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全裸の夫ブランドル・ポーリックの背中には箒の先が当たり、細く赤い線が多数浮かんでいた。
なんだ……と怒鳴りながら振り向いた先に私が居たので、夫も硬直している。
多分私は凄い形相をしているだろう。
それで夫に引かれても構わない。
私の方はというと、夢から醒めるには充分だった。
「ブランドル様、ここで何をしていらっしゃるのですか?」
見たらわかる浮気現場だが、一応聞いては見た。
「お、お前こそ何故いる」
「何故といわれましてもここは私の別邸ですし、仕事は終わりましたもの」
当然の事とでもいう様に私は答えた。
「それよりブランドル様、私はここの鍵を渡しておりませんよね。どの様に入られたのでしょう?」
「そんな事、お前に関係ないだろう」
関係ないなど良く言うものだ。
大ありだと思う私と感覚が違うのだろうか。
「婚姻していても財産は別ですわよ」
私が告げると今まで黙っていた女が、ブランドル様の下から睨みつけてきた。
「貴方ね、ブランドル様を縛り付けている悪女は」
甲高い女の声が寝室に響きわたる。
「私が悪女、ですか?」
「そうよ、聞いているわよ。結婚しても指一本触れさせない癖に、遊び回ってブランドル様を蔑ろにしているのでしょう。これが悪女でなくてなんなのよ」
この女の言葉に力を貰ったのか、ブランドル様もまくし立てた。
「そうだ、俺は放置されていたんだ。妻の役割一つ果たせない女に、俺を責める資格など無い」
「白い結婚前提の婚姻を望んだのは、ブランドル様とそのご実家でしょう?私は月に一度は会っておりましたわよ」
聖女の仕事は、給金を頂いた翌日がお休みだった。
その為ブランドル様とそのご実家の誰かが、私の給金を取りに来ていたのだ。
同程度の伯爵家の筈なのに、いつもお金が足りないというので融資していた。
とても不思議に思っていたが、その度に家族の人数が多い為出費が嵩むのだと言われた。
私には兄弟がおらず、親族もかなりの遠縁しか居ない。
聖女になってからは社交に出る際には、教会か国の予算から衣装代等全てが出る。
実際詳しくわからないので、そうですかと答えていた。
給金の半額を渡し、残りの半分の内自領に半分と残りを自分用にしていた。
結婚が決まった時に、役人に相談したのだ。
自分用の殆どをこの別邸に注ぎ込んでいたのだが、この結果だ。
今虚しさだけが募っている。
「それに、お前こそ浮気しているではないか。男を連れ込みやがって。立派な不貞だ」
ブランドル様は後ろにいる王子を指差して言った。
なんだ……と怒鳴りながら振り向いた先に私が居たので、夫も硬直している。
多分私は凄い形相をしているだろう。
それで夫に引かれても構わない。
私の方はというと、夢から醒めるには充分だった。
「ブランドル様、ここで何をしていらっしゃるのですか?」
見たらわかる浮気現場だが、一応聞いては見た。
「お、お前こそ何故いる」
「何故といわれましてもここは私の別邸ですし、仕事は終わりましたもの」
当然の事とでもいう様に私は答えた。
「それよりブランドル様、私はここの鍵を渡しておりませんよね。どの様に入られたのでしょう?」
「そんな事、お前に関係ないだろう」
関係ないなど良く言うものだ。
大ありだと思う私と感覚が違うのだろうか。
「婚姻していても財産は別ですわよ」
私が告げると今まで黙っていた女が、ブランドル様の下から睨みつけてきた。
「貴方ね、ブランドル様を縛り付けている悪女は」
甲高い女の声が寝室に響きわたる。
「私が悪女、ですか?」
「そうよ、聞いているわよ。結婚しても指一本触れさせない癖に、遊び回ってブランドル様を蔑ろにしているのでしょう。これが悪女でなくてなんなのよ」
この女の言葉に力を貰ったのか、ブランドル様もまくし立てた。
「そうだ、俺は放置されていたんだ。妻の役割一つ果たせない女に、俺を責める資格など無い」
「白い結婚前提の婚姻を望んだのは、ブランドル様とそのご実家でしょう?私は月に一度は会っておりましたわよ」
聖女の仕事は、給金を頂いた翌日がお休みだった。
その為ブランドル様とそのご実家の誰かが、私の給金を取りに来ていたのだ。
同程度の伯爵家の筈なのに、いつもお金が足りないというので融資していた。
とても不思議に思っていたが、その度に家族の人数が多い為出費が嵩むのだと言われた。
私には兄弟がおらず、親族もかなりの遠縁しか居ない。
聖女になってからは社交に出る際には、教会か国の予算から衣装代等全てが出る。
実際詳しくわからないので、そうですかと答えていた。
給金の半額を渡し、残りの半分の内自領に半分と残りを自分用にしていた。
結婚が決まった時に、役人に相談したのだ。
自分用の殆どをこの別邸に注ぎ込んでいたのだが、この結果だ。
今虚しさだけが募っている。
「それに、お前こそ浮気しているではないか。男を連れ込みやがって。立派な不貞だ」
ブランドル様は後ろにいる王子を指差して言った。
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