白い結婚で慰謝料請求された!?不貞を働いたのは貴方でしょう?

ゆうぎり

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 ブランドル様が指を差しているのはこの国の第二王子だった。

「貴方騎士でしょう?何言ってるの」

 一瞬考えなしに言葉が出たが、コンラット殿下は外行きの顔と普段は違うからなぁとも思った。
 でもその事は王宮では有名な事だった。

「俺はただの見送りだ。聖女が無事に家に到着したかの確認の為ここにいる」

 コンラット殿下は、この部屋を支配している空気などお構いなしに飄々ひょうひょうと答えた。
 因みにその後ろにいる護衛騎士は、気配を消して空気と化している。

「ふん、どうだか。そんな事誰も信じないさ」
「浮気中のブランドル様に言われたくありません」
「とにかく邪魔だから出ていってくれるかな」
「ここは私の別邸です。ブランドル様が出て行って下さい」
「は?お前のものは俺のものだろう」

 何その理屈、怖い。
 二人の睨み合いを続けていると、浮気女が綺麗に衣装を整えていた。

「ブランドル様ぁ、興が削がれちゃっいましたわぁ」

 甘ったるい声でしなだれ掛かる女を、鼻の伸び切ったブランドル様が支えた。

「そうだよな、ここは空気が悪い。月夜の散歩としようか」
「素敵ねぇ」

 ブランドル様が着替えている間、私の近くに寄ってきた浮気女が言った。

「愛されてもいないくせに、醜くブランドル様を縛らないでよね。みっともない」

 そして、勝ち誇った様に私の夫と腕を組んで出ていった。

 馭者に聞くとブランドル様の馬は、裏手の林に居たようだ。
 とても高価な馬で、私の給金から買っていた。

「騎士には立派な馬が必要不可欠だからな」

 初めて教会から出た給金を渡した後、そう言っていた。

 何だか馬鹿馬鹿しくなって、私は地下のワイン蔵に入った。
 良いワインが何本もなくなっていた。
 台所のストックを見ると保存用の塩肉やチーズ、ジャムなど多数なくなっていた。

 最後にこの別邸に入ったのは二か月前、その時は異常がなかった。

 この二か月の間に何度も訪問していたのだろう。
 そう云えば鍵を返してもらっていないな。

 コンラット殿下と護衛と馭者にやけ酒を付き合ってもらい、朝まで憂さを晴らした。
 この国の飲酒は16歳からで、パーティではまず軽いお酒が出された。


 翌日当家の侍女が訪問し、私は起こされるまで寝ていた。
 起きたらコンラット殿下と護衛は既に王都に帰ったらしく、馭者に昨日の酒の席での話を聞いた。
 私は随分コンラット殿下に絡んでいたみたいで、会ったら謝罪だなと思った。

「やる事いっぱいあるなぁ」

 まずは夫の調査から。


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