打って、この辺境の地へ追いやったがな。
あれは、呑気すぎる。
当主なんて務まるわけないのが分からないなど、父も耄碌したものだ。
「アールン様、失礼致します」
今後の事を考えていると、私の手札の影が戻って来た。
「影、この傷はどうした」
私は自分が命令する際、部下の監視用に影を付ける。
信用していない訳ではない。
不測の事態に備えているのだ。
「何故か、手練がおりました。かなりの遠方で観察し、戻ろうとした所を……申し訳ございません」
「騎士達はどうした?」
「全て、捕えられてしまいました」
「チッ、あれだけ大きな事を言っておいて、この体たらくか。無様だな」
「どう致しましょう?」
「何、その内勝手に逃げてくるだろう。禁魔法を編み込んだ縄でもない限り、魔法で何とかすれば良い。また火が付いても、あの林は勝手に消えるみたいだからな」
禁魔法付きの縄は、高レベルの聖騎士が自分が使う捕縛用に作る物だ。
融資して買い上げた時もあったが、聖騎士の職を無くしたと言ってきた。
俺が便利に使ってやったんだ。
聖騎士といえど平民出なら十分だろう。
それにしても、殿下が言った『女』はなんだったのか。
捨て置けと言われながらも、かなり気にされているご様子だった。
こちらから贈呈すれば、喜ばれると思ったのだがな。
逃げた五人の中に唯一いた女を、部下に命じて連れて来させた。
私も見てみたが、ただのみすぼらしい女だった。
あんな化粧もしていない、下働き以下の女を殿下の通る側に居させるのも不快だった。
しかし、確認の為にと思っておいたが、全く見向きもされない。
いやいや、側近はお言葉の外も慮って対応しなければならないのだ。
あの女ではなく、誰か違う場面を思い出されていたのかもしれない。
さて、あの女をどうしようか。
街には、いい女が待っている。
例え歓楽街への出入りを禁止されようと、いい女を用意する事は出来る。
街の長辺りが、気を効かせているだろう。
あんな薄汚い女に、手を出す物好きなんていないさ。
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